ユウ2


ごく一般人でサラリーマンの藤原は天気のいい休日も部屋でゴロゴロしていた。朝は10時に起きるという怠惰っぷりを存分に発揮しつつ、ベッドから起き上がれないままぼんやりしている。
(もうすぐお昼になるなあ)
流石に起きなきゃなあと思いつつも起きれない。温かな布団が悪いんだと言い訳しつつ携帯に手を伸ばすと連絡が入っている。
三十路の藤原の唯一、人に驚かれる点があるとしたら恋人のことだろう。ユウという同性の恋人は、以前デリヘルボーイとして抜いてもらったというのが出会いだ。電話番号は貰ったものの建前みたいなものだろうと鞄の奥底にしまって忘れていたのだが、出張先から帰ったのに家に押しかけて来たのだ。
それ以来だらだらと過ごす藤原に献身的に尽くしてくれて、2人はいつの間にか恋人になっていた。通い妻のようにやって来るユウに合鍵を渡したのは最近のことだ。
そんなユウからの連絡だった。
昼頃に伺うという旨が書いてあり、身体を起こしたところでユウはやってきた。
「藤原さん!」
パタパタと廊下を走って来る音が聞こえる。そんな足音もかわいいなあと最近は思っている。
「あーよかった、返事なくてどうしちゃったのかと」
「あはは…今見たんだ」
藤原には勿体無いくらい、ユウは美形だ。手足もすらっとしていて肌も白い。どうしてこんな子がおじさんの俺を、と思った回数うん10回。
「ご飯まだだよね?」
「うん、何もないんだけど」
「どうせそんなことだろうと思って、買ってきたよ」
ユウの手にぶら下がるスーパーの袋。そこには野菜やらが入っているのが見える。
耳に髪をかけてニッコリ微笑む姿は理想の奥さん像だ。早速前までは一切使われていなかったキッチンに消えて行く背中を見つめる。
藤原と仕事で出会った以来、デリヘルの仕事はやめて普段はレストランのウェイターとして働いているらしい。お洒落な店で働いてそうだよなあ、と他人事のように思う。料理の手つきは手馴れていて、恋人に任せっきりだが食事は美味しいし正直有難い。
はじめて家に押しかけて来た時は流石にビックリした。後で聞くと名刺の会社から県を特定して、そのあと会社の前で張り付いていたらしい。れっきとしたストーカーだな、というのは飲み込んだ。何故なら押しかけてきたユウは涙目だったからだ。
(なんで連絡くれないんですか、だったかなあ)
うるうるとした目で見つめられ、フロアの住人に疑われるのを恐れて咄嗟に部屋に入れてしまった。いろいろ詰め寄られて、そのうち日も空けずに家に来るようになった。
甲斐甲斐しく世話をしてくれるユウに奧さんみたいと言ったら「奧さんに、して下さい!」と言われてようやく2人の関係は恋人というものになった。
「もうすぐ出来るけど…一緒に食べていい?」
何処か謙虚な恋人の、伺うような笑みも好ましい。藤原はもちろん、と頷いた。

言葉もなく、そういう雰囲気になったのは食事後に2人でテレビを見ていた時のことだ。バラエティの再放送の話で盛り上がっていたが、CMに入ると2人は無言になり、ユウが寄っかかってきたのでベッドに向かった。
グシャグシャのベッドを愛おしそうに撫でるユウの表情にキスをすると舌が入って来る。舌先でつつきあって、絡めて深いキスを繰り返す。
「ぁんっあっ…ふあっ」
れろっれろれろっじゅるっ
お互いの唾液かも分からないくらい長くキスをして、最後に上唇を軽く食んで話すとつぅっと糸を引く。
あっという間に赤くなるユウを見つめながら身体を押し倒すと、もうユウのペニスは反応していた。
「あっ…さわって、っ」
おねだりするユウの前を緩めると、下着を押し上げて勃起しているのがわかる。汁をたらたら零し、下着の色を一部色濃く変えてる。
じろじろと見つめているとユウは手でそこを隠す。
