庭には夢が埋まってる 花びら一枚分の恋 [9/9]「あれじゃない?告白されて振ったとか」 「だよねー、じゃなかったらあんな地味な子となんてないでしょ」 「ああいう真面目そうなのがタチ悪いんだよね、男も女もさー」 それから大きな笑い声が響いて、私は足速に昇降口へと戻った。 悔しくて、恥ずかしくて。 でもそれが周りから見た事実なのだろう。 私は地味で、相手にすれば笑われるような存在なのだ。 まだ落ち着かない頭の中で、彼女たちの笑い声が痛いくらいに響く。 止まったばかりの涙がまた零れそうになり、ぐっと唇を噛み締めた。 上履きを下駄箱に戻したところで、ぱたぱたと足音が響いてきた。 その音から逃げるようにして靴を履くと、バッグを力いっぱいつかんで走り出した。 さっきの女子たちが来ると思ったからだ。 彼女たちはきっと私を見ても何も言わないだろうけれど、心の中では笑うのだ。 自分より下の人を見て安心して、満足して。 腕をつかまれて、振り向いたら須藤英知だった。 「なんだよ、結局また逃げるのかよ」 彼は呆れたような口調で言ったけれど、私の顔を覗き込んでから小さな声で、なぜか「ごめん」とつぶやいた。 それから歩道の隅を進む私が陰になるように、斜め前をゆっくりと歩く。 彼の歩幅について行きながら、意外と広いその背中と地面を交互に見つめた。 時折振り向く彼の笑顔を、心地良く感じる理由を知りたくて。 [*prev] | [next#] [bookmark] BACK |