師匠は弟子を攻略すると決めたようです。【孔花】

以下、ファンディスクのネタバレになります。















※三国恋戦記の思い出返しの隠しルート、舞、碁、剣で公瑾達と戦ったのをみて、作者が筆をもつことが精一杯の師匠が、花のために剣舞スチルを見て萌えた妄想話です。
戦いが終わった後に、花ちゃんが目を覚ますまでの間にこんな師匠との会話があればなーとか思って。









師匠は弟子を攻略すると決めたようです。









「あー〜ぁ、つっかれた」

三人の取り合い合戦が終わって数刻。
いまだ続いている花の夢の中のこと。
花の部屋にのろのろと入ってきた孔明が、もう限界だと言うように寝台に体を寝かせた。

「し、師匠、ここは一応私の部屋、なんですが…そしてそこは、私の」

「うんうん、ほんとに若い女子のいい匂い」

「師匠っ!」

いーじゃん、君の記憶に配慮して、膝を借りないだけ。
と、ため息混じりに花の寝台の上で、ゴロゴロと幸せそうに転がる。

「全く、僕は悲しいよ。まさかまた君に忘れられたなんて、作り笑顔も出来なかったじゃないか」


冷静に話している、と文若殿と公瑾殿に言いはしたが、心の中はブリザードであった。
ようやっと、ついこの間想いを交わしたばかりなのに。まさか記憶をなくしてしまうとは、予想だにしていなかった。

「す、すいません、師匠…!」

もしかして本当に傷つけてしまっているのでは、と花が寝台に近づく。
その気配を感じ、思わず横たえていた体を起こした。

「…本当に、覚えてないんだよね、花」

「う、は、はい…その、すみません師匠…」

寝台にもう一度横になると、花を抱きしめた時の匂いが鼻腔をくすぐる。
幼い頃、抱き合いながら眠っていた時の彼女の香り。
こんなにも、幸せに満たされた香りだったろうか。

「…ふぅ、まぁ、君は悪くないんだから、謝らなくていいんだよ」

これは、僕の気持ちの問題なんだから。
ーーーそれに。


「…また、君が消えてしまう事に比べたら、ね」

横たわったまま花を見ると、消えると言う単語に首を傾げていた。
そうか、彼女はまだ帰れることを、知らない。
でも、もうその手に本はない。
告げても告げなくても、彼女が傷つく事には変わりがないだろう。

「ーーねぇ、さっきは言わなかったけどさ。花は、この世界のこと、どう思う?」

「……好きです、よ。玄徳さんや、師匠、芙蓉姫、みんな優しくて…みんなのいる世界だから、好きです」

ーー玄徳様が一番に出てくるなんて、浮気じゃない?
と一瞬考えやって、孔明の目がギラリと漆黒に染まったが、すぐに記憶のない花の中では、まだ自分との記憶が薄いことに気づいて気を取り直した。

「そっか、好きなら嬉しいよ。…僕も、みんなも君が好きだからね。…人前であんまり言うことでもないと思ったから、さっきは言わなかったんだけど…」

ちょいちょい、と手で呼び寄せると、おずおずと花が寝台に横たわる孔明に近づく。
寝台に横たわる孔明より目線を上げないよう、膝をついて寝台のそばで、何を言われるのだろうかと不思議そうな顔をしている。


「…ちょっと、遠い…」

そういうと、花の羽織の前紐をそっと掴んで引き寄せる。
強引ではないが、あと少し近づけば花が身を引いてしまうかもしれない距離をあけて止まる。
触れてしまいたい衝動をなんとか堪えるが、また彼女の中から自分がいなくなったと言うことが、悲しい。


「…師匠…?どうしたんですか?なんだか、…目が」

これ以上近づけば、いまの彼女は怖がってしまうかもしれないから。
近づいた距離の分だけ、離れている距離がもどかしい。
ここからまた、優しく花を見守る立場に戻って、また彼女が幸せになるように味方になればいい。
そして距離を縮めて、いずれ僕を選んで貰えるように、また追いかければいいだけだ。

「ーーいや、可愛い弟子の顔が近くで見たくなっただけだよ」

何でもない顔をして、そう告げて、この後の戦いに勝つ事が優先なんだから。
そうしないと、毎日仕事を抜け出してでも、彼女の顔を見ることすら、できなくなるかもしれないのだから。

そう思うと、なんだかーーー。


花の指先が、戸惑うようにゆるゆると近づく。
やがてその指が、そっと孔明の頬につたう雫を拭う。

「…師匠、わたし、師匠達のこと、思い出しますから…」

だから、何でもないような顔で、そんなに泣かないでください。と言われてはじめて、孔明は自分の目から溢れる涙に気づいた。

「ーーっ…!」

勢いよく花の方を向いていた体を、逆向き直る。
まず、涙が出た事に驚いた。10年近く、泣いたりしていない。家族を失ってから、彼女が消えてから、それからーー。
ああ、そうだ。彼女がこの世界に残ると言ってくれた時に、やっと涙が出たんだ。
9年分の涙が、溢れたんだ。
ーーーまた「君」がいなくなった事が、悲しすぎて涙がでる。

静かに、涙が止まらない。
花の方を振り返りたくても、振り返れない。
花もその様子を察しているのか、壁を向いたままの孔明の背中を、そっとさすった。

小さな男の子をあやす様に。


「師匠、そんなに私が記憶をなくした事、寂しいって思ってくれたん、ですか…?だったら、私、思い出しますから。絶対、約束守りますから、ね…」

ーーーやはり、そこはいつもの花だ。
孔明が泣いている事の根本がわからないところが、可愛い。
くくっ、と声を上げて思わず笑いがこみ上げる。
泣いていたかと思えば、急に笑い出す師匠に驚いた花がビクッと体を揺らして手を止めた。

その手をくるりと身を反転した公明が掴むと、その顔はまだ少し涙が滲んだままだが、いつもの師の顔があった。
その顔は、今の花の知っている孔明の顔よりも、幾分、甘く柔らかな笑み。


「ーーーうん。僕も、君にまた愛してもらえる様に、頑張るよ」

「…………?……っ……?!あ、あい…!?」

「君を攻略するのも二度目だから、前より優しく出来ないかもしれないけど…そこはほら、君も頑張ってくれるんだよね、花?」


何たって、絶対に約束は守りますから!と。
先程、変わらず誓ってくれた、花はやっぱりいつまの「君」だから。


目を白黒させた弟子の顔を見て、今回は理性がもつかどうか危ういなぁ、と顔を緩ませる孔明であった。








花ちゃんを攻略する師匠、色々と密着とか囁きとか、もう一周目で得た花ちゃんの弱いところをたくさんついてきそうって、思いませんか(笑)
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