第一章
・受賞式典
渚(なぎさ)、自分の絵の前に立っている
優秀賞、渚隼人(はやと)と書いてある
渚M 「第一印象は最悪だった」
奥の人の群がる方を見る
渚M 「今度こそはと出した賞で、及ばなかった最優秀賞。受賞したのは十九歳の男だった。それだけならまだしも、専攻は工芸だと聞いた」
ため息をつく渚
渚M 「確かに素晴らしい絵だった。あんなのに、俺の絵は到底勝てそうもなかった。見に来た人たちは、あの絵にばかり群がって、俺の絵の前をただ足早に通り過ぎていく。誰もいない、寂しい自分の絵の前で俺はただ、遠くからあの絵を見ていた」
男 「綺麗な青だ」
いつの間にか隣に立って絵を見ている男
渚 「え?」
男 「あんな絵より、僕はこっちの方がいいと思う」
渚M 「驚くほどに綺麗な人だと思った。今まで見たことも無い。誰もが惑うような、綺麗な目をしていた。その目で俺の絵を見ていた」
渚 「そんなこと言うのは君だけだよ。でもありがとう。これは俺が描いたんだ」
男、微笑む
男 「あなたには、世界がこんなに綺麗に見えているんですね」
渚 「え……」
係員A「永久(ながひさ)さん、授賞式が始まりますのでこちらへ」
春 「はい」
春、頭を下げると去っていく
渚M 「名前を聞いて分かった。あぁ、俺はからかわれたんだと」
係員B「渚さん?授賞式が始まりますのでこちらへ」
渚 「あ、はい…」
渚M 「第一印象は最悪だった」
・教室
授業中
セミが鳴いている
隅でデッサンをしている渚
傍に座っていた生徒Aが話しかける
生徒A「せんせ。見たよー、『青空』おしかったね」
渚 「あぁ、まぁでもあれは勝てないよ」
生徒A「確かに。あんな綺麗な絵、初めて見た。あ、知ってる?あの永久春(はる)。A大の二年だって」
渚 「うん。聞いたよ」
生徒A「やっぱ有名大は違うよねー、なんていうか、あたしらには雲の上の存在っていうか……あぁ、空しい…」
渚 「はははっ」
生徒Aの傍にいた生徒Bも話に加わる
生徒B「ねぇねぇ、来週この授業ヌードデッサンだって聞いたんだけどホント?」
渚 「あぁ、そういえばそんな話を平塚(ひらつか)先生が言ってたような…」
生徒A「ホントに!?誰がやんの!?」
渚 「モデルさんに来てもらうんだよ」
生徒B「ふーん。ってかさ、渚せんせやればいいのに」
渚 「はぁ!?何言ってんだ!」
生徒A「あ、あたしもそれ賛成。せんせ可愛いもんね。若いし。描きたい描きたい」
渚 「馬鹿言うな……。それにモデルは女性だよ」
生徒B「なぁんだ。せんせは描いたことあるの?」
渚 「ん?あぁ、あるよ」
生徒A「あれ?知らないの?渚せんせのヌードデッサン有名だよね?」
渚 「別に有名ではないけど…」
生徒B「何、知らない。そうなの?」
生徒A「うん、あたし平塚先生に見せてもらったことあるよ。っていうか、事務室に飾ってあるよね?あれあたし好きなんだぁ。すっごい綺麗なの」
渚 「……」
照れる渚
生徒B「うっそ、あとで見に行こー」
生徒A「せんせになら描いて欲しいもん。ホント綺麗なの」
渚 「褒めてもなんにもでないよ…?」
生徒A「えぇ〜」
渚 「やっぱりか」
笑う三人
・事務室
夕暮れ時、ヒグラシが鳴いている
渚、事務室に入ると、話し声が聞こえてくる
平塚 「あぁ、渚先生。丁度呼びに行こうとしてたとこで」
ソファに春が座っている
渚を見て頭を下げる
渚 (永久春……!どうしてここに……)
