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波乱の映画デートF [ 43/259 ]


 映画を観終えた後、私は女性陣に強制拉致されてガールズトークを無理矢理満喫させられました。
 帰り道が同じだからとカナに言い訳し、氷麗と共に帰宅したら速攻でリクオの部屋へ拉致られました。
「桜、おめぇは先に風呂入ってこい」
「じゃ、じゃあ私も……」
「藍、おめぇはここに居ろ。話がある」
 ガシッと掴まれた肩が痛い。握力強すぎだよ。リクオの只ならぬ気配を察知したのか、普段なら駄々を捏ねる桜も大人しく云うことを聞く。
 桜の気配が感じ取れなくなったのを確認したリクオは、高圧的な笑みを浮かべ私を見下ろしていた。
「……さてと、昼間のことキッチリ説明して貰おうか」
「昼、間のこと……ですか?」
 色々とあり過ぎてどれなのか皆目見当もつかない。
「分かんねぇって顔だな。誰にキスされた?」
 クイッと顎を持ち上げられ、唇が触れるか触れないかの距離に思わず赤面してしまう。いや、赤面している状況ではないのだけど恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「誰って……ぬらりひょん様ですけど」
 隠し立てしたところでリクオの怒りは更に悪化するだろう。そう思って正直に話したら、余計に怒られました。
「どう見てもヨボヨボのジジイじゃねーか! 嘘吐くならマシな嘘吐け」
「ぬらりひょん様の本来のお姿は、リクオ様と瓜二つですよ。まあ、目元にタトゥーを入れてらっしゃいますけど。嘘だと思うなら、ぬらりひょん様に聞いてきたら如何ですか?」
 私がそこまで言うと、信憑性が増したのか今度はどうして本来の姿を知っているのかと問い詰められた。
「ジジイの姿が仮初っつーなら、何で藍はジジイの本来の姿を知ってんだ」
「気付いたからですよ。ぬらりひょん様曰く、畏れが通じなかったと仰ってました」
「チッ……あのジジイ、それで藍に興味を持ったのか」
 ボソッと呟かれた言葉は聞き取れなかったが、良からぬことを言っているのに間違いないだろう。
 なんせ、あの祖父にしてこの孫ありだ。ぬらりひょんの血を濃く受け継いでいるのだ。
「それで、おめぇはジジイに良い様にキスされて舞い上がってたと」
「舞い上がってません! もう、どうして貴方たちは歪曲して物事を解釈しようとするんですか。今回のことで妖怪の世界では、キスが日常茶飯事に行われてるのはよく分かりました。郷に入れば郷に従えって云いますけど、でも……こればかりは嫌です。ハッキリ言って節操無さ過ぎですよ」
 ノンブレスで一気に捲し立てるように言うと、リクオはポカーンとした顔で私を見た後、不愉快そうに顔を顰めた。
「それは何か。俺が、おめぇにしてることも挨拶で済ませるつもりか?」
 恐ろしく低い声で威嚇され、思わず怯みそうになったが、何とか根性で押し留める。
「済ませるもなにも、そうでしょう。いきなりキスするし、セクハラするし」
 それを最終的に許してしまう自分もどうかと思うが、実際リクオはキス魔だと思う。昼夜関係なくところ構わずキスしてくるのだ。
「誰が、お前以外にするか!」
 only one 宣言に一瞬胸がときめいたが、その後に続いた言葉を聞いてやっぱりと思った。
「お前は、俺のもんだ。俺のもんに、キスしようが手ぇ出そうが構いやしねーよ」
 相変わらずの所有物扱い。一瞬でも好いてくれてるのかと勘違いしそうになった自分を殴りたい。
 うんうん、そうだよね。奴良リクオだもんね。あの総大将の血が流れているんだ。その気が無くても、男女問わずに垂らしこむのはお手の物だろう。
「拾得物の次は、所有物ですか。……ハァ、いい加減どうにかなりませんかね。人権を主張します」
「俺は、妖怪だからそんなもん知らねぇよ」
 サクッと一刀両断された私の人権。分かっていたけど、空しいというか悔しいというか理不尽だと思う。
「本当に目を離すとこれだ。一度躾し直さなきゃなんねーか?」
 グイッと腕を引っ張られ、リクオの膝の上に跨る形になる。
「っ…ヤッ、ふぅ…んんっ…」
 噛み付くようなキスに私はギュッと目を瞑る。条件反射とは恐ろしいもので、舌先で唇をノックされると薄らと開いて彼の舌を中に入れてしまう自分が嫌だった。
「ん、んっ…ぁふ…んぅ…はぁ、はぁ…」
 チュパチュパと淫らな音を奏でる濃厚な口付けに、息が続かなくて身体の力が抜ける。
 背中をなぞられ、帯を解かれる。それは一瞬の出来事で止める間も無かった。
 シュルリと音を立てて帯が解かれ、私は慌てて彼の腕を掴むが逆に指を絡められてしまった。
 もう片方の手で、器用に着物を乱すのだから一体どこで覚えてきたのだと突っ込みたくなる。
「リク…オ、様ッ…ダメェ…あ、あ…ひゃ、んぅ…」
 剥き出しになった肩にリクオの唇が吸い付き肌を吸い上げる。チクンッと痛みを感じるが、痛みよりも羞恥心の方が強かった。
 身体を押し倒され、畳の上に仰向けにされるとリクオが覆いかぶさってくる。
 サラサラとした髪がこそばゆくて笑いを堪えるのに必死だ。
「本当に緊張感が無ぇ女だな」
 少々呆れた声で私をそう評価するリクオに、笑い死にさせる気かと睨みつけるが逆効果だった。
「っ……反則だろう」
「へ? ウキャッ……やあっ、ああん…ああ……はぅ…」
 冷気に当てられ上向きに尖る乳首をリクオはパクンと口に含む。もう片方の手で、胸の柔らからさを堪能するかのように揉みだした。
 乳首を甘噛みしたり吸ったりされる度に、私は甘ったるい嬌声をひっきりなしに上げる。
 グズンと胎の奥が熱くなり、潤んだ眼でリクオを見たときだった。
「ママー」
 桜の声がして、思わずリクