小説 | ナノ

 序章


事の始まりは中国 軽慶市。
“発行するか赤児”が生まれたというニュースだった。

以降各地で「超常」は発見され原因も判然としないまま時は流れる。

いつしか「超常」は「日常」に…
「架空」は「現実」に

世界総人口の約八割が何らかの“特異体質”である超人社会となった現在。
混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が脚光を浴びていた。

ナマエは小学1年生を迎えていた。
周りの子供達はもう既に個性が発現しヒーローを志す者も多い中ナマエは未だに個性がない。

周りからも無個性だと哀れみを受けた目で見られる日々を幼いながらに痛感していた。
ー本当に、私は無個性なのかもしれない。

それでも日常生活には支障は無い。
引け目や負い目を感じる事はあれど自分を可哀想だなどと思うこともない。

学校帰りの道も1人で帰れるし、勉強だってついていけている。
最近の日課は帰り道によく遭遇する野良猫と戯れ合う事で今日も野良猫に遭遇していた。

「今日はいい天気だね〜日向ぼっこにはうってつけだね!」

ニャ〜と返事をする野良猫の声をかき消したのは男の子達の怒鳴るような声

「ヤロー!1年のくせに!上級生にぶつかったら謝れよ!!」

すぐ近くからする声にびくりと肩をあげ恐る恐る木の陰から声のする方を覗くナマエ

(あ、あの後ろ姿、隣のクラスのバクゴーくんだ。)

「明日覚えてろよ!」

上級生の男の子2人が捨て台詞を吐いてそそくさと逃げていく姿が見えナマエは木の陰から爆豪に近寄る

「俺がお前らにぶつかったんじゃない…お前らが俺にぶつかったんだろ…!いちばんすげぇヒーローは最後に必ず勝つんだぜ」

グスッと鼻水を啜るような音が聞こえたがナマエはその言葉を聞いて身震いした

「か、かっこいい…!バクゴーくんってすっごく強いんだね!ヒーローみたいでかっこよかったよ!!」

思わず思っていたことが口に出てしまうナマエ
その言葉に反応し爆豪が驚いたような表情で振り返る

「おっ、俺はいちばんのヒーローになるんだから当たり前だろ!!…てかお前誰だ」

「あっ私隣のクラスのナマエ!ミョウジナマエだよ!よろしくねバクゴーくん。」

「なんで俺の事知ってんだよ」

「だってバクゴーくんはとっても強い個性で有名なんだよ?噂でしか聞いてなかったけど本当に強いんだね!」

好奇心と興奮で笑顔になって喋るナマエにどんどん頬が染まっていく爆豪

ナマエは…と爆豪が言いかけた時に木の陰から爆豪の友達が現れ「すげーかっちゃん!」「小4、2人とケンカして勝っちゃった!」と爆豪を囲みナマエとの会話は遮られる

「じゃあまた学校でね!バクゴーくん!」

笑顔で去っていくナマエの後ろ姿がスローモションのように見えた爆豪

この時の気持ちはまだ小学1年生の男の子には形容しがたい物だったが確かに胸の鼓動が高鳴るのを感じていた






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