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・ラプンツェルパロディ
・エロあり



 自分でも気づかないうちに、腰元で括られた紐が引き抜かれた。戒めを失った服は衣服というよりただのぼろきれだ。くつろげられた下履きの中に牧野の生白い手が突っ込まれ、布をふるい落とすように下腹が晒される。
 岩肌のようなごつごつした腰回りが露わになった。どこも滑らかでやわらかそうな牧野とは違って、宮田の腹は筋肉の形に添って硬く幾重にも割れている。所々には鋭い刃物でひっかいたような痕もある。これまで集落を訪れた男たちの死に際の抵抗でつけられたものだった。
 こんなものを高貴な彼の前に晒してしまうことに、罪悪感が宮田を咎める。しかし牧野はそこを素通りして、下腹に茂る繊毛に指を差し込み、膨らみかけのものに手を伸ばしていた。
 それは何度思い描いた光景であったか。
 手のひらで軽く鼠径部を支え、黒々した幹を支え起こされる。醜悪とも思える男の象徴は、驚くほど白い彼の手の中で大きな茸のように頭をもたげていた。
「まあ、なんて立派な」
 うっとりした声音で言われ、それは大きく脈打った。
 さらに数回こすられると、すぐに支えがいらないくらいに屹立する。牧野はゆるく揉むように握ってはそこの感触を確かめた。
「ふふ、こんなに硬くなって」
 はやくも透明な我慢汁をにじませる先端に指が這い、淫液が掬い取られた。それを幹に塗りたくり、牧野は粘液の力を借りて先ほどより滑らかにペニスの表面をこすり始める。
「くぅっ……!」
 宮田の顔が快感にゆがんだ。
 想像よりもはるかに強い刺激。牧野にされているというだけで、自分でするのとはこんなにも違うものなのか。そうも激しく愛でられると、雄芯の成長とともに頭の中が真っ白に塗りつぶされていくようだ。
 そのことを示唆するように、下腹からそそり立った宮田の分身は、絡みつく牧野の細指だけでは物足りないと言い出していた。裏筋に走る尿道がさらなる刺激を求めて痙攣する。
 宮田の腰がガクガクと震えた。
「は…あっ……っく、ぅ……」
 自分がこんなにも苦しんでいることに気づいているはずなのに、牧野はまだそこに戯れていた。いや、むしろ宮田が限界を示してから、急に刺激を弱めた感さえある。竿をこする動きは緩慢になり、ときどき本当に生き物のように震える肉塊にいたずらに顔を近づけては離すという仕打ちをされた。
 熟れた唇が今にも触れそうなのにと、切ない亀頭がひときわ張り出して舐めてくれと哀願する。鈴口の汁に白い腺液が混じって宮田の本気を伝えている。雄臭い匂いを嗅ぎ取って、牧野の小さな鼻がひくひくと動いた。
「ああっ求導師さま、どうかお恵みを……!」
 宮田はとうとう懇願した。彼の美貌に眺められながら己の欲望を放置されることに耐えられなかった。
 言葉では懇願の態をなしつつも、両手は彼の肩口をがっしりと掴んだ。指先から伝わる肌の感触さえ、理性を狂わせてやまない。宮田は今にも押し倒そうとした。押し倒して、柔らかなそうな頬に逸物をこすりつけようとしていた。あるいは彼の秘密の入口に突き入れ、めちゃくちゃにしたかった。まだ無垢の仮面を装っている取り澄ました顔がいっそう期待と劣情をあおっていた。
「あん、今少しお待ちになって」
 けれど牧野は、鋭く突き立てられた爪先に痛みを訴える風もなく、やんわりと制止を口してから、優しく肩先の指を払った。
 宮田が我を失う寸前に込めていた力は、どういうわけか、牧野に触れられるとあっさり体から離れた。
 手をついてベッドへ後ずさりを始めた牧野に、宮田は追いすがって自分もベッドに乗り上げた。履いていた木靴は遠くへ蹴り飛ばした。
 その姿は完璧に調教された狗のようだった。宮田の体は牧野に命じられると自然とひれ伏すようにできていて、牧野が自然と見下ろす格好になると、自分は頭を垂れて下から見上げるようにかしずいた。
 牧野は従順な宮田に満足そうな笑みを漏らすと、魅惑的な曲線を描く肢体を斜めに傾けた。
 そしてゆっくりと片方の足を持ち上げたのである。これから使われるであろう場所が、宮田に向けて大きく割り開かれた。
 ほっそりした足首に対して程よく肉の乗った内腿の一点に、宮田の視線は集中した。奥まった場所に潜む小さな窄まりは、薔薇の蕾に似て紅くひそやかに色づいて、何かを待っていた。
 汁をすする音が聞こえたかと思ったら、それは自身の口から溢れ出す涎をすすりあげた音だった。宮田は本当に狗になっていた。極上の餌を前に、最後の「よし」を待っているただの家畜――
 牧野は双丘に添えた手を伸展させ、わざとそこを強調した。物欲しげな下の唇がパクパク開閉するのを見て、宮田はこれが自分のために捧げられた供物だと悟った。同時に理性も何もかもが、一瞬にして消滅したのだった。