「あんま、見ないで…」
「触ってって言ったのに?」
「うう…あっ、あんっ!あッあぁ…!」
下着を取るとぶるんと飛び出すペニスに手を添えて、少し動かすだけでユウはふるふる震えてもっとと言うように腰を動かして手のひらに擦り付け始める。
(いやらしいなあ)
「あっあぁっ!…ひぃ、いっ!」
「気持ちいい?」
「うん、うんッ…!やば、いっああんッ!」
身を捩りながらも、あんあんと声が止まらないユウに軽いキスを繰り返しながら肌を寄せるとユウの手が藤原の背中に回る。
意外と寂しがり屋でくっつきたがるユウなのでそのまま前を擦る手を早める。ユウの喘ぎ声と吐息が耳に吹き込まれて、藤原もくらくらとしながらも裏筋を指で何度も撫で上げると、ぶるっと震えて一層高い声をあげたユウ。
「あぁっあんっんっんっあっあッ!」
生暖かいのが手にかかる。はぁーっ、と荒い息を繰り返してぷるぷると震えたユウは甘えるような声を出す。
次は自分の番と言わんばかりに藤原の前を寛げてユウは反応し始めてる藤原のを軽く撫でて扱く。我慢汁を全体に絡ませてから口の中に迎え入れる。
「んむっ…んふ、んっん、」
ぺろっれろっむちゅっ
「おっきぃ…」
太ももに手を当てて、舌で裏筋やカリをぺろぺろ舐めついてちゅっと吸い上げる。
(上手いなあ)
熱い粘膜がペニスの全体に絡みつくような動きにあっという間に限界が近づいて来て、藤原はたまらずユウの頭に手を当てる。添えるだけで喉奥まで無理に突っ込んで来ることはない。そんな優しさに目を細めてユウは喜んだ。
そして強く吸い上げて、じゅぶっと口をすぼめて顔を前後させる。強い刺激に藤原は腰を震わせて、限界を知らせる。
「んんっ…だしてっ…んむ、んんんっ!」
どぷっと口の中に一気に広がる苦味に顔も歪めず、むしろ嬉しそうに笑うユウ。こくり、と飲み込む音には藤原はいつまで経っても慣れない。
「美味しくないでしょ、お茶持ってこようか?」
「ううん、大丈夫だから…それより、早くシよ、もう我慢出来ない」
ユウの提案に藤原はこっくり頷くと、ローションをつけてユウのアナルに指をそえる。そしてずぶりと潜りこませると、ユウは膝立ちで藤原の肩に捕まって身体を仰け反らせる。
「あっ…あ、んんっ」
目の前に差し出される乳首に舌を伸ばして、れろっと舐め上げるとユウはまつげを震わせて感じるしかない。整った顔立ちが淫らにとろけていくのは何度見ても実物だ。
ぬぷぬぷ、と指を抜き差しして2本目も入れて前立腺を突く。
「あぁあーーッ!そこ、そこっあんっん!」
こり、と軽く触るだけで面白いくらいに震えるユウの手は肩に思わず爪を立てていた。ぐい、と押し上げれば首に手を巻いて縋り付く。目の前に晒される白い肌を舐めて、乳首に少し歯を立てるとユウの身体を快感が一気に突き抜ける。
「ああんっすご、いぃ…ッだめっあっふじ、はら、さんっ!」
ビクビクッと腰を震わせて痙攣したユウはおそるおそる自分のペニスを見たが、やはりそうだ、射精は伴っていない。先走りが切なげに亀頭を濡らしているだけだ。
射精を伴わない絶頂を知ったのも藤原と出会ってからだ。きつく責められているわけでもないのに、指を締め付けて感じすぎてしまう。
ユウは肩で息をしながら、ベッドで四つん這いになって自分のアナルに指をそえる。
「いれてっ…もぅ…ッ」
早く藤原を感じたい。はやく、はやく。
そう焦るユウの前で藤原はベッド脇に用意してあるコンドームを手に取った。
「あっあの…ふじわら、さん」
「ん…?」
「…生じゃ、だめ…?」
恋人同士なのだ。コンドームのが後で辛くないが、中出しして欲しいというのがユウの願いだ。いつ中に出してもらうのだろうと初めの頃はワクワクしていたが、10回を超えてきた頃はもう不安しかない。
