◎ 2話
「なんだったのかしらあの男…」
ナマエは授業を遠耳に聞きながら窓の外をぼんやり眺めて今朝の事を思い出していた
個性は確かに発動したし、登校してから試しに先生にフェロモンの個性を使い次のテスト内容を簡単に明かすことが出来た
不能になった訳ではなさそうだ
(私でさえ気付いていない何かがあるか…?)
相手が個性を消す個性だとしても発動前じゃ不可能だ
その日からナマエは口の悪い青年のことばかり考えるようになった
「ナマエお嬢様、誠でございますか!?」
「えぇ、今日から歩いて学校に通うわ」
「お嬢様がご決断なされた事です。私は従うのみですがくれぐれも道中お気をつけください」
「ありがとう、セバス」
執事のセバスに徒歩での登校を始めることを告げたその日にまた同じ道で青年と出くわした
どうやらこのルートが彼の登校順路らしい
「また会ったわね」
「あぁ?誰だ?」
「っ!覚えてないの!?先日道を尋ねたでしょ!?」
「モブに興味はねぇ」
待っていたと言わんばかりに爆豪の前に仁王立ちしてナマエが話しかけるも虫を払うかの如く扱われる
「私ナマエ。あなたの名前は?」
「教える義理なんざねぇな」
「…つくづく腹の立つ男ね…!じゃあ個性は?個性を消す能力か何か?」
「俺の個性はそんなヤワなモンじゃねえ退け」
名前も個性も明かされぬまま爆豪はナマエの横を通り過ぎようとした時ナマエは爆豪の腕を掴んで止めた
「前に始めて会った時…個性をかけちゃったのよ、わざとじゃないわ」
「あぁ!?ふざけんじゃねぇぞ!何しやがった!?」
先程の態度と打って変わって爆豪は勢い良く振り返りナマエを見た
初めて目があった爆豪の目は綺麗な赤をしていた
「…教える代わりにあなたの名前を教えてちょうだい」
「……っチッ、爆豪勝己」
「爆豪…爆豪勝己ね」
爆豪の名前を復唱して覚えたナマエは浅い深呼吸をして自身の個性を伝えると爆豪は額に血管を浮かせながら普段の生活が変わった事もましてやナマエに興味を持った事もないと言い放った
爆豪の言葉に苛立ちを覚えつつもどこかで聞いたような名前にナマエは目線を上げて思い出す
あっ、と思い出した時には「もう用は無え」と踵を返して学校へ向かおうとする爆豪の背中に向けてナマエは捨て台詞を吐いておいた
「よろしく、ヘドロ事件の爆豪勝己くん」
してやったりの顔で雄英と反対方向のナマエの学校へ振り返る事なく歩いて行った
後ろから爆豪の怒号が聞こえるがこれまでの数々の爆豪の言動を考えると可愛いものだろう
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