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22.ブウサギ陛下に謁見ですか!? [ 23/72 ]


 さて、首都グランコクマに着いた中身はパンピーな私ことティア・グランツです。
 水の都市と謳われるだけあって美しい。美しいのに、何故王宮にブウサギがブヒブヒ啼き声が聞こえるんだろう。
「ルーク様、王宮に家畜が歩いています。どこから逃げ出したんでしょう」
 ブウウサギが、ピオニー9世のペットなのは知っているが目の当たりにすると現実逃避したくなるなんてティア一生の不覚!
「ブウサギが闊歩する王城……ハァ」
 何とも形容しがたいルークの顔に、私は忍び笑いを零した。あの無能眼鏡を生んだマルクトには、ドきついインパクトを醸す皇帝陛下が君臨している。
 世間一般では有能だの賢君だの持て囃されているが、ジェイドを懐刀として重要している時点で無能決定である。
 ルークに何ちゃって外交のノウハウを叩き込んだものの、心配であることには変わりはない。
 政の中枢となれば、魑魅魍魎が跋扈しあの手この手で足を引っ張り合っている。いわば魔窟だ。そんなところにルークを放り込むのは、少々心苦しいがこれも一つの試練と思い心を鬼にして送り出した――――はずだった。
 別室で待機するものだと思っていたら、私まで一緒に謁見の場へ強制連行。勿論抵抗したさ。常識的におかしいだろうと抗議もした。
 しかし、兵士はめげなかった。『陛下は、我が民を救ってくれた貴殿らに礼がしたいと〜』云々かんぬん宣い、結局ルークのお願いに折れる形となり謁見の場に立っている。
 謁見の場では、豪華な椅子に座っているピオニーがニヤッと笑みを浮かべて礼を述べた。
「貴殿らの気転が、マルクトの兵を救ってくれたこと大変感謝している。本来なら、キムラスカから引渡し要請が来ている罪人がこの場に立つことは許されないのだが、聞けばルーク殿の命令を受けた貴殿が率先して動いてくれたと言うではないか。マルクトの民を守る者として礼を言いたい。ありがとう」
 感謝よりもまず先に謝罪するべきだろうに、流石ブウサギ陛下は思考回路がぶっ飛んでいる。
「恐れながら陛下、発言の許可を頂きたく存じます」
「ああ、構わんぞ」
 臣下の礼を解き、余所行きの笑みを貼り付けてエンゲーブからタルタロス襲撃まで無能眼鏡が起こした不敬の数々の責任について追求してみた。
「私の私怨に巻き込む形でルーク様を連れ出してしまったのは、キムラスカからの書簡でご存知のことと思います。擬似超振動が起こりタタル渓谷に飛ばされた私達は、一番近いエンゲーブに寄りました。余所者と云うだけで食料泥棒に仕立て上げられ、和平の使者を名乗るジェイド・カーティス大佐と顔を合わせる事となったのですが、敵国とはいえ王族であれるルーク様に礼の一つも取らず、『不法入国』を免罪符に捕縛し、更にはインゴベルト六世陛下へ取次を強要した挙句に拒否すれば軟禁しました。また、タルタロス襲撃の際には奪還する為にルーク様を前衛にしようとする始末。明らかな戦闘強要です。マルクトの法には詳しくありませんが、このような不測の事態の場合は保護するものではありませんか。正直考えたくもありませんが、和平とは名ばかりで戦火を蒔く為にカーティス大佐を遣わしたと考えた方が辻褄が合います」
 私の言葉に、ピオニー以下部下達は顔面蒼白になっていた。
「俺は、戦争を望んでいない!! ホド戦争の傷跡は深い。やっとここまで回復したのに、戦争なんてしたいと思うものか。和平を結びたいんだ」
 悲痛な声で叫ぶように平和を願っていると訴えるピオニーの姿は滑稽だ。でも、私は断罪の手を休める気はない。
「陛下、一つ疑問が生じるのですが何故カーティス大佐のような者を和平の使者にされたのでしょうか。あれほど、外交に不向きな男はいません。勅命を他国の者に喋る軽さも軍人失格です。もし、キムラスカから慇懃無礼かつ非常識が服を着た余り良い噂も聞かない左官が和平の使者だとやってきても受け入れると云うのですか」
「それは……」
 口篭るピオニーに、私はフンッと鼻を鳴らした後、ニッコリと営業スマイルを浮かべて云った。
「感謝して頂いてあれですが、和平を本当に望んでいらっしゃるのであれば被害者であらせあれるルーク様に誠意をお見せするべきではありませんか?」
 その一言に、ピオニー以下部下達が綺麗な土下座を見せてくれた。
 ルークは一人焦って「頭を上げてくれ」と懇願していたが、それを許すような私ではなく頭を上げようものなら私の絶対零度の微笑と視線を浴びることになるので彼らの足が痺れるまで土下座させ続けたのだった。

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