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「かなこ……?どうかしたのか?」

ダンデさんに相談してからまた1週間くらいが過ぎたある日。どうしても行きたいお店があって、半ば強引にキバナさんに頼み込んだ。

「ん?それってオレさまでいいの?ホップのヤツはどうしたんだよ」
「それが…カップル限定って言ったら、ホップもビートくんも照れちゃって。オニオンくんは人の多いところは苦手みたいだし…。こういうの慣れてそうなキバナさんにしか頼めなくて!」
「慣れてそう?ま、わかったよ。オマエのわがままにつき合ってやるか!」

彼女がいるのにごめんなさい…心の中で謝りながらも、なんだかんだで優しいキバナさんに甘えることにした。相変わらず恐怖な出来事は起きてるけどでも、今だけは何も考えずに楽しみたい。そう決めて、シュートシティ駅近くにできたという目当てのカフェへ向かった。

「やっぱオマエも女の子だよな」
「えー、それって。あたしが普段女らしくないみたいじゃないですかあ」

カップルでしか頼めないっていう、ハートがあしらわれたパフェ。それから、マグカップ。うーん、かわいい。どうしてもこれが欲しかったんだよね…!キバナさんは2つとも持って帰っていいって言ってくれたし、1つは使わないで飾っておこう。

「この後、どうすんだ?かなこ……?どうかしたのか?」

和やかな雰囲気のまま過ぎていた時間は、突如として色を変えた。帽子とサングラスでその顔は見えなかったけど…、窓の外から強い視線を感じて思わず目を向けてしまう。カシャ、聞こえるはずもない音が、耳に落ちた気がした。

「……おい、大丈夫か?」

キバナさんの声で現実に引き戻された。無理やり笑顔を作ってはみたけど、それじゃ気が済まないみたいで、会計をするなり関係者しか入れない入口からあたしをスタジアムへ誘った。

「言いたくないなら別に構わねえが、もし何か困ってんならオレさまに言えよ?オマエはみんなのチャンピオンだからな…、そんな顔は似合わねえよ」
「キバナさん……」

本気で心配してくれてる。それがすごく、嬉しかった。恋人でも友達でもない…、ただのチャンピオンとジムリーダーなのに。だけど。あたしのためだけに動いたなんて知られたら、自分の身が危ないしそれに、ダンデさんが裏で動いてくれてる…だから、大丈夫の意味を込めて話題を変えた。

「それより、今日はつき合ってくれてありがとうございます!彼女さんに申し訳ないなって思いましたけど、一緒に行けてよかったです!」
「彼女?オレさま今、フリーだけど?」
「へ……?」

え。一瞬、思考が停止しそうになった。この容姿だし、誰とでも打ち解けられる性格も。彼女がいない要素なんてひとつもないのに。あたしはてっきり、彼女はいるけど子供とならこういう場に来てもいい、くらいに考えてるんだと思ってた。それが、今はいないって……。


bkm
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