「うーん…」
「だめ、かな…あの、俺大丈夫だし…」
藤原はとても優しい。ユウよりずっと年上でダラダラこそしているが気を使ってもらっている。ふとした時に見せる大人の姿もユウは大好きだ。
しかし優しさが辛い時もある。ちゃんと中で三原を感じたいのだ。
「…ちょっと、病気が…困る、かな?」
ユウの胸に途端に悲しみが広がった。身体を起こしたユウはキッと藤原を睨みつけて、しかし目からは悲しみを零して叫んだ。
「ばかっ…藤原さんの、ばか!」
「えっ…ごめん」
ちょっと、や、困るという言葉もかなりユウを傷付けないように選んだものだとわかる。それでもユウは悲しかった。そんな優しさはいらない。
確かにユウは、身体を売っていた。お金のために。気持ちよくてお金も稼げるなんて最高だと思ってた。それでも藤原を好きになり藤原のことを考えて生活している今の方が幸せだ。とっくにもう、ユウは自分が病気ではないか調べていた。そうすれば自分も藤原に本当に愛されると思って。
イったばかりの敏感な身体を叱咤して、裸のままテーブルの方に歩いていくと鞄の中から紙を取り出す。小さく折られた紙はいつも持ち歩いている。恋人になった時から。
バッとそれを藤原の顔面に突き出す。藤原は紙の文字を追って、検査項目を見つめ問題無しであると知って、申し訳なさそうに顔を歪めた。
「ごめん…あの、ユウ…」
「いいよ、しょうがない、けど…だからお願い」
生で、感じさせて。小さく震える声は、今にも消え入りそうだった。

ぴと、と肌と肌がくっつく感触に肌が粟立つのを感じながらユウは胸の鼓動が大きくなる。熱い塊がゆっくり時間をかけて入ってくると、ぞわぞわと快感が湧き上がる。
「あっ、あ…きてる…っ」
奥までぴったり、本物の藤原のものに埋められてユウは、ぽろぽろと涙をこぼしてくしゃりと顔を歪めた。
(あつい…あつい)
腹の奥に感じる熱さに魘されたように苦しげに、それでいて胸は幸せでいっぱいだ。
「あっあぅ…っあっんんんんっ!」
ちゅぷっじゅぷっじゅぷっ
ぴったりとユウのお尻に藤原の腰が押し付けられるたびに腰砕けになりながらも必死にベッドに手をついて耐える。気持ちよくて死にそう、そんなことがあるなんて。
「ああ"ッ…あつ、あっひあ"あ"ーーッ!」
ごりごりと直に前立腺が抉られ、目の前に火花が散る。太ももががくがく震えて、腰は揺れて、額はシーツに擦り付けた。
刺激されないペニスも勃起してぷるんっと揺れるたびに先走りを飛ばしている。腰の奥がずくりと疼いている。
「ふ、ぅうっだめ"ぇっ!ああっんん!あんっあっあ"ッ!」
もっと感じたくて、ユウのアナルは藤原のペニスを食むように窄んだ。卑猥な音も汗ばんだ肌が触れるのも、藤原の息遣いも全部ユウにとって感じる要素になっていた。
「ふじ、わらっさんっ…一緒、に…あっ、イきたっ…!」
「うん、…っ」
「あーッあっ!そこ、ばっかっ…ひああっ!」
ばちゅっじゅぶっじゅぶっじゅぼっ
藤原の動きが早まり、突き上げるたびにいろんな場所を擦って中に入ってくる。しかし必ず前立腺を抉る動きに、お尻をぶるぶる震わせて全身を蕩けさせる。
「あっだめ、だめだめっ、!…ああーーッ!あっあっ、…ひぃいいい〜〜〜ッ!」
限界が来ると、ユウの身体は絶頂に痙攣してアナルを強く締め付ける。堪らず藤原も絶頂を迎え、中に吐き出す。
ユウは何とか身をよじって藤原にキスをせがんだ。ちゅ、という音とは違い舌が絡み合い溶けるようなキスを繰り返す。
「んーッ…んん、んぅ」
ユウは、幸せのあまり涙をこぼしていた。



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