旧拍手.1(旧サイト)
「あ、跡部くんだ!!」
学校が終わり部活も休みだったので久々にストリートテニス場に行った。樺地は用事があり不在で今日は久々に一人だった。
何球か打ち合った後、喉が乾いたので自動販売機に行きその時にこの男が現れた。
いつも女にナンパをしているところが目に入るこの男は少しアイツを思いだたせる。
「千石か…。久しぶりだな」
「こんな所で跡部君に会えるなんて、やっぱ俺ってラッキー」
いつものお気楽な台詞を言うと千石は一緒に打たないかと誘ってきて、特に断る理由もないので俺はうなずきテニスコートの方へ歩いた。
*****
「いや〜、やっぱ強いね。跡部くんは」
「あ〜ん、当たり前だ。俺様がお前ごときに負けるわけねえだろ」
「普通ならむかつくけど、ここまでいくと清々しいね」
それはテニスのことなのかそれともセリフの方なのか、どちらにせよ本当のことなのでおれはフンッと適当にあしらった。
「でも、本調子じゃなかったよね」
笑いながらサラッと言った言葉に俺は少し動揺した。
どういうことだ、と白を切ると千石はだってさぁ…と苦笑いをすると一口、スポーツドリンクを飲んだ。
「タイブレークまでいったし」
いつもなら完敗なのにねぇ、
いつも通りヘラヘラ笑いながら言う千石の言葉を否定できなかった。完敗…とまではいかないが、いつもなら難なく勝つことが出来る筈なのに、今日はそれが出来なかった。
体調が悪いわけでもないが今日は少し体の動きが鈍かったと試合をしている間に気づいた。
「考え事してたでしょ?」
いつもの跡部くんらしくないよー、と軽く言ったコイツに妙に腹が立った
「じゃあいつもの俺はどんなのだよ。知った風な口を聞くんじゃねぇ!!」
予想外に大きな声に自分でも驚き、同時に感情的になったことに後悔した。
ーーーー出来るだけ誰にも弱味を見せたくはないと言う願望。弱いくせに虚勢を張っているコレこそが本当の俺だった。
(そう言えば、今日は金曜日だったな……)
自分には特に関係もないこの日、あいつにはある週間があった。
そのせいでプレーに支障が出たと言っても過言ではないだろう。他人のせいにするのはどうかと思うが、少なからず影響はしていることは確かだ。
ーーーーーーもっとも、こちらが勝手に意識しているだけで向こうはそんなつもりはないのだろうが
「俺様」
少しそんな事を考えていると千石からそんな言葉が聞こえてきた。
千石はこちらに顔を向け、完全に俺のことを言っていると容易に想像できた。
それはさっきの『いつもの俺』に対する答えだろう。よく言われるし聞きあきた言葉だった。
まぁそんなもんか…、とどこか諦めたようにそう思うと千石は続けた
「がんばり屋さんで、テニスが大好きで、だからテニスが強い人も好き。いつも一生懸命で、努力していないなんて言わせないくらい練習もしてる。
恋愛は一途で相手のことばっかで自分のことを考えない、そこが少し不器用かな。好き、って伝えられなくていつも見ているだけでそのたびに傷付いてる。
それでも相手が好きで俺様を気取りながら相手に近づいて喜ぶ。
それがいつもの跡部くんかな」
言葉が出なかった。
いきなりのことで頭の整理が出来なかった。ここまで他人に自分を見透かされたのは初めてで、こんな真剣な顔をする千石を見るのも初めてで……あぁ、頭が痛い。
「今日って金曜日だよね」
真剣な表情から一変、悲しそうな、複雑そうな、そんな表情をしていた。それは多分、千石が辛いわけではなく俺の分の傷みなのだと理解した。
「ねぇ、届きもしない相手への一人相撲は疲れない?」
ーーーー毒のようだ
頬に手を添えられ、そこから全てが侵食されていくようで
「辛かったよね?」
これ以上はダメだと脳は緊急信号を送るが毒によって身体は動かない
「跡部くん、知ってた?」
ーーーーーー人は愛するよりも愛される方が幸せなんだって
(そして)
(俺の思考は停止した)
※※※※※
ずっと置いてた拍手文です。かなり長い間放置しててすみませんでした。
そして、沢山の拍手ありがとうございました。
そしてストリートテニス場であってますっけ?ストリートテニスコート?あれ?
ちなみに金曜日は忍足が御姉様方と遊ぶ日です。
ー2012.10.22
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