薬指に秘密/オスリモ/微エロの甘々

青年の髪は、意外に柔らかく、私の指の間をするりと滑った。

「‥すごく、綺麗」

ぱた、と手をおろすと、ふわふわの羽毛布団が少しだけ浮いて、風がすぅっと入ってきた。

「‥起きてたのか」

てっきり眠っていると思っていた、と男が言うと、少女の頬が赤く染まった。
薄いアイスブルーの瞳が、ベッドサイドの明かりを灯し、その中に自分がうつっている。
赤いリボンも彼の指に絡め取られ、いま、体を包んでいるのはこの柔らかな白い布だけ。

「‥オスカー様だって、ねたふり、じゃないですか」

じわり、じわりと頬の赤みが厚みを増している。
少女は、それを自覚しつつ、それを隠すように顔を枕に埋めた。

「なぜ、顔をかくす?」

くすくすと低い声が耳元で囁かれると、体の力が抜けてくる。
わかっているくせに、わからないふりをする。
そんな男に、身を捧げたのだ。

「‥君の顔は、想定外って、言葉が浮かんできそうだな」

男の顔は枕に顔を埋めているせいで見えないが、確認するように聞こえる。

「‥まぁ、ちょっと‥早かったですけど」

自分が想像していたよりは。
その言葉をどう受け取ったのか、男の手のひらが子供の頭を撫でるように、少女の頭を撫でる。

「こどもあつかい、好きじゃない、‥です」

キッと睨みつけたつもりだが、
頬を染めて唇をすぼめるその顔は、男には違う顔に見えたようだった。

「タイミングの問題、という事だろう?‥それなら、これくらいは些細な誤差だ」

「お、オスカー‥さま!」

男の顔が近づいてきた時に、少女は思わず両手で自分の唇を塞いだ。

「‥なんで、そんなにお嬢ちゃんは俺をそそるんだ?わざとだったら、恐ろしいな」

「オスカー様だって、お、お嬢ちゃんとか言いながら、ぜんぜん昨日は手加減してくれなかったから、おあいこですっ」

自分で言っている意味がわかっているのだろうか?男は苦笑しつつ少女の両手を自分に引き寄せ、軽い謝罪を耳打ちで伝えた。

「じゃあ‥お嬢ちゃんは、卒業するか?」

それは、どういう意味だろう。
(もしかして。もしかして‥昨日より、すごい事、するの?)
少女は男の顔が近づいてくるのを、2度目は受け止めた。唇を塞がれていく中で、カーテンの隙間からのぞく空の色に思わず男の背中を両手でパチパチたたいて引き離した。

「お、オスカーさまっ‥ちょっと、もう、朝です!」

こんな事になったからには、みんなにちゃんと言わないとーーーそうでしょう?と言おうと開いた唇は、また塞がれる。


塞がれて、ひらかれて、もう、どじれない。




ーカチャン。
音を出さないように気をつけながら、オスカーはマットレスと、また仲良くなって眠ってしまった少女の手を取り、そこに秘密をしかけた。

(ーーおそらく、俺は最初からこうなる時を待っていたんだろうな)

きっと、それは数え切れない時間を過ごしてきた中にも、意味があったと思う。

「‥アンジェリーク、君は、この秘密に目を覚まして気づいたら、俺のものだ」

願いが叶うように、秘密にキスをおとす。
赤く光る指輪は、特別な石。
オスカーは、これから非常にきつい場所に報告にいかねばならない。

だから、いつまでもここにいてはいけない。
いけないのだが、アンジェリークの寝顔をみていると中々離れられない。

クールな男の心は、全て彼女にとかされてしまったようだった。
しかし、彼には非常に大切な任務がある。
そう、アンジェリークにばかり責任を押し付けられない。
少なくとも、アンジェリークを溺愛するロザリアには、罵倒を受けるだろうし、守護聖陣にいたっては、命を取られかねない。
それに、女王陛下のお気に入りでもある彼女とこうなったからには、小指を差し出す覚悟がいるかもしれない。

「まずは、ジュリアス様に‥それから、陛下‥そらから‥」


しかし、オスカーの顔はずっと笑みが取れない。
それがさらに報告をうけた人々の、怒りを買う。

オスカーに大きな雷が落ちた後、そこにとんでもない爆弾が飛んでくるのは、別のお話。





そしてオレッキオへ、みたいな。
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