「ふぅぅうううんっ――!」
 牧野の鼻から呻き声に似たあえぎが宙に抜ける。
 血と精液をたっぷり溜め込んだ肉棒は小さな孔を勢いよく押し開き、一度にすべてとはいかなかったが、長大な竿の半分まで侵入を果たしていた。
 大きく開脚した牧野の足は、股座をねじり合わす形で腰を押し付ける宮田の肩に担ぎ上げられ、力任せに一突きされた衝撃に、ベッドについた牧野の肘がガクンと折れた。
 潤いのない挿入は粘膜を張り付かせ、ひきつるような痛みを与える。しかし宮田には痛みが痛みとして感じられない。すべて快感としか感じられないのだ。
体をめりめりと押し広げられる感覚に牧野が喉を反らせる姿も目に入らず、宮田は荒々しい抽挿を開始した。
「あッ、や、そんな、性急なっ」
 そう言いながら牧野の声は弾んでいた。宮田の首に腕を巻き付かせて、自らも積極的にペニスを受け入れる。局部が激しくぶつかり、肌を打ち付ける音が響く。
 それしかやり方を知らない宮田のセックスは、ただがむしゃらに腰を前後させるだけの単調なピストンだった。もしも取り柄があるとすれば、若さゆえの力強さだけだ。
 むちゃくちゃに腰を振り乱す男に、牧野はしばらく好きなようにさせていたが、そのうち自分が馬乗りになって、逞しいペニスがいいところに当たるよう腰を使うようになった。
「あっ、きゅ…ど……しさまっ…!」
 締め付けるばかりであった腸壁が突然動きを変え、幾層もの襞がうごめき出したのだから耐性のない宮田にはたまったものではない。体から力が抜け、腰を掴んでいた手がシーツに落ちた。一方で牧野の腹に埋まったものは、さらに勢いを増して内側で反発する。
「あはっ、イイっ、キツくて……すごくイイっ!」
 後孔を征服される心地よさに牧野は叫んだ。昨晩の男によるさんざんな蹂躙で、少なからず粘膜は傷ついていたというのに、繰り返される抽挿で、取り切れなかった男の精液が再び奥から染み出し、それと宮田の精液とが合わさったものが敏感な粘膜に沁みるのが何とも言えない心地だった。
 宮田の上で白い双臀が跳ね、踊るように状態がくねる。そのたびに肌の境目から、ぐちゅっ、ぐちゅっ、とはしたない水音が聞こえてくる。
 陽光を側面から浴びて牧野の裸身は輝いていた。
 その体から何かが迸る。まるで聖水を振りかけられている気分で、宮田は無心で顔に飛んだ滴を舐めた。
 いつもここに来る男たちは、彼のこんな姿を目にしていたのだ。心もろとも相手のすべてを食らいつくす悪魔のような貪欲さで、己の身体を差し出す男――その恐ろしさを宮田は身をもって味わっていた。
 彼の昼間の姿を知らない者であれば、自分を誘う男をそのような存在とみなし、一瞬にしてその手中に落ちてしまうのだろう。たとえ聖職者としての彼を知る者であっても、媚びた美声、なまめかしい肢体、そこから溢れ出す快感に抗えるだろうか。彼を男と知りながら、これは雄ではなく、完全に雌に抱く感情にほかならない。
 そのことに気づいた宮田もまた、これまでの男たちと寸分違わず同じ路を辿ることしかできなかった。暴発するエネルギーのそのままに奔流を注ぎ込み、あっけない絶頂を果たす。
「あ――、ああっ!」
 同時に達したか、牧野の後ろもきつく締まった。
 下腹が不随意に震え、腰が何度も浮き上がる。狭い内洞に吐き出すのも初めての感覚で、宮田は自慰で至るよりずっと深いところで絶頂するということを知った。
 頭が、沸騰している。
 強い虚脱感から、何も考えられない。快感がわだかまる下半身のこと以外は。
 たとえるならまるで長い間我慢した放尿を果たすような放出感だった。放出したものが内洞を満たし、そのぬかるみに浸されながらさらに放出を繰り返す。
 断続的にわななくペニスが、ぴったり吸い付く牧野の性器に欲望を出し続ける。こんなことをして大丈夫なのか、とても申し訳ないことをしているのではないかと思いながら、しかし迸る粘液を止めることはできない。
 最深部で接合した状態で止まっていた局部から視線をあげ、ようやく牧野に目を向ける余裕が生まれると、喉を反らして天を仰いでいた牧野の唇から吐息が漏れた。
「あ……すご……い……」
 若く生きのいい精子は襞の一つ一つにも跳ね返り、敏感な粘膜を叩いてくる。それは年嵩の男や、精力のない男では味わえぬ心地だった。
 今まで数えきれないほどの男たちと交わってきたが、これほど我を忘れられる相手も珍しかった。さも知り尽くした体と交わった時のように、初めから自然と肌が密着した。心地よさの正体はペニスからもたらされる快感だけではなく、体の相性にあるようだと牧野は思った。


次回で終われたらいいなという希望。
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