「取材?あれ?そんな予定ありましたっけ?」
リーグスタッフから呼び出しがあったから何かなと思ったら、スポンサーの仕事でもトーナメントでもなく取材だと聞かされた。そろそろジムチャレンジの準備が本格的に始まるからおかしくはないんだけど…、普通、1週間以上は前に連絡してくるはずなのに。変だな?と思いつつもチャンピオンだから。こないだ買ったワンピースを身に纏って、曇り空を駆けていった。
「………っ!そんなガン見しないでください…」
「………すまない。その格好からするに、もう……」
「な……、ないです!何も!」
あれから今、どの位の時間が経った?若いお兄さんたちから取材を受けながら、楽しく会食してたはずなのに突然、意識が遠のいて…気がついたら、見知らぬ天井が目に飛び込んできたわけだけど。
「……なにこれ!?」
あたしの第一声はそれだった。ベッドと妙に引き出しの数が多い棚以外、何もない部屋。そこに、服をはぎ取られ、手足を鎖で繋がれてるなんて…一体、なんの罰ゲーム?とゆうかあたし、何かした!?
「………かなこ!!!」
頭をフル回転させて、現状を整理しているところに。はあはあと肩で息をしながら、お世辞にもカッコいいとは言えない形相で飛び込んできたダンデさんと目が合った。あの…そう声にするよりも先に彼の視線は、あたしの目なんかじゃなくて、別のところを捉えている。
「………っ!」
恥ずかしいから覆いたいのに手足の自由が利かない。バタバタと無理やりに動こうとするあたしをダンデさんは、制した。
「そんな事をしても無駄だぜ。鍵があるはずだ、どこにあるか知ってるか?」
「た、ぶん、その棚のどこか…」
繋がれた手を掴みながらグッと顔を近づけられて、心臓が止まるかと思った。なんでこんなシチュエーションでドキドキしてるの。でもそれはたぶん…この姿だから。そんなに近づかれたら、その…ダンデさんに襲われてるみたいで、なんだか……。
「かなこくん、何でもいいんだ。思い出してくれないか?」
ダンデさんの声色からは焦りも感じられる。それは、あいつらが帰ってきたらあたしに危害を加えるかも、って心配してくれてるからだろうけど。そのはずなのにチラチラと身体に目線を送られて…、変に熱が集まってくる。でも、間違ってもこの状況で興奮してるとか思われたくないし、そんな趣味まるでない。
「……そう言えば、会食してる時に、光る壁?かなにかがお気に入りって言ってた気も、します…」
「光る…?」
記憶違いかもしれない。レストランに入るまでは何もなかった…もしかしたら、飲み物か何かに薬が…?でも、いつから頭がぼんやりしてたのかも思い出せない。ああ本当、情けない…。
「えっ?」
一瞬にして部屋の灯りが落ちた。それと同時に、ひとつの棚が光り始めた…中に入っていた手錠の鍵を取るなり、手際よく開けてくれる。幾らチャンピオンだからといって手慣れすぎてない?そんな風に思いながら。