だあれ、わたしの名を呼ぶのは あなたは、どこにいるの。 ーーーーおまえがいたから、とおさまも、かあさまも、わたしをみてくれない。 あなたはだあれ、 とおさまってだあれ かあさまってだあれ ーーーーおまえのほうが、劣っているのに、わたしのほうが、ずっとずっとがんばってるのに。 まっくろいナイフが、頬をかすめて。切れた頬はちっともいたくないのに、胸のところがきりきり痛くて。でもそれは、わたしが痛いんじゃなくって。ああ、この胸の痛みはこの子の痛みなんだ ーーーー痛い。痛いよ。なんで、わたしばかり。わたしは、人形じゃない。なんでわたしは人形にならないといけないの。痛いよ。 泣いている。おんなのこが泣いている。このこは、わたしだ。わたしだけれど、わたしではない。 また妙な夢に目を覚ましてしまった。意識がゆっくりと戻ってくる。自室のベッドの上だった。そうか、帰ってきたんだ。この家に。数日の家出、といっても、ヒステリックになっていたお母さんをなだめるのには相当、骨が折れた。 家に閉じこもってばかりだった私を、気分転換に連れ出した。そうイルミが何度も言い聞かせて、やっと落ち着いたが、お父さんが不在の中で、お母さんはまるで鎖のとれた獣のように思えた。ここ数日かけて仕事に出かけたお父さんは、未だに帰ってきてこない。もともとヒステリックな部分もあるが、キルアも出て行ってしまって、いまはいつも以上に敏感になっているのかもしれない。申し訳なく思いながらも、心の中を支配しているのはイルミだった。 PREV|BACK|NEXT ×
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