「つ、つかれた・・・」

 自分の部屋に入るなり、ぼふん、とベッドに倒れ込む。一度横になった身体はなかなか起き上がれない。それ程に身体的にも精神的にも疲れがどっと押し寄せてきていた。
 前期テストの勉強やレポートに追われに追われ、ひとり暮らしのわたしは合間にバイトも行かなくてはならず、本当に慌ただしい日々をここ一週間と数日過ごしていた。やっとテストが一段落したけど、資格の勉強も始めなくてはならないことを思い出し、重くため息をついた。このまま眠ってしまいたいけど、コンタクトも化粧もそのままで寝られないし、でも起き上がる気がまだ起きないし・・・スマホを手に取って画面を開く。時刻21時。待受画面は、以前のデートで勝手に撮った大好きな人の写真。かっこいいなあ、なんて思ったら、無性に会いたくなってしまった。

「・・・忙しいよなあ」

 ただでさえ勉強することがわたしの倍ぐらいありそうな学部だし、あっちだってテストやレポートに追われてるだろうし、きっと疲れてる。声が聞きたくなって電話しても繋がらなくて、あとからLINEで謝りが入ることが最近多かった。メッセージで会話するのも好きだけど、やっぱり話したいし、会いたい。二週間くらい会ってない事実にとても寂しくなって、これが大人になることなのかなあ、なんて思ってしまう。高校時代までは、毎日のように会えたのに。お互い勉強したいことが違ったから、仕方がないのだけど。
 会いたいなあ、せめて電話だけでもしたいなあ、でも忙しいよなあ。そんな押し問答を脳内で繰り返しながら、侑士の連絡先を開いたまま見つめていると、インターホンが鳴った。

「あ、はーい・・・」

 重い身体を起こして、何も考えずにドアを開けた、ら。

「よ、急に堪忍な」
「・・・ゆうし」

 会いたいと思ってた人がそこに立っていて、思わず抱きついてしまった。


「テスト、今日で終わりやってん。レポートもあと少しで終わる思たら、なんや無性に会いたなってな」

 わたしを足の間に座らせて抱きしめてくる侑士は、照れくさそうに笑いながら髪に顔を埋めてくる。わたしは丸くなって侑士の腕にしがみついていた。あったかい。包まれてる感覚と、侑士のにおいに安心して、ドキドキした。ああ、しあわせ。

「ふふ、ここ来るまでに汗かいたでしょ」
「そら、夜でもまだ暑いしなあ。汗臭い?」
「うーうん、大丈夫」

 侑士の汗と香水が混ざった匂いに、高校時代を思い出した。侑士の部活帰り、そっと抱きしめられた時のこと。近づかなきゃわからないような匂いにドキドキしたのを、まだ覚えてる。

「わたしもね、会いたいなあって思ってて、電話しようか迷ってたの。忙しいかなって」
「お互い忙しかったもんなあ、最近。なまえも大変やったやろ」
「うん、侑士程じゃないけど、ちょっと疲れた」

 優しく抱きしめて身体をさすってくれて、疲れた身体がどんどん癒やされていく。顔を上げると目が合って、軽くキスをされた。

「・・・やらなきゃいけないこといっぱいだし、バイトも行かなきゃだったし、最近あんま休めてなかったんだ。会えなくて、寂しかったし・・・だからさ、来てくれて嬉しい」

 素直に思ったことを口にすると、ぎゅっと抱きしめる力を強くされた。背中に腕を回して、こっちからもぎゅっとする。

「よお頑張ったな、なまえはええ子やな。そない頑張っとるなまえんことが好きやで」
「・・・ありがとう」
「会える時間、ちょっと減ってもうたかもしれへんけど、俺は何があってもなまえの味方やし。なまえが頑張っとること、知っとるからな」

 優しい声色で囁かれて、心がきゅううっと掴まれるようだった。ちょっと辛かったのが嘘みたいに溶けていく。思わず笑みがこぼれた。

「わたしも、侑士がすーごい頑張ってるの知ってるからね」
「おん、ありがとうな」
「なにがあっても侑士のこと大好きだからね、侑士もお疲れ様」
「ん、ありがとう。せやったら、ご褒美のキス、してや」
「ふふ、わかった。何回でもしちゃう」

 侑士の頭をわしゃわしゃと撫でながら、ちゅっと音を立ててキスをした。お互い目を合わせて笑って、またキスをする。疲れてたのが嘘みたいに幸せで、しばらく二人で戯れあっていた。ずっとこうしていたい、そう思いながら、今日は二人で手を繋いで眠った。お互いの温度を感じながら。



0731
杏莉様リクエストありがとうございました!
もうめちゃめちゃにいちゃいちゃしまくってるお話になりましたが如何でしたでしょうか・・・笑
いつも本当にありがとう御座います。
金木犀もこれからもっと更新頑張っていきますので、どうぞこれからも当サイトのことよろしくお願いします!
ぺこ

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