小説 | ナノ

11.報告と警告 [ 12/72 ]


「そう言えば、カーティス大佐がいるのに導師守役が何故姿を現さないのかしら?」
 ジェイドがチーグルの森にいるのは、イオンの保護の為だろうがアニスがこの場に居ないこととは全く関係がない。
「ああ、彼女にはしてもらいたい事があるので別行動しているんです」
「……導師の部下を私用の為に顎で使ったということですか。導師、導師守役を自由に使ってよいとカーティス大佐に許可を出したのですか?」
 ジロリとイオンを一瞥すると、彼は青ざめた顔でブルブルと首を横に振っている。
「持ち場を離れ導師を危険に晒すとは、導師守役失格ね。自分の部下のように扱うカーティス大佐もカーティス大佐だけど」
「ティア……」
 下手に庇えば、嫌味が自分に降りかかるのを短い間で悟ったイオンは何も言わなかった。
「ははは、そう言われてしまうと何も言い返せませんね」
「言い返したかったの? 別に構わないのだけど、マルクト軍の駐屯基地に駆け込んで貴方の仕出かしたあれやこれやを暴露するだけだもの。軍法会議で吊るされて終ね」
 イオンの誘拐に、任務中に泥棒を追回した結果に齎されたローテルロー橋の大破、職務怠慢の末イオンを危険に遭わせるという失態。階級の一つや二つ落っこちてもおかしくない状況だ。
「…………」
 ぐうの音も出なかったのか押し黙ったジェイドを一瞥し、私は交渉結果の報告をするべくチーグルの巣を尋ねたのだった。


 ミュウミュウミュウとうるさい鳴声に辟易しながら、包帯に巻かれ横たわる長老に声を掛けた。
「条件つきでライガは、この森を離れ菌糸の森へ移ってくれたわ」
「条件とな?」
「貴方達の手で森を復活させるのよ。種を木を植え育てなさい。森が蘇った時、貴方達はライガに許される。ミュウは、エンゲーブへ補填するため出稼ぎに連れて行くわ」
 私の言葉に、振り子人形のようにコクコクと頭を縦に振る長老を見て脅しの効果は思ったよりも上々だったみたいだ。
「あ! 言い忘れていたけど、次ここを訪れた時にサボっていたらこの仔の餌にするからそのつもりでいなさいね」
 ルークの腕の中にいる仔ライガを指差して釘をさすと、コクコクと高速で頭を縦に振るチーグルの群れ。見ていて気持ち悪いな。
「一先ず一件落着だね」
 さあ、戻りましょうかとルークたちを促すとじっとりとした目で睨まれた。
「……ティア、忘れ物をしたって言って戻った時何をした」
「何って、教育的指導を……」
「それ暴力ですから!!」
 ルークの問い掛けに答えていたら、額に手を当て天を仰ぐイオンに突っ込まれた。
「チッ…じゃあ、調教したにしときます」
「もっと酷ぇよっ!!」
「害獣を殲滅させなかっただけ良いじゃない。ライガクイーンの餌さにしても全然問題なかったのに……」
「ご主人様、それはダメですのぉぉ」
 ミュウミュと耳元でうるさい仔チーグルをベシッと叩き落し足で踏みつける。あぁ〜んと喜んでいるように見えるのは何故だろう。
「私は、あんたを下僕にした覚えはないわ」
「ミュウは、ティアさんに助けられたですの。そのティアさんに仕えるのは必然ですの」
「じゃあ、最初の命令よ。その命が尽きるまでルークを守りなさい」
 シレッとした顔でルークにミュウを押付けた。はー、これであのウザイ生き物から離れられる。

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