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2.メロンを断罪しよう [ 9/21 ]


 ルークを連れ機関室に訪れたら、一斉にルークの方に鋭い視線が飛んだ。
「暢気なものね。貴方のせいでこうなったのに」
「……俺が、悪いんだ。アクゼリュスの人たちを移動させて瘴気中和したら、みんな死ぬって……だから俺…」
 涙を浮かべて自分が悪いと繰り返すルー君に、動揺する面々を見て私は小さく笑みを浮かべた。
「だからと言って相談もなしにするのは軽率ではないですか」
「ジェイドだけには伝えるべきだと思って何度も話そうとしたのに、一度だって俺の話真剣に聞いてくれなかっただろう。話したところで俺の話を聞いてくれたのか?」
 涙交じりにルー君に指摘されたジェイドは、ずれてもいない眼鏡を押し上げて黙った。
「ルークが、兄に騙されて超振動起こしてパッセージリングを壊したことには変わりないわ」
 声高らかにお門違いな主張をするティアに、私は矛盾を指摘した。
「それは、おかしいですね。彼の話を聞く限りでは、暗示を掛けられて無理矢理超振動を放っています。大体、騙されたて行ったと言うなら少なくとも彼の意思で超振動を起こすことが出来ないと貴女の主張は通りません。彼が、一度でも譜術を使えたところを見たことがありますか」
「ティアはさ、……『兄さん、外郭大地は残すって言ったじゃない』ってヴァン師匠に向かって言ってただろう。俺の家にナイトメアを使って侵入して、ヴァン師匠を襲った時『裏切り者』って言ってたよな。何をしようとしていたのか知っていたんじゃないのか」
 ルークの言葉に、皆ハッとした顔でティアを見た。疑惑の眼差しを向けられたティアは、ルークと叱責した。
「ルーク! 貴方、自分の罪も認めずに言いがかりをつける気なの。最低ね」
「最低なのは、貴方の方ですよティア。確かにルークは、パッセージリングを壊しました。でも、それは暗示を掛けられ操られたからです。相談しなかった彼にも全く否がないとは言い切れませんが、アクゼリュスの民を人質に取られ選択肢がなかったのも事実です。今回の崩落に、彼に罪はありません。ティア、貴女はヴァンの計画を多少なりとも知っていたにも関わらず話さなかったのは何故です」
 怒気を滾らせながらも、ティアに真意を問うジェイド。彼女の言い分が筋の通ったものであったなら、少しは違ったのだろうがやはりティアはティアだった。
「それは……巻き込みたくなかったから…」
「巻き込みたくなかったから? 十分巻き込んでるじゃん! ティアが相談してれば、総長捕まえられてアクゼリュスが崩落することもなかったんだよ」
 信じられないと怒りを滲ませたアニスが、ティアの罪を突きつけるも返ってくるのは言い訳ばかり。
「でも、それはルークがパッセージリングを壊したから!」
「いい加減になさいませ! ルークは、自分の罪を認めてますわ。貴女の罪までルークに罪を被せるなんて卑怯ですわよ」
「私は、そんなことしてないわ。事実は事実よ」
 集中攻撃に耐え切れなくなったティアは、仕舞いに泣き出してしまった。一瞬、彼らの断罪の手が緩むので第二弾カンフル剤を投入することにした。
「貴女は、ルーク様が騙されてパッセージリングを壊したと仕切りに言いますが見たんですか? 壊すところを」
「それは……アッシュが言ったのよ! ルークが兄に騙されてるって。ルークだって認めてるじゃない!」
 敵対していた相手の言葉をあっさり信じるなんてどんだけアホなんだ。
「おーい、漏れてる漏れてる」
 くいくいと私の服を引っ張り知らせてくれるルークに、私は害悪なメロン相手に取り繕う必要ないじゃないと開き直った。
 ティアの主張に唖然としている一同にルークが止めを刺した。
「ルークに罪悪感を植え付けて、無理矢理自白させたみたいだよなぁ」
 案の定、怒りの矛先はティアに向きユリアシティに着くまで罵声を浴びせられたのは言うまでもなかった。


「なあ、本当にあれで良かったのか?」
 ルー君が、ティアと仲間たちのやり取りを遠巻きに眺めながらコソコソと聞いてくる。
「自業自得だもの。あいつら、自分の罪を認めたくないから必死にエスケープゴートを探しているのよ。自分が悪いと嘆いていれば、取敢えず大丈夫だから」
「そ、そうか」
 納得しきれないのは優しさゆえか。私は、ワシャワシャとルー君の髪を撫でながら次は誰を地獄送りにしようかなぁと考えていた。

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