「かなこちゃん、ホウオウは言っているよ…きみと、戦いたいって」
「はい……」
美しい紅蓮色をした伝説のポケモン、ホウオウ。ロゼにお願いして、その驚異的な力と対峙して…、カタン、とボールが揺れた。
「やった……!」
思わずマツバさんと抱き合う。ダイゴさんが見てたら間違いなく怒られるだろうな…なんて思いながら。
「タンバシティに泊まるんだね、いいチョイスだ」
「はい、待ってる人が、いるので」
もしかしたら、ダイゴさんの事と勘違いしていたのかもしれないけど。控えめで優しい笑顔で、マツバさんは私を送り出してくれた。
「夜食、買っておいたよ!どう?食べれそう?」
タンバシティに着くなりヒガナのテンションは高かった。ホウオウを見せたから…もあるかもしれないけど。初めは民宿に泊まる予定だったけど、ポケモンセンターで広い部屋がたまたま取れたんだ、そう言う彼女に着いていって。
「旅してるとさ…ちゃんとした食事、取らなくなるよね?」
「そうだね。私もよくママに言われてたなぁ…」
今でこそ回数は減ったけど、電話するなりちゃんと食べてる?だったもんね!ヒガナが買ってきてくれたご飯は、どれも港町ならではのもので、いつもより数倍も美味しく感じられた。
「御曹司の妻なら、もっといいもの食べてるだろうけどね…わたしは、かなこにこういうものも食べてほしくて」
「ううん!ダイゴさんは大体出張してるから、私は簡単なものしか作らなくて。それに、すっごく美味しいよ!」
それはよかった、ヒガナは満面の笑みで微笑む。今日はマントをやめてみたんだー、なんて私服に身を包んでるから…、ちょっと大人っぽい。
「わたしも、いつかは恋をするのかな…」
「えっ?ヒガナが恋?聞きたいなぁ」
「いつかは、だよ!早まるねぇ、かなこは」
「だって。ヒガナからそんな話聞くとは思ってもみなかったし!」
それから。ちょっとだけお酒を飲んで、それぞれ用意されたベッドへと潜り込む。
「あのねかなこ…」
「うん…」
「元チャンプ、いや…、ダイゴさんから、絶対に離れたらだめだからね」
「そう、だね……」
特別に何か知ってるのか、そうじゃないのかはわからない…けど、ヒガナが“ダイゴさん”って呼ぶなんて初めてだから…、妙に深く、私の心の中に刻まれたんだ…。