___田舎娘。初対面の印象は本当に、それだけだったんだ。
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「チャンピオン!」
「こっちに目線くださーい!」
「今日もかわいいなあ!」
見慣れた光景。それにわざとらしく微笑するオレの名は、キバナ。言わずと知れたガラル地方のトップジムリーダーで、無敵のチャンピオンダンデのライバル。ま、あいつには絶賛連敗中だけどな。それはそうと…今はこいつか。
「おう、かなこ!待たせたな!」
「キバナさんよ!」
「キバナさん、こっちに目線を!」
ジムチャレンジが近くなるといつもこうだぜ。オレたちジムリーダーや、チャンピオンがプライベートバトルを行うことを、ファンは知ってるからな。しかし相変わらず人気だよなあ…、まあ、かわいいし?わからなくもねえけど。
「珍しいですね!どうしたんですか?こんなところで」
「ん?ああ…気晴らし?追い詰めすぎてもしょうがねえからな!」
オレはずっと、ダンデを倒すことを目標にしてきた。…だがまさか、こんな田舎娘のかなこが、いとも簡単にあいつを倒しちまうとは思ってもみなかったからな。ダンデのことは当たり前にライバルとして…、こいつのことも絶対に倒す、オレはあの敗北からそう誓ったんだ。
「ふたりの写真、くださーい!」
「ああ言ってるから、撮ろうぜ?記念にな?」
「とか言って!いつも撮ってるじゃないですかぁ」
普段は平凡な女。なのに、勝負になればその雰囲気はガラッと変わる。全て見透かしてるかのような強気な顔が…、男女問わず多くのヤツらを魅了するんだよな。
「いい顔だ。ほら、送ったぜ」
「ありがとうございます!でも、なんか変」
「変ってオマエ…それは、オレさまがかっこよすぎるからだろ?」
また何も進展のない日が過ぎる。そう、オレはあの時かなこに…、本気で恋をしちまったんだ。