小説 | ナノ

 1話




物心がついた時には少女はまるで人形のように小さな島国の村に飾られていた
理由は“紺碧”を持つ瞳
美しいと崇められ村の人々には意思を持つことは許されない人形のような扱いを受けていた

母親は優しかった。もうすぐ7歳を迎えるナマエに村の中で唯一人間として、そして子供として扱ってくれた。
時折こっそりと密会しては頭を撫でる優しい手がナマエは好きだった
その瞬間だけは“人間”になれた気がした


いつからだったか、村の人々の意識が変わっていったのは
初めは唯一無二の存在として崇められていたナマエだったが人間の底のない欲とは醜く、やがて「1つでは足りない」と誰かが言い出した

ー それが地獄の始まりだった

村の人達の空気が変わっていくのをナマエは肌で感じていた
ピリついた空気、時折羨むようにこちらを見る目、そして母親が来なくなった

ナマエは村の中で勝手に喋ることは許されていなかったが母親が来なくなった事に対して村に不信感を持っていた

何人か子供が増えた気がする
そしてその子供を連れている親は父親も母親も残念そうにその子供を見る
「また失敗だ」そう、確かに聞こえた

嫌な予感がした

初めて自分の意思で倉から出たのがナマエが7歳の頃だった
夜中に初めて自分の足で土を踏んだ
冷たい感触が嫌な予感を倍増させた

確か母親の家は…と見慣れない景色に囲まれながら覚束ない足取りで向かう
一軒の家から明かりが漏れている
その明かりに誘われるようにナマエはその家に近づくと中から声が聞こえてきた

女が苦しそうな声を出すのが聞こえた
それが自分の母親の声だと理解するまで時間はかからなかったが扉の間から覗き見た光景に嫌な予感は的中したと確信した

自分の母親が幾人かの男に組み敷かれ苦し紛れの喘ぎ声を出していた


絶望がナマエを襲い思わず扉を開けてしまう。そして、その場にいた全員がナマエを見て固まった

その現場を見たナマエは初めて声を出した


ー 「『消えてしまえばいい』」

それが齢7歳にして初めて発した少女の言葉だった






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