あなたは、魔法使い
ヒロイン:剣盾の女の子


「マクワさん」

無敵のチャンピオンダンデの代わりにその座についたのは、まだあどけなさの残る少女だった。ジムチャレンジの時にその強さに何となく惹かれるものはあったが、まさかここまで上り詰めるとはさすがに予想していなかった。

「さすがです、かなこさん」

今日も今日とて彼女の底とやらを知りたい。敗北する顔が見たいとまでは言わないが…、少しは追い詰められてくれたら嬉しい。マクワ自身、強さを追い求めるタイプ。強者相手のバトルに燃えないはずはない。挑まれた勝負を断ることは一度もしてこなかった。

「ぼくたちの結束、一枚岩にはまだ遠いか」

チャンピオンを退いてオーナーとなったダンデが開催したのは、ガラルに拠点を置く実力者たちを集めたトーナメントだった。それは従来のものとは違い、誰かと組んで優勝を目指すというもの。一人で無理なら二人で倒す__そう意気込んだが、見事に跳ね返された。なるほど彼女は…、パートナーの至らぬ点までをもカバーしてしまうほどの腕前があるのか。そう…、それは、あのダンデにも引けを取らないほどに。

「……負けました。完敗です」

興味を持った。元々チャレンジャーの時から目をつけてはいたが、その強さの源が何なのか急に知りたくなった。見た目はどう見ても年相応の少女だし、飛び抜けてかわいいだとか、セクシーだとかいうものではないとマクワは思う。だからこそ…、他のトレーナーと何が違うのか。踏み込んでみたいと思った。

「ほう…それはオマエ、トレーナーとしてだよな?」
「他に何があるんですか」
「いずれオマエにもわかるだろ、だからオレさまは何も言わねえよ」

ファンがいれば華やかだし、バトルをしていれば荒れることもあるが心は安らぐ。故に安定を求めるには感情を揺さぶられるような事象からは遠くありたいし、岩のように硬く、ぶれることのない精神を持ち合わせていたい。だが…、かなこという少女を見るたびに、探求心とはまた別の感情が浮かび上がってくる気がするのはなぜだろう。

「……魔法使いですよ、あなたは」

今まで頑なにスタイルを変えようとしなかったマクワの心に、新たなピースが加わる日も近いのかもしれない。訪れようとする変化にかなこの笑顔を重ね合わせると、いつものようなスマイルを決めて、バトルコートへ向かった。


bkm
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