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2.罠を張りましょう [ 20/21 ]


 彼が、どういう女性が好みなのか分からないので不自然にならない程度に話しかけ距離を詰めつつ探ることにした。
 その甲斐あってか、以前よりもアスランとの会話が増え他愛も無い話をする仲に進展することができた私は、兼ねてからの疑問を口にしてみた。
「フリングス少将は、どのような女性がタイプですか?」
 回りくどく聞いても多分伝わらないと思った私は、直球で問い掛けたらものの見事に固まった。
「え? ええっ!! る、る…ルル様それはどいう意味ですか?」
「言葉通りですけど」
 首を傾げながら答えると、赤面した彼はビシッと石の様に固まった。何もおかしいことは言ってないのに何故?
「い、いえそう云うことではなくて……」
「? フリングス少将、いい男なのに浮いた話も聞かないので恋人とかいらっしゃらないのかと思ったんですが。恋人がいらっしゃるんでしょうか?」
 へにょりと眉を下げてアスランの様子を伺うと、彼はブンブンと首を横に振っていた。
 そんなに激しく振らなくても良いのに……。首痛くないんだろうか?
「いません!」
 ズイッと顔を近づけ力いっぱい否定するアスランに、私は思わず身体が仰け反った。
「そ、そうですか。好いな〜と思う女性とかもいらっしゃらないんですか?」
 私は気を取り直し、アスランの好みを聞き出そうと躍起になる。
「それは……」
「良いじゃないですか。教えて下さいよ」
 口ごもる彼にジリジリと迫り、壁際まで追い詰めるとニッコリと笑みを浮かべて言った。
「さあ、観念して下さい
 言うまで逃がさないぞと言わんばかりにアスランの腕を掴むと、彼は勘弁したように重い口を開いた。
「………気になる女性はいます」
「え? 本当ですか!! マルクトの方ですか?」
「いいえ、違います」
 キッパリと否定するアスランに、私は思わず奇声を上げそうになった。
 これは、絶好のチャンスではなかろうか? キムラスカにアスランの好きな人がいる。
 アスランが、和平前にキムラスカを訪れているとは考えにくい。
 消去法で考えていてけば、私の共として付いてきたジョゼットかマリアになる。一体どちらだ?
「どんな方かお聞きしても?」
「何故聞きたがるのですか?」
 質問したら質問で返されてしまった。不愉快と云った感じではないが、返答次第では答えてくれないだろう。
「それは……フリングス少将が気になるからです(マルクトから引き抜く時の材料になれば儲けものだし)」
「ルル様……とても素敵な方です。芯が強くて美しく優しい女性です」
 芯が強くて美しく優しい……ジョゼットの方か! 彼は、可愛い系より美人系が好きなのか。
「フリングス少将に、そこまで想って頂ける女性が羨ましいですね。実ると良いですね」
 つーか実らせる。ジョゼットには悪いが、ここは一つ私のためにひと肌脱いで貰おう。
 そしてアスランをキムラスカに!! 
 どうやってジョゼットを嗾けようかと考えていたら、アスランにガシッと手を掴まれた。
「本当にそう思いますか?」
「はい、私なら是非お婿さんに迎えたいくらいです」
 物は例えだが、嘘は言っていない。満面の笑みを浮かべそう答えを返したら、いきなり抱きつかれた。それも思いっきり。
「フリングス少将?」
「私が愛しているのは、ルル様貴女です」
 行き成りの爆弾発言に、罠に掛かったのは一体どちらだったのか。私は、驚愕のあまり声が出せなかった。

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