小説 | ナノ

 23話




ゼンのいる町へ着くとまるで帰ってくるのが分かっていたかのようにゼンは船着場でナマエを待っていた

「ゼンさん!」

「よく帰ってきたなナマエ」

和かに微笑む顔と頭を撫でる優しい手が久しく感じナマエは父と再会したかのように喜んだが今は時間が惜しかった

「ゼンさん、私無事ハンター資格貰ってきたよ!ほら!」

「うむ、良くやったぞ。ナマエなら出来ると信じておったわ。それに言ったように念も使っておらんようじゃな」

ナマエの腕を取りミサンガを見たゼンは我が子同然のナマエがここまで逞しく育った事に嬉しさを感じていた

「それにその顔…良い仲間と出会えたようじゃな」

「そうなの!キルアにゴン、クラピカとレオリオって人達と仲良くなれた。私外の世界がこんなに楽しいと思ったのは初めてだよ」

「それは良かった良かった」

ナマエの腕を取るゼンの手に上から触れ久しぶりの暖かさを感じた

「…それでね、試験で一番に声を掛けてくれたキルアがね…今大変な事になってるの。私はキルアを救いたい」

真っ直ぐにゼンを見つめる紺碧の瞳は美しく輝いていた

ゼンはここまで真っ直ぐに育ち良い仲間に出会えるとまでは思っておらずナマエの決意に同意した

「いいじゃろう、ミサンガは外そう。…ナマエその力でキルアとやらの家族、ナマエの仲間を傷つけないと誓うか?」

「うん。誓うよゼンさん」

「よかろう」

ゼンはミサンガに手を置き念を送るとミサンガはいとも簡単に外れた
外れたミサンガをナマエは受け取り大切に思い出として仕舞っておいた

「ゼンさん、本当はもっと話したい事がたくさんあるんだけど私急いで戻らないと行けない」

泣き出しそうな目をして言う物だからゼンは落ち着かせるようにナマエの頭を撫で続けた

ゼンとの久しい再会を惜しく思いつつナマエはまたも船着場へ向かい船へ乗り込んだ

「ゼンさーん!私に世界を見せてくれてありがとう!また必ず戻ってくるからね!」

出発の音と同時にナマエは見送るゼンに手を振りながらゼンへの別れの言葉を告げた
ゼンもまたナマエに手を振り返した

念を使えるようになったナマエは意を決してキルアの待つククルーマウンテンへと急いだ

向かう先はパドキア共和国デントラ地区にある
船を乗り継ぎ飛行船で3日
ゴン達には出遅れてしまったがパドキア共和国についたナマエはククルーマウンテンの情報を集め観光バスが出ていることを知り観光バスに乗り込んだ

バスガイドの女性がゾルディック家の説明をしてゾルディック家の門の前まで辿り着いた

「ここが正門です。別名黄泉への扉と呼ばれております。入ったら最後生きて戻れないとの理由からです」

正門から続く大きな山一帯がすべてゾルディック家の私有地となっておりここから先へはいけないらしい

一通り説明を終えたバスガイドが皆をバスへと戻るよう指示したがナマエは動かなかった

「あの、私ここに残ります」

「え!?私の話聞いてました!?中に入れば二度と生きて出られませんよ!?」

顔をグイッと押し寄せて額に青筋を浮かべながらバスガイドはナマエを説得しようと試みたがナマエは折れなかった

「大丈夫です。友達に会いにきただけなので」

「…ー!もう!全くなんなのこの前から変な客ばかり!何があっても知りませんよ!?」

説得を諦めバスガイドはナマエを残し観光客を引き連れてバスへと戻っていった







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