01.犯してる愛してる


 充を一言で表すなら、猫の様な奴かもしれない。勿論、良い意味も悪い意味も両方含めての話だけど。

 退廃的な色香を纏わせた仕草は甘さと媚びを連想させるが、シニカルな表情と仄暗さ宿した眼差しは、誰にも靡かない気位の高さを映し出す。人懐っこい喋り方と一見柔らかい対応も、心を許した振りをしながら、本当は必要以上に他人を近づかせない為の見えない壁。

 孤高で在ろうとした本当に猫みたいな君が、僕だけに信頼を寄せて懐く存外無垢な姿や、鬱屈とした胸の内に巣食う感情に惑う黄橡の瞳に魅入られ、彼の方から誘われたとはいえ、僕は選ぶ道を誤った。


 普段の姿からは程遠い、高く甘い声を聞きながら、白濁を吐き出し果てるまで身体を揺さ振り、心ごと陽物で刺し貫く。僕の想いはエゴとなり、充の奥深くまで侵食した。決して消えない傷痕だけを残して。

  
 今更許しを乞うつもりは無いけれど、これだけは言わせて欲しい。充、それでも僕は、君を愛していたんだよ――。

2017/05/15
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