人違いです 1/2
「坂田さん、受付にお客様がいらしてるそうです」
女子社員が受話器を起きながら告げた。
「え、誰?」
「S社の土方さんです」
「え、誰?」
「え、知らないんですか?」
「今日なんもアポねーよ」
「またまたぁ、いつも忘れるんだから坂田さんは、行ってきて下さい」
首を捻る。
誰だろ?
人事部で来客は多いから、まぁ、マジで忘れてたのかもな!
エレベーターで下まで降りて、あ、名刺忘れた!
また上って取りに行く。
再度エレベーター降下中、あ、携帯忘れ…以下同文。
チンと鐘の音を立てて1階ロビーに到着。
つーか、土方ってどれ?
ちょうど昼の1時半過ぎ、午後一番の来客が結構いてロビーが賑わっていた。
誰がどれだかさっぱり分かんねぇ
受付の志村、は可愛いけど怖いから隣のぶさいく…愛嬌あるハムの方に小さく声を掛ける。
「土方サンてどの人?」
「あ、坂田さんお疲れ様っす、かっこいい人っす」
「いやそうじゃなくてさ、そんなザックリした主観はどーでもいいんだよ、どの人かって聞いてんだよ」
「黒髪のかっこいい人っす」
「シバクぞハム子、みんな黒髪じゃねーか」
「瞳孔死んでる黒髪のかっこいい方です坂田さん、ハム子ちゃん脅すのやめてくれます?」
「…すいません」
「ハム子じゃなくてきみ子なんすけど」
志村に女王の微笑みで言われたので、仕方なく瞳孔イッた黒髪を探す。
かと言って1人ずつメンチ切ってくわけにもいかねーし…あ、
1人、すんげぇイケメンがいた。
放つオーラがキラキラして他と一線を画す、スーパーヤサイ人か。
眉寄せて、時計を見ながら小難しい表情を浮かばせていた。
俺がもたもたして時間食っちまったからな、気が短いタイプか。
高そうなスーツがよくまぁ似合うこと。
瞳孔、死んでる
髪、真っ黒
多分コイツだな
近付くと、あっちも気付いたらしい、目が合った。
死んだ瞳孔が宿る双眸が見開く。
まぁ俺を初めて見た奴はだいたいこんな顔すっからな。
何せ銀髪に赤目、ハーフですか、とまず聞かれる。
知るか。
「土方さん、ですか?」
口開けて、目を見開きっぱなしだ。
そんなに驚かなくても…
「あの、土方さんですよね?」
再度強めに言うと、
「あ、は、はい!」
姿勢を正した。
「初めまして、先日お電話頂きましたS社の土方です」
胸ポケから丁寧に差し出された名刺を受け取る。
「こちらこそ初めまして、坂田です。お待たせして申し訳ありませんでした」
つーか電話なんてしたっけ?記憶にないんだけど。
俺の渡した名刺をジッと見て、小さく「ぎんとき」と呟いた。
一瞬ドキンとする。
S社システム課課長
土方十四郎
こんな若いのに課長とは、顔がいい上にやり手か
いや年齢知らねーけど
「じゃ、上の応接室にご案内します」
「あ、はい」
エレベーターに先に乗せて、7階のボタンを押す。
「綺麗な髪ですね」
しばらくジッと見てる視線を感じてたら、感心したように言われた。
「どうも」
「ハーフなんですか?」
「よく聞かれますけど多分違います、突然変異です」
ブッと吹き出す。
あ、笑うと案外可愛いんだな
「あ、すいませ…」
「いえ」
「……」
「……」
き、気まずい。
エレベーターで二人きりの空間、息づかいがやたら近く感じる
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