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Flying start .1 [ 30/145 ]

◎Valentine企画第六弾! 明菜様、企画参加&素敵リクありがとう御座いました。お気に入りの子をどうしようかと迷ったところ、同性よりも異性の方が初代をヤキモキさせれると思ったのでリクオにしました。最後は、甘く仕上げてみました。お召し上がり下さい(笑)


 恋をすると綺麗になると云うが、私にはどうやら該当しなかったようだ。片思い暦400年と少し。
 家族よりも一緒にいる時間の方が長くて、相手にすれば女として見れなかった部分があるのだろう。
 出会って百年も経たない間に、人間のお姫様と所帯を持った時はショックで暫く立ち直れなかった。
 それでも、やっぱり忘れられずズルズルと男女の関係を続けている。
「潮時よねぇ……」
 いつまでも立ち止まったままの自分は、残念なことに綺麗とはお世辞にも言えない。
 そんなことをつらつらと考えていたら、襖がガラリと開いた。
「佐久穂、こんなところにいた!」
 ぬらりひょんの孫が、ひょっこりと顔を出し抱きついてきた。
「リッ君は、甘えたさんだねぇ」
「佐久穂だけだよ?」
 くるんとした大きな瞳は、ぬらりひょんや鯉半とは似ても似つかない。若菜にそっくりだ。
 リクオの頭を軽く撫でながら、私は奴らに似なくて良かったを笑う。
「リッ君、今日はどうしたんだい?」
「あのね! チョコちょーだい」
「は?」
「だーかーらー、チョコちょーだい!」
 いやいや、何を言ってるんだこの子は。急にチョコレートを強請るリクオに私は首を傾げる。
「チョコねぇ。持ってないよ」
「えー!! きょうは、ばれんたいんなんだよ。スキなこにチョコあげるひってせんせーいってた」
 小さな手を一生懸命身振り手振りしながら訴えるリクオに、私は何故リクオにチョコを上げることになるのかサッパリ分からない。
「好きな子ねぇ。リッ君は、チョコ上げたの?」
「ううん、あげてない。でも、佐久穂はボクのことスキでしょう? だから、ね」
 手を差し出してチョコレートを強請る幼子に、私は苦笑を浮かべる。
「リッ君は、私のこと好きじゃないの?」
「すきだよ!」
「なら、私にもチョコくれるよね」
 ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべて言ってやると、リクオは少し考え大きく頷いた。
「じゃあ、いっしょにつくろうよ」
「は?」
 主語が抜けているリクオに、私はまたしても間抜けな声を上げてしまった。
「だからチョコ! ボクは佐久穂のためにつくるから、佐久穂はボクのためにつくって」
 名案だと云わんばかりの彼の言葉。一瞬呆気に取られるが、特別断ることでもないので二つ返事で反した。


 リクオを伴い台所へ向かう。既に、夕飯の支度をしていた若菜に声を掛けた。
「若菜、悪いがリッ君とバレンタインのチョコレートとやらを作りたい。教えて貰えないか?」
「チョコレート作りですか。構いませんよ。丁度、皆さんに配る用のチョコがあるのでそれを使って下さいな」
 若菜が用意した『業務用チョコレート』と書かれた大量のチョコレートが入った袋に私は目が点になった。
「凄い量ね」
「これくらいなら、一日で無くなりますよ」
 クツクツと笑う彼女に、お菓子大好きな彼らがチョコレートを貪り食う姿が容易に思い浮かび納得する。
「これをどうしたら良いんだい?」
「湯煎して型に流しては如何ですか? リクオのお弁当用に買ってあるカップを使っても良いですし」
 差し出されたのは、アルミで出来たカップだ。少し大きい気もするが、見栄えに拘る必要も無いだろう。
 私の隣にいるチビっ子は、既にチョコレートで頭がいっぱいのようだ。
「じゃあ、リッ君チョコレート作りだ」
「うん!」
 私たちは、若菜を講師にバレンタインのチョコレート作りに勤しんだ。

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