偽るのはもう止めた
もし…、
近くの公園でブランコに座って、
しかもただ乗ってるだけじゃなくて、仕事をリストラされたような、そんな雰囲気を出している
部活の先輩を見たとき、
俺はどうすればいいのだろうか
「どうしたんですか、忍足先輩」
まぁ結局、哀愁漂う先輩を放って置くことは出来ず、話し掛けた。
顔を上げた忍足先輩の顔は機嫌悪そうにしていたがそれも一瞬で、スグに何でもなさそうな顔で笑った。
「なんや、鳳か。いきなり話しかけられてひびったわ」
「スミマセン、少し深刻そうな顔をしてたようなので、気になって…」
「俺そんな顔しとったん?特に何もないのに、無駄に心配かけてもうたわ。スマンなぁ」
そう言うとブランコから立ち上がり背伸びをすると側に置いてあった鞄を持った。
「ほな、そろそろ帰るわ。自分も遅くならん内にはよ帰りぃや」
あまりにも白々しくて溜め息が出そうになる。
「(この人も、溜め込むタイプだしなぁ…)」
いつもより少し重たい足取りで帰ろうとする忍足先輩の手を掴む。俺が言おうとしていることが分かっているのか、手を振りほどかれることはなかった。
「今日、部活に来ませんでしたね…」
「………」
「跡部さんと、何かあったんですよね?」
困ったような顔をして踏み止まった。その顔を見てやっぱりと確信を持つ。
「跡部に聞いたん?」
「いえ、跡部さんの方も今日はあまり部活に集中出来てなかったようでしたので」
「…ホンマか」
そのこと嬉しかったようで少しだけ声のトーンが上がった。
何があったのか話してくれるようで忍足さんはもう一度ブランコに腰掛けた。俺もその隣のブランコに座り、聞く体勢になる。
「まぁ…しょーもないことなんやけどな。昨日から喧嘩しとるんや」
「……珍しいですね」
この二人はよく『言い争い』はする。でもスグにどちらか(だいたい忍足先輩)が折れていつもの状態に戻るのに、その言い争いが続いた状態で終わるなんて。
しかも昨日から。
「理由は俺の嫉妬。跡部が昨日の帰りに手塚の話ばっかしとるから……俺が勝手にキレてもうて。跡部はホンマにえぇライバルやと思うとるだけなのにな」
「………」
「謝ろうと思うても拒絶されて話すことすら出来んかったし。それに………やっぱ、まだムカついとるんや。情けなくてアカンわ」
「何がいけないんですか」
話してるうちにどんどん俯いていく。こんなにも余裕のない忍足先輩を見るのは初めてで………、俺と同じだと思った。
「好きな人が他の人と話してるのに、嫉妬するのがなんでいけないんですか!」
「えっ、ちょ、鳳!?」
いきなり大声で叫んだからか、動揺する忍足先輩。驚かせてしまったことは悪いと思うが、押さえられなかった。
「…先輩の気持ち、分かります。いえ、それ以上に最悪なんです。
……俺、好きな人がいて、でもその人は他の人と付き合ってて。
たくさん嫉妬しました。たくさん、その人の恋人と、その人も恨みました。何でその人なんだ、って。何で俺を選んでくれないんだ、って。そして、こんな自分を、今まで隠して、その人の近くで笑ってました」
こんなこと、本当は言うつもりなんてなかった。そもそも、跡部さんとの仲立ちをするなんて冗談じゃないと、心のどこかで思ってた。
それに、……こんな汚い自分、嫌らしくて妬ましい自分を、この人に見せたくなんてなかった。
それでも………、
「それでもっ、本気で好きなら、全部見せなきゃ駄目ですよ…。
我慢して、隣で偽った笑顔で笑うなんてっ…………、」
「鳳…………………なんで、自分が泣くんや」
止まらない、
目から溢れだす涙も、
口から発せられる言葉も、
全部が止まらなかった。
「偽ってたら、辛いだけですよ」
辛かった。
あの二人を見てるのも、
嫉妬してるのも、
そんな自分を嫌悪するのも、
誰にも言えず、一人でモヤモヤしてるのもーーーーーー
涙が止まらず、袖で強く擦る。いよいよ鼻水までもが出そうになったところで頭を撫でられた。
言わずと知れた忍足先輩に。
そのことを認識すると急に恥ずかしくなり顔が熱くなった。今まで忍足先輩に触れられたことなんてほとんどないに等しかったので単純に、凄く嬉しい………けど、
「…ありがとぉな」
この一言で忍足先輩には自分の気持ちは伝わっていないということが嫌でも分かってしまった。
『ありがとう』は励ましてくれたお礼であり、俺の聞きたい言葉じゃない。
「…………いえ、」
それでも、優しく、そして綺麗に笑うものだから、心のモヤモヤはなくなり、やっぱり言って良かったと思わされる。
「こちらこそ」
だって、俺が一番好きなのは
あなたの笑顔だから…
※※※※※
忍跡+鳳にしようと思ったのにアレ?
てか跡部はさん付けなのに忍足は先輩なのはなんでだろって自分で書いてて思いました。せめて部長にするか忍足さんにすれば良かったです。
※※※※※
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