小説 | ナノ

3.まるでリボンの○士 [ 4/48 ]


 一体どれだけの人が分かるだろう、リボンの騎○。
 一日の半分は男として生活し、もう半分は女として生きることを余儀なくされたルル・フォン・ファブレ(シュザンヌ命名)です。
 シュザンヌ曰く、古代イスパニア語で『並外れた人物』というらしい。ご大層な名前をつけて貰えて凹んでます。名前負けしそうです。
 私が、女の子だと分かってからは身の回りはシュザンヌが厳選したメイドがついている。
 ガイはというと、護衛騎士として今も傍に居たりする。本当は、シュザンヌ的に傍に近付けたくなかったらしいが年の割りに剣の腕が立つという事でクリムゾンが命じたらしい。
 オリジナル・ルークは、大層優秀だったらしいが対人関係はあまり宜しくなかった様だ。
 一通り人らしい生活が送れるようになって早一年。言葉は比較的早くに喋れるようになったが、筋力は一朝一夕ではいかず思っていた以上に時間を要した。
 早朝、日課となっている散歩から戻ってくるとメイドがしずしずとタオルを差し出した。
「エステル、ありがとう」
「いえ……」
 驚いたように目を丸くしたかと思うと、彼女は花が綻ぶような笑みを浮かべた。
 しかし、ファブレ家で雇われているメイドは何故か見目が良い。グリムゾンの趣味だろうか。
 下世話なことを考えていたら、傍仕のメイドがパタパタと駆け寄ってきた。
「ルル様! こんなところにいらっしゃったのですか。お部屋に居て下さいとあれほど申し上げましたのに」
「はやくおきたら、そらがきれいだったからサンポしたかったんだ。マリア、ごめんね。わたしをさがすことになってしまって」
「謝らないで下さい。ルル様を探すのが嫌なわけではありませんから」
 しゅんと肩を落とし謝ると、マリアはあわあわと慌てた様子で私を宥めてくる。
「こんどから、ちゃんとこえをかけるね」
「出来ればお部屋で大人しくして頂きたいのですが……」
 それは困る。散歩と称して、屋敷内に住む達と距離を縮めるため会話を楽しんでいるのだ。
 ラムダスやメイド長は貴族らしくないと言うが、仕えてくれる者達を労うのは当然だと思う。
「じゃあ、マリアもいっしょにサンポしよう。とってもきもちいいよ」
 ニッコリと笑みを浮かべて誘うと、彼女は小さく唸った後でガクッと肩を落とした。
 私が、そう簡単に言うことを聞くような性格をしていないことを知っているからだ。
「エステル、タオルありがとう。おしごとがんばってね」
 通りすがりにエステルに手を振り、マリアを伴って部屋へと戻る。
 部屋に戻る間、不思議そうな顔をしたマリアに聞かれた。
「ルル様は、いつあのメイドの名前を知ったのですか?」
「にしゅうかんまえにラムダスにあいさつしてたところをみたんだ」
「ルル様は、メイドの顔と名前を覚えていらっしゃるんですか」
「うん、メイドだけじゃないけど。ここにすんでいるみんなの名前と顔はおぼえてるよ」
 私の答えに呆気に取られているマリアを見て、細く笑みを浮かべる。
 自分の足場を確固たる物にするには、信頼を勝ち得ることだと考えている。
 オリジナル・ルークが戻ったとき、自分の居場所がありませんでは洒落にならないからな。
「あたりまえだろう。だってかぞくなんだから」
 この言葉の裏に隠された真実を知るのは、私一人だけ。

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