星空商店街へようこそ (1/2)
閑静な住宅街の片隅にある、最近少し小綺麗になった小さな商店街。
ここは星空商店街。黒い街灯は灯りの部分が、星の形をしていて、暗くなれば、最近防犯に効果的とされる、青い灯りで道を照らす。建ち並ぶ店は外装のほとんどが白で統一され、黒い街灯や電柱とモノトーンを織り成す。レンガ詰の通りには、その名を表す様に、所々色の違うレンガで星を象り、通る人々の目を楽しませている。
その商店街の真ん中辺り、寂れていた場所に驚くほどの集客力を発揮した2つの店舗が並んでいた。
同じ時間にシャッターが開くその店は、左が花屋、右がケーキ屋だった。
そして。
「ぶぇーっくしょい!あーあー!今日もどこからか花粉が飛んで来て良い迷惑だなぁ!!」
「うぅわっ!せっかくの花の香りが甘ったるい匂いで台無しだなァァ!!」
「んだぁ、やんのかコラァァ!!」
「上等だァァ!!」
仲が悪かった。
朝の喧嘩と夜の喧嘩を抜かせば、早々お互い顔を合わせる事もないその2店舗は、店主が若い男、タイプは違うが美形、女性にモテるという共通点があり、しかしそれだけだった。
花屋の店主、土方十四郎は漆黒の直毛で眉目秀麗、低音で響く声音は、奥様方のみならず、女子高生・女子中学生までをも魅了する、正統派の少女漫画の王子様キャラの様な人物だ。
一方、ケーキ屋の店主、坂田銀時は珍しい銀髪に紅い瞳、童顔で屈託のない笑顔、やる気のない様な性格から、奥様方のみならず、男子を含む中高生、更にはご年配の方と、幅広い支持を得ている。
どちらも接客には少々難点はあるが、それをマイナスとさせない様な、人を惹き付ける人物だった。
もちろん、土方の花を選ぶ的確さ、ブーケの完成度の高さ、銀時の作るケーキやクッキーなどの菓子類の味の秀逸さがあるからこその人気だ。
二階が自宅になっているこの造りは、星空商店街の全てがそうなっており、土方と銀時の店の間には通路がある。そこから裏手にある階段を登り、住居である玄関へと通じている。裏手に回る通路は他にもあるが、数戸先にあり、わざわざ遠回りをするには、些か距離があり過ぎる。そして、土方も銀時も負けず嫌いなので、相手の為に道を変えるのは敗けだ、と思っており、時間をずらして朝と夜に会わない様にするとか、通路を変える、等という選択肢はないのだった。
二人がこの場所へ引っ越して来たのは、同じ日だった。
隣同士でお互い独身の男、困った事があったら頼ろう、と銀時は事前に商店街の会長から隣の人の話を聞き、考えていた。
「すいませーん、隣の坂田ですけどー」
挨拶に行くと、隣人は忙しなく掃除や片付けをしていた。と、銀時の声が聞こえたのか、奥で作業していた後ろ姿が振り向いた。
げっ、男前だなぁ。
銀時の様子を見て、一瞬驚いた様な表情をした隣人は、ペコリと一礼してから銀時の方へ近付いた。
「挨拶が遅れてすみません、土方です」
「いえ、坂田です。隣でケーキ屋やらせて貰います。あ、これウチのケーキです」
「あ、俺甘いもの嫌いなんで結構です」
銀時はカチン、とした。無類の糖分好きとしては、土方の発言は許せなかった。
「それは、すみませんでした」
「いえ、あ、ウチ花屋をやらせて貰います。良かったらウチの花……」
「ぶぇっくしょ!ちょ、すみません。俺、花粉アレルギー……っくしょ!!」
「あー……すみません」
「いえ、何かすみません」
あまり良い印象を得ないまま、初めての挨拶をし、そのまま何故か関係は顔を会わせれば喧嘩する仲。今の状態で落ち着いてしまった。
そんな犬猿の仲の様な二人だが、店が閉まると勝手が違った。
「なぁ、飲みに行かねぇ?」
「あぁ、やっぱ明日休みだと飲みてぇな」
この地に越して来て、お互い言いたい事を言える。歳も近い事もあり、また、親しい友人と呼べる人物が近場にはお互いしかいない。そのため、休みの前日は二人で飲み明かすのが日課の様になっていた。
そのため、商店街の周りのおじさんやおばさんからは、喧嘩する程仲が良いのだ、と微笑ましく見られている事など、本人達は知る由もない。
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