人違いです 2/2
「で、今日はどういったアレでしたっけ?」
「当社のシステムを検討して頂けるとの事でしたので」
「あ、ああそうそう、アレね、あのシステムね…」
どれだ?!
全く分かんねー
首を捻る。
一緒に土方さんも首を捻る。
「どうされましたか坂田さん」
「あ、いえ、別に」
チン、とエレベーターが7階に止まった。
「すいません、喫煙所ってありますか?」
「ああハイ、こっちに」
フロアの隅にある喫煙部屋に連れて行く。
土方さんは胸ポケから煙草を取り出して長い指で挟み、マヨライターで火を点け…え?マヨ?思わず二度見だ
ふーと煙を吐く、それだけの仕草なのにサマになるなぁと眺める。
俺は苦いの嫌いだから吸わないけど。
「坂田さん、失礼ですがお年は…」
昨今は禁煙ブームで喫煙者も少ない、またもや二人きりの空間の暇潰しに、世間話の体で聞いてきた。
「27です」
「あ、同い年ですね」
「マジすか」
「彼女います?」
オイオイ随分突っ込むなぁ、だが今はドンドン来い、なるべく仕事の話はスルーでいこう、分かんないから
「今はフリーかな」
「そうですか良かった」
「?土方さんはいるっしょ」
「俺も今フリー…あ、ちょっと片想いになりそうだけど」
「またまたぁ、モテんでしょーが」
「ええ、これから落としていくつもりです」
「…あ、そう」
嫌味か
「で、坂田さんのそのネクタイは何すか」
「は?何が?」
「いや…あ、苺柄なのか!」
俺の首元に顔を近づけて、小さい粒々を認識したらしい。
薄ピンク色で、小さい苺の絵が沢山ついているのだ。ぶっちゃけお気に入りですが何か
「苺好きなもんで」
「ああ坂田さん、甘い匂いしますもんね」
「マジすか」
自分の腕の匂いを嗅いでみるがよく分かんねぇ
「フェロモンですよ」
「……ハァ?」
真顔だ、なんだこの人大丈夫か、顔はいいのにな
「メアド交換してもいいすかね、今後の為に」
「ああはいどーぞ」
ピピッと電波を飛ばす。
つーかこの人軽く電波っぽいよな
ぶ、と突然土方さんが噴き出した。
堪えきれずに爆笑する。
え、何?
「あーすいません、嘘です」
「………へ?」
「経理部の坂田さんに会いに来たんです俺、いい加減そっちに顔出さなきゃ」
経理部?
ここは?人事部
………あ!そーいや経理部にもいたな、もっさい坂田が!坂田違いか!!
「さっき名刺もらって名前が違う事には気付いたんだけど、面白くてつい」
ハァァァ?!
いや、まぁね、俺も乗っかっちゃって知らねーのにトボけたけどね!
「ついでに一目惚れもしたんでつい」
「あーそう……え?」
ひとめぼれ?確かお米にそんな品種あったっけ?
え?米の話?
「そんなわけなんで、これから全力で落とすつもりなんで、」
煙草を灰皿に押し付けて、
「後で正式にアポ取らせてもらうんで、よろしく」
やたら男前に口の端を上げて笑い、喫煙所を後にした。
…………?
ん?どゆこと?
一目惚れ?誰が?誰に?
天パでこんがらがってる頭が更にこんがらがる
いやまさか、これも嘘だよな?
冗談、だよな?
数十分後にお誘いのメールが来た。
マジだったのか
それから3ヵ月間かけて落とされるまで、俺は土方の本気を身を持って知る事となった。
.
-2-
[
back
]*[next]
bookmark
BACK
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -