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「大変だよー!グラジオー!」

いつも嵐のようにやってくるこいつ……ハウ。最近のオレは家にいることが多いから、来客がある度にビッケや職員に呼び出されるんだが……、大抵こいつしか来ない。

(待っていると来ないもんだな……)

少しだが、財団の仕事を理解しようと勉強を始めた。いきなり仕事するわけではないが、いずれは母さんを補佐できればいいと考えている。かなこはかなこでポケモン図鑑を完成させるために各地を歩き回ったり、防衛戦をしたりと忙しいらしく、あれから一度も顔を見ていない。

(……)

オレには恋愛という概念がなかったから、こんな風に誰かを待っていることが心地よくもあるが、辛いものだとは知らなかった。日に日にあいつは綺麗になっていく。だが、間接キスをしたくらいで動揺するオレをよそにあいつは……、特に反応がなかったな……そんな時、騒がしいヤツが屋敷にやって来た。

「何が大変なんだ?わかりやすく説明してくれ」
「だからー!かなこが、知らない男に連れてかれたんだって!」

どうやら防衛戦を終えたかなこを待ち伏せしていた男がいたらしい……そいつが半ば無理やり、かなこをリザードンに乗せてメレメレの方に行ったとハウは言う。

「急ぐよー!」

男二人乗りは正直厳しかったが、そんなことを言っている場合じゃなかった。他の男と会うなとは今の立場では言えない。だが……、何となく嫌な予感がしたオレたちは、急いでメレメレ島に向かった。

「男と女が行くとしたら、どのあたりなんだ?」
「メレメレの花園とか、海繋ぎの洞窟とかかなー、ハウオリ霊園はデート向きじゃないもんねー」

海繋ぎの洞窟……カーラエ湾に続く道だな。カップルが行ってもおかしくないところだとは思うが……。

「手分けして探すぞ、ハウ」
「わかったー!見かけたら教えるねー!」

オレたちはメレメレの花園と海繋ぎの洞窟に別れて、かなこを探しに行った。


bkm
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