ごみばこ | ナノ




朝から空は暗かった。昨晩降っていた雪はやんでいたが、積もった雪は深かった。なんの用事もないが、ホテルの外に出て、ザクザクと雪の道を進んでゆく。手に持ったプレゼントを、冷たい手で撫でる。丸一日かけて悩んで買ったものだが、渡す相手がいなければ意味がない。ホテルの庭の様子は、少し青っぽく見える。

また、雪は降る。ひらひらと、いくつかの雪が目の前を落ちてゆく。せめて降りやんでくれたら、少しは気持ちも晴れるかも知れないのに。どうでもよくなって、プレゼントをゴミ箱に捨てた。まだ早い時間なのに、ベンチにはカップルが寒そうに座っている。

今日はクリスマスだ。クロロは結局、帰ってこなかった。今日もどうなるかわからない、とさきほどウボォーに言われた。今朝早くに、クロロから電話があったらしい。目が覚めて、それを聞かされた時はすこしショックだった。



「あ、いたいた!」

『・・・マチ』

「ひと暴れしてくれないかってさ、ビルひとつ」

『すぐいくよ』



私の携帯には、クロロからの着信は無かった。戻ってこれないなら、せめて一言くらいくれてもいいではないか。ウボォーには連絡して、私にはなんの音沙汰もなしに。クリスマスなのに、と考えるのは私が幼いのだろうか。悩んで買ったプレゼントも、今となっては要らない物に見えてくる。こんなもの、渡さないほうがいいのかも知れない。

私はもう一度、暗い空を見上げた。赤い手をこすった。ひとつも温まらなかった。もう雪は止んでいた。


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