平塚 「この子、永久春君。A大の子なんだけど、ちょっとした知り合いでね」
渚 「あぁ、はい」
平塚 「来週のデッサン、この子にモデル頼もうと思ってて」
渚 「え!?──あ、いえ…」
平塚 「はははっ、驚いた?まぁ、そこで渚先生に相談しようと思って」
渚 「はぁ…。でもいいんですか?」
春を見る
春 「えぇ」
渚 「そう。本人がいいと言うなら、僕は大丈夫だと思いますけど…。男性のモデルも珍しくはありませんし…」
平塚 「じゃあ決定で。僕これからちょっと用事あるんだけど、渚先生もう帰りですか?」
渚 「はい」
平塚 「じゃあ永久くん、駅までお願いしてもいいかな?」
渚 「えぇ、分かりました」
平塚 「うん。じゃあ永久くん、来週からよろしくね」
春 「よろしくお願いします」
春、立ち上がり、頭を下げる
渚 「じゃあ行こうか」
・廊下
廊下に出る渚と春
渚 「ちょっと寄って行くところがあるんだけど、いいかな?」
春 「えぇ」
渚 「あー、時間あるなら、教室も案内しようか、ついでだし」
春 「はい。お願いします」
歩いていく
渚M 「隣を静かに歩くその姿に、やっぱりいけ好かない奴だなと思った。容姿は文句なしに良くて、それにあのA大に通っている。加えてヌードデッサンのモデルまで出来るときたもんだ」
春 「先生だったんですね」
渚 「え?あぁ、非常勤講師だけど」
春 「もっとお若いかと思ってました」
渚 「あぁ、よく言われるよ。ガキ臭いって」
春、笑う
渚 「なに?」
春 「いえ、先生。僕のこと嫌いでしょう?」
渚 「えっ?いや、別にそんなこと」
春 「いいんです。僕第一印象悪いんですよ。嫌われることの方が多い。でも先生には嫌われたくないな」
微笑んでいる春
笑っている春を見て戸惑う渚
渚 「だから、別に嫌いとかそんなじゃないよ。人見知りするんだ。嫌な思いをしたならすまなかった」
春 「……」
悲しげに微笑む春
渚M 「このときも、やっぱり嫌な奴だと思ったんだ。人を見透かすようなことも、それに俺が負け惜しみでしているように思われたかもしれないことも。それでも何故か、悲しそうに見えたのは、どうしてだろう」
・教室
中に入る
渚 「ここが教室。ここでデッサンするんだ」
春 「綺麗ですね」
渚 「あぁ、ここはまだ新しいから」
春、教室に置いてある絵を見て周る
渚の描きかけの絵の前で立ち止まる
春 「これ、先生が描いてるんですか?」
渚 「あ、あぁ。そうだけど。どうして…」
春 「わかります。僕やっぱりあなたの絵が好きです。さっき平塚先生にヌードデッサン見せてもらったんですよ。凄く綺麗な線を描きますよね。まるで動き出しそうな」
渚 「そう…」
渚、照れて目線を合わせようとしない
それを見て微笑む
渚 「ど、どうしてモデルなんかしようと思ったんだ?相手は同じくらいの年の子なのに。嫌じゃないのか?」
春 「いえ、そういうことは気にしませんよ。皆真剣にやってるでしょ?」
渚 「そうか……」
渚 (なんか、こいつと話してるとやたらと惨めになるな……)
春 「そうだ、練習で今描いて下さいよ」
渚 「えぇ!?今って──」
春 「あ、何か予定がありますか…?」
渚 「無いけど、今…?」
春 「僕は大丈夫ですから」
微笑む春
・教室
鍵を閉める渚
春 「鍵、閉めるんですか?」
渚 「い、一応な。嫌だろ、誰かに見られたら」
春 「……」
なんでもない顔をする春
渚 「嫌じゃないのか……」
春 「えぇ、別に」
渚 「ま、まぁいいから。じゃあ、えっと、ここに」
渚、机を並べて布をかける
渚 「服脱いで適当に座って、少し待ってて」
春 「はい」
渚、教室の隅にある棚を開けてレコードをセットする
ノクターンが流れる
渚 「じゃあ───」
机の上に裸で座っている春を見て一瞬言葉をなくす
渚M 「その日は夕日が特に鮮明で、窓から突き刺さるように入り込んでいた。その陰陽は明らかに彼の美しさを引き立てていて、俺はその時確かに思った」
渚 「始めるけど、寒かったら言ってくれ」
春 「はい」
渚M 「天使が目の前にいると」
・教室
椅子に座って指示を出す渚
渚 「手、後ろについて。目線こっちに。あとは楽な格好になっていいから。疲れたら言って」
春 「はい」
描いていく
春 「先生、こういうの、どれくらいやってきたんですか?」
渚 「人数?」
春 「えぇ」
渚 「どのくらいだろう。百を超えてから数えなくなったから」
春 「それは全部別の人?」
渚 「そうだね。同じ人も描いてるけど」
春 「男の人も描いたことがありますか?」
渚 「あぁ、あるよ。でも君程若い子は初めてだな」
春 「ふふっ」
渚 「こら、笑うな。もっとだるそうにして」
春 「はい」
渚 「……」
春 「いつも描くときはこうしてるんですか?」
渚 「こうって?」
春 「ノクターン」
渚 「あぁ、曲は流すよ。退屈するだろ」
春 「僕は大好きだけど、こういうの眠くなる人もいるんじゃないですか?」
渚 「あぁ、何度もうとうとされたことがあるよ」
渚、笑う
春 「やっぱり」
渚M 「初めは適当に描くつもりだった。さっさと終わらせて、帰ればいいと思った。それなのに、描かなければいけないと思わされた。今までに無いほど真剣に、俺は鉛筆を走らせた」
目が合う
渚M 「こんなこと一度も感じたことはなかった。描き出すと照れだなんて感じている暇は無くて、一度も、目を逸らしたいと思ったことは無かったのに。この目に見つめられると、心の奥底を見透かされそうで、怖くて仕方なかった」
渚M 「それなのに、描き終えた頃には、彼に対しての嫌悪感などまったく無く、ただただ、疲れ果てていた」
・教室
服を着終えた春
渚 「どうぞ」
絵を渡す
春 「わぁ……すごい。ほんとに凄いですね…」
絵に見惚れる春
渚 「ありがとう。それよりこんな時間だ。家、大丈夫か?」
春 「えぇ、僕が言い出したことですし。これ、頂いていいんですか?」
渚 「あぁ」
春 「はやと……」
渚 「え?あぁ、サインか。びっくりした」
春 「ふふっ、これ宝物にします」
渚 「そんな大げさな」
渚M 「こんなに無垢に笑う彼に、俺が勝てるはずが無かったんだ。あの賞は、彼が貰って当然だった」
・教室
渚M 「一週間後、予定通り授業でヌードデッサンを行うことになった。もちろん彼がモデルとして来た。彼ほどの容姿となると、きっと女子の黄色い声が飛び交うのだろうと思った。が、なるほど、彼が言った言葉はこういうことだったのかと思い知らされるほどに、教室内は静まり返った」
黙って、デッサンをとる生徒
教室の真ん中の布の引かれた机の上に座っている春
渚M 「言葉をなくすほどなのだ。彼の容姿は、それほど美しかった」
教室の一番隅でデッサンをとる渚
・廊下
渚、教室の鍵を閉めようとしている
生徒A「せんせっ!今日のデッサン見せて!」
渚 「え?あぁ、はい」
渡す
生徒A「やっぱり凄い!あたしお世辞抜きにせんせの絵好きだわ〜」
生徒B「ほんとだ〜。でもさ、あんな綺麗な人がくると思ってなかった!」
生徒A「あたしも!せんせ女だって言うからそうだと思ってたのに。それにあれってあの永久春でしょ?」
渚 「いや、あれは平塚先生のって、そうそう。君たちちゃんとアンダーヘアも描きなさい」
生徒B「え……だって…」
生徒A「ねぇ…」
渚 「ハハハッ、いや、毎年そうなんだって。皆最初は描かないんだ。なんでだろーな?」
渚、笑う
生徒B「なーんだ。ってかせんせはどうだったのさ?初めて描いた時」
渚 「俺?俺は描いたよ」
生徒A「そりゃせんせは描いてるでしょー。あれだけ描いてるんだもん。好きなんだよね?ヌードデッサン」
渚 「あぁ、好きだよ」
生徒B「アハハッ!」
渚 「何笑ってんだよ。別にいいだろ」
生徒A「まっ、これだけ綺麗に描けるんだもんね。文句言えないわ」
渚 「君たちも頑張りなさい」
生徒B「はーい」
生徒A「じゃーね、さようなら」
渚 「あぁ、さようなら」
生徒、去っていく
鍵を閉める渚
・事務室
事務室へ入る渚
渚 「平塚せ──」
春がいる
渚 「あれ?平塚先生は?帰った?」
春 「はい、さっき」
渚 「君は?俺に用?」
春 「よければまた一緒に帰ってもらえないかなぁと」
渚 「あぁ、いいよ」
春、微笑む
・街
夕暮れ時、誰もいない道を歩いている二人
渚 「どうだった?初モデルは」
春 「はははっ、初めては先生ですよ」
渚 「あー、そっか。でもあんな大勢に見られるのは違うだろう。やっぱ嫌だなとか思わなかったのか?」
春 「えぇ、特には」
渚 「へぇ、若いのに肝座ってんなぁ」
笑う渚
春 「でも先生と二人の時のほうが楽しかったな」
渚 「え?」
春 「また描いてください。僕のこと」
渚 「あ、あぁ。別に、いいけど…」
渚M 「彼が笑うと後ろに夕日が沈むのを見た。俺より高い身長で、俺を少し見下ろしている」
春、頬に触れる
渚M 「触れる指先が冷たくて、汗ばむ肌をただ、そう、自然に、当たり前の様に、撫でると彼は、口付けた」
キスをする春
渚 「……」
春 「さようなら」
渚M 「立ち尽くす俺を放ったまま、彼は帰っていった」
・教室
窓際で画板の前に座っている渚
生徒A「せーんせっ!」
渚 「うわっ!」
生徒A「そんなにビックリしなくても…。どうしたの?今日なんかすっごいボーっとしてるけど」
渚 「え…?あ、いや、そんなことは…」
生徒A「何ですかこれ?」
渚の前に置かれたスケッチに
めちゃくちゃな線が描かれている
生徒A「情緒不安定…?」
渚 「ちち、違う!これは…そう、うるさいセミの声を…!」
生徒A「なるほど。情緒不安定ですな」
生徒A、去っていく
渚 「だからっ!………はぁ…」
渚M 「あの日からずーっと、いや、あの授賞式の日からかもしれない。頭の中から出て行ってくれない。何をしていても、何を考えていても、彼がどこかにいる。週に一度しか会えないのに、それなのに、暇があれば、彼が受賞した作品を探してみたり、あの時のデッサンを眺めていたりするのだ…」
頭を抱える渚
渚 (あぁ…俺は変態だ…!)
渚M 「そんな一週間をすごして、とうとう明日はデッサンの日だ…」
・教室
春、机の上にいる
デッサン中
教室の隅でデッサンしている渚
渚 (描けばいいんだ描けば!描いてれば集中できる!)
春と目が合う
渚 「っ!」
手の力が抜けて、無意味なところに太い線が入る
渚 「〜〜〜〜〜っ!」
渚 (どうしてっ…!どうして俺は反応している…っ!)
・教室
生徒達が帰っていく
生徒B「せんせーばいばーい」
生徒A「さようならっ」
渚 「はい、さようなら……」
疲れた顔をして手を振って、教室の整理をする
失敗したデッサンを手にする
渚 「はぁ……」
春 「あれ?今日は酷いなぁ……」
渚 「うわわっ!」
背後にいる春
渚 「ななな、何…!」
春 「先生、今日はどうしたんですか?調子悪い?」
渚 「ち、違う…!これは……」
春、笑う
春 「分かってますよ。先生、僕のこと気になるんでしょう?」
春、指で渚の顎をなぞる
渚 「っ……な、なんで…?」
春 「一週間。僕のこと、考えてくれました?」
渚 「どうして…こんなことっ…」
春 「ふふっ、どうしてでしょう?」
渚 「〜〜〜っ」
春に圧倒される渚
春、笑うとするりと脇を抜けてまだ残してあった台に触れる
春 「ねぇ先生。描いてください。僕を」
渚 「え……」
春 「絵の中に、閉じ込めてください」
渚 「……」
・教室
夕暮れ時
花のワルツが流れる教室
机に座っている春
デッサンをとる渚
渚M 「このとき、俺はもう落ちてしまっていた。彼の魅力に、美しさに、抗うことなんか出来るはずも無くて。ただ控えめに流れるワルツが、耳を掠めていくのも無音に等しく思えた。筆は軽やかに進んでいく。こんなにも目の前で、一糸纏わぬ姿で自分に視線を向ける彼を俺はどうにかして自分の手の中に収めようと必死だったんだ」
春 「あなたの描いているときの目。凄く好きです」
渚 「そう?」
春 「今までその目を百を超えるほどの人が見たんだと思うと、妬けてしまうな」
渚 「……」
照れる渚
春 「ねぇ、先生。こんなことを言うと、先生は怒ってしまうかもしれないけど、あの時の賞。僕はやっぱり先生が貰うべきだったと思うんです」
渚 「それはないよ」
春 「いいえ。僕はあの絵を見て、こんなにも綺麗な空は見たことが無いと思ったんですよ。本当に。この絵を描いた人はどんなに綺麗な目をしているんだろうって。その目で僕を見てほしいと、思ったんです」
渚 「君は不思議なことを言うね」
笑う渚
春 「…ねぇ、先生」
渚 「ん?」
春 「あなたのその目に、僕はどんな風に見えていますか?」
渚 「……」
渚、手を止める
春 「あの空の様に、綺麗に映っていますか?」
春を見てふと目を逸らす渚
顔が真っ赤になっている
渚 「当たり前じゃないか…」
ボソっと呟き、また描き始めると
春、机から下り、後ろを向く
渚 「おい…?まだ──」
春 「ごめんなさい」
春、髪をくしゃっと掴んで首を振る
渚 「どうしたんだ…?」
傍にあった服を掴むと振り返らずに話す
春 「ごめんなさい。その……嬉しくて──」
顔を少しだけこちらに向ける
頬が赤くなっているのが分かる
渚M 「もう限界だった」
渚、鉛筆を床に落とし
そのまま春に近づく
春の腕を掴んで振り向かせる
春 「先生──」
反応してしまっている春
隠す暇も無く、渚、春の頭を持って
下からキスをする
渚M 「絵の中に閉じ込められるのなら、今すぐにでもそうしてしまいたかった。自分だけのものにして、いつまでも離したくなかった」
春、渚を抱いて自分優位なキスをする
渚 「ん…っ…」
渚M 「見上げるキスは、とても甘くて、目を閉じていても分かるほどに、辺りはオレンジ一色だった」
・教室
春、机の上に座ってその前に渚が膝立ちし、
春のものを咥えている
春 「先生……っ…」
渚 「ん……」
渚、見上げる
渚の髪を撫でている春
春 「僕…嬉しくて……どうにかなってしまいそうだ…っ…」
渚 「どうにか?……んぅ……なってくれ……」
春 「先生…」
渚の頬を触り、離させる
渚 「……よく、なかった…?」
春 「違います…こっち、来て」
渚を立たせ、抱き寄せる
キスをする
渚 「っ……ん…永久…」
春 「名前で呼んでください」
春、微笑むともう一度キスをする
渚 「春……」
春 「はい」
もう一度微笑み、キスをしながら
渚のズボンに手を掛け、渚のものを出す
渚 「あ、あの…っ」
照れる渚にキスしながら二人のものを擦り合わせる
春 「先生も気持ちよくさせてあげたいから……」
渚 「春……っ…ぁっ…ん…」
春 「先生…っ……いいですか…?」
渚 「ぅっ、ん……ぁぁっ……そこ…っ…」
春 「ここ…?」
渚 「あぁっ……っ…だ、めっ……」
春、渚の反応を見て意地悪く笑う
渚、春の頬を両手で包みキスをする
渚 「は、るはっ…?気持ち、いい……?んっ……」
春 「えぇ……っ、あなたにそんな目で見つめられているだけで…今にも射精しそうなほどに……っ…」
渚 「なっ……そ、そんな…ぁっ…恥ずかしいこと…っ…言うな…」
春 「ふふっ……ほんとですよ…っ…」
春、早める
渚 「っぁ、あっ……だめだっ…もうっ……!」
春 「いいですよ…っ…僕も…もう……」
渚 「んっ…や、ぁぁっ……はる…っ」
春 「先生っ……!」
渚 「ぁぁ、っ……んっ、あぁ────っ!」
・教室
外はもうすっかり暗くなっている
描きかけのデッサンを見ている渚
後ろから春が抱きつく
渚 「永久……」
春 「先生…、春って呼んでくれないんですか?」
渚 「え?あ……でも…」
春 「二人の時だけでいいですから…」
春、後ろを振り向かせ、キスをする
渚 「…っ……わ、わかった…」
春 「ふふっ。ねぇ、先生」
渚 「ん?」
春 「僕、キスしてもいい人と、ダメな人が分かるんです」
渚 「なんだそれ?じゃあ俺はいい人?」
春 「いいえ」
渚 「え?じゃあ……」
春 「分からなかったんです。初めてです、こんなこと」
春、笑う
渚 「?どういうことだ?」
春 「あの絵の前であなたを見たとき、可愛い人だなって思って、次の瞬間にはもうキスしたくてたまらなかった」
渚 「〜〜〜っ…」
真っ赤になる渚
春 「でもいつものように『あぁ、この人はきっと怒るだろうな』とか『この人なら大丈夫』だとか。そんな風に思えなかったんです。あなたの気持ちが全然見えなかった」
渚 「……」
春 「授賞式で先生、一度も僕と目を合わせてくれなかったでしょう?」
渚 (からかわれたと思ってたからな……)
春 「それから気になって仕方なかった。どうすればあの人の視界に入れるだろうかとか、そんなことばかり考えてて、他のことが手に付かなかったんです。こんなことも初めて」
笑う春
春 「平塚先生の所に行って、あの事務室に飾ってあるデッサンを見つけた時、これは先生が描いたものだって、すぐに分かった。絵の中の女性は幸せそうでした。僕もあの中に入りたいって、思ったんです」
渚 「え?」
春 「ふふっ、平塚先生にこの人と会いたいって言ったら、デッサンの授業があるって教えてもらって、すぐに僕お願いしたんですよ」
渚 「え?じゃあ俺に描いて欲しいが為にモデル引き受けたのか!?」
春 「えぇ」
渚 「はぁ……」
春 「だって、そうでもしないとあなたに会えなかった」
渚 「でも…」
春 「気にしないでください。僕これでも楽しんでるんですよ?嫌だなんて思ったこともないです。みんなの真剣な表情をみるのも勉強になるし、あの時間はとても楽しいです」
渚 「そうか…」
春 「先生が自分以外の人に僕を見られるのが嫌だっていうなら、断りますけど」
春、笑う
渚 「いや、それは、困る……」
春 「嘘ですよ。引き受けたからには先生が嫌だって言っても最後までやるつもりです。それに僕はこの時間が待ち遠しくてしかたない」
渚の頬に触れる
渚 「……」
春 「あなたに会えるこの日だけを思って僕は今生きています」
渚 「……」
春 「あなたが好きでたまらない」
春、キスをして抱きしめる
渚 「春…」
春 「本当は不安でしかたなかったんです……こんなにも相手のことがわからなかったのは初めてだし、先生は僕のこといいようには思っていなかった。でも僕はあなたのことを思わない日は無くて、もういっそのこと消えてしまった方が楽になれるんじゃないかって……」
渚 「馬鹿なこと言うな…君が消えてしまったら俺はどうすればいい?」
春 「えぇ、もう大丈夫」
微笑む春
春 「消えてしまうときはあなたも一緒ですよ」
キスをする
渚 「うん…」
もう一度キスをして笑い合う二人
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