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いつも別れを見つめて8 [ 92/145 ]


 最近、凄く身体がだるい。爛れた生活(鯉伴に襲われる日々)を送ってきたから、妊娠の可能性が一番最初に頭に浮かんだ。
 部屋から出して貰えないので考えた結果、新しいサニータリーショーツを買うのを口実に私は鯉伴を伴い外へと出かけた。
 駅前のショッピングモールに入り、生理用品を買うからと鯉伴を店の前で待たせナプキンをカモフラージュに妊娠検査薬を購入した。
 私は、それだけを鞄に忍ばせ生理用品の入った紙袋を持って出ると鯉伴に奪われてしまう。
「佐久穂は、普段着物だから下着なんて不要だろう」
「月ものの時は、そういう訳にはいかないんです」
 不思議そうにする鯉伴に対し、言い返せば彼はあまり分かってないのか首を傾げている。
「ふぅん」
 納得はしていないが、私が欲しいと言い出すことには反対はしないのか買ってくれるつもりのようだ。
 下着ショップに男同伴は流石に恥ずかしいと鯉伴を宥めすかして併設してあるカフェで待っててもらうようにした。
 最後の最後まで文句を言っていたが、半分泣き落として退出願った。
 鯉伴の姿が見えなくなったのを確認した私は、適当にサニータリーショーツを数枚購入しその足で女子トイレに駆け込んだ。
 ドラッグストアで購入した妊娠検査薬を試すと、妊娠を示す赤紫のラインが出ていた。
「……どうしよう」
 急に怖くなった。流されるままに身を任せていたが、妊娠したとなれば状況も変わってくる。
 鯉伴とは、あくまで仮初の関係なのだ。子供が出来たとなれば、本当に彼に迷惑を掛けてしまう。
 私は、お財布を取り出し中身を確認する。諭吉が一枚とキャッシュカードが1枚入っている。
 鯉伴に着物代を返そうと思って貯めたお金が入っているので、それを逃亡資金に回せば暫くは暮らせるだろう。
 私は洋服を買い着替えた後、電車に乗り浮世絵町を出たのだった。


 行く宛などなく飛び出したは良いが、早々に行き詰っていた。未成年で保護者も居ない自分に貸してくれる部屋などない。ホテル住まいなんて出来るはずもなく、私は重い溜息を吐いた。
 子供を下ろすなら早い方が良いのだろうが、下ろす勇気も生む勇気もない。
「……どうしよう」
 アルバイト雑誌を片手に住み込みで働ける場所を探して早一週間。私は、ラーメン屋の前を通った瞬間、餃子の匂いが強烈でその場で嘔吐していた。
 蹲り吐き続ける姿が尋常じゃなかったのか、店員が慌てて駆け寄ってくるも、身体に染み付いている食べ物の匂いが吐き気が増した。
「おい、救急車を呼んでくれ!!」
 真っ青な私の顔色に驚いた店員の救急車という言葉に首を激しく振るも、結局救急車を呼ばれてしまい病院へと搬送されたのは言うまでもなかった。
 吐き気が治まり会計をしていたら、会いたくない人物が鬼の形相で立っていた。

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