19
「アニキ、ニヤニヤしてる!やらしか!」

ああ、やってしまった…。ネズさんにせがんで飲ませてもらったっていうのに、一杯もたずに倒れちゃうなんて。ゆらゆらとした揺れが心地よくて、正直何を話してたかすら思い出せない。で、気づいたらここはマリィの家。遅くに帰ってきたアニキを心配してるのかな…、なんか怒ってる。

「兄でなくても、男ならみなニヤつきますね」
「……最低。アニキのこと、見損なった!」

うう、頭が痛い。身体も熱い。今ポケモンに襲われたら確実に命はないね…なんて冗談を考えるくらいには平常に戻ってきてるのかも。でも一人でどうこうできるはずもなく、連れられるがままネズさんのベッドへ。もしかしなくてもこのまま、一緒に寝る…の……?どうしよ、心の準備なんてできてない。それに…あれ?この匂い、どこかで……。

「………わっ!!」

嫌な夢を見た…それに近いだるさを覚えて目覚めたのはまだ、明け方のことだった。急に大声を出したから、同室にいるネズさんを起こしてしまって申し訳なさが残る。…そういえば昨日の夜も、あんまり飲んでないからって、同じように申し訳なく思ってたっけ。

「気分悪いのです?水でも持ってきますか?」

ふわっと香るいい匂い。これって、あの時の…?返事がないからかグッと顔を近づけられて、無駄にドキドキする。

「…相手がおれだからよかったですが」
「へ…?」
「もう、男の前で酒を飲むんじゃねえですよ」

穏やかな笑みを浮かべながらポンッと頭に手を置かれて、当たり前かのように頬に熱が集まる。たぶん今、ボーッとして、ひどい顔してる…なのに、逸らすことなくまっすぐな目線を向けられたら、恋に落ちる以外になにがあると言うの。…ずるい、この人もきっと、同じだ。キバナさんやダンデさんみたいに、いとも簡単にあたしの胸をざわつかせる。

「………」
「かなこ……?どうしました?」

…もっと近づきたい。もっと知りたいよ…、あなたのこと。そう思うよりも先に意識は暗闇へと引きずり込まれていく。…放っておけねえな、そんな呟きにも似た言葉を耳にしながら、再び眠りに落ちた。


bkm
prev next
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -