ごみばこ | ナノ





朝から降り出した雪は、夜になっても止んでいなかった。見知らぬ街で、街路樹が小さな電球で飾られているのを見て、もう明日はクリスマスがやってきたのだともう一度認識した。ここのところ仕事に追われて、あまり落ち着いて街を歩くことはなかったからだろう。



「ここのところ昼夜逆転で、仕事朝帰りだったからね」



マチが寒そうに手を擦る。菓子屋の窓に子供が瞳を奪われている。その子供は綺麗な金色の紙に包まれたチョコレートを、うらやましそうに眺めていた。



「明日は団長とどっか行くの?」
『ううん、まだなにも』



子供が親に呼ばれて、名残り惜しそうに窓から離れた。手を繋いで去っていく様子を見ていると、なぜかとてもさみしくなった。



「なんかあった?」

『・・・ん、』

「最近、ふたりの空気が変だからさ」

『なんともないよ、クロロ忙しいからあんまり会ってないだけ』

「おっと、電話だ」

「誰?」

「団長だよ・・・―――もしもし、」



黙ったまま、ウボォーの電話のやりとりを聞き流していた。嫌な予感、というよりも、今の自分の心の中が冷め切っていくような感覚だった。



「団長とシャルは今晩帰れんとさ」

「なんで?」

「しらん、明日は手筈通り。それしか言われてねえ」

「なにそれ、」



頬を撫でた冷たい風が、まるで心の中を透かして通り抜けて行ったような気がした。マチがなにか言いたそうにしていたけれど、気付かないふりをして進む。なにも考えたくなかった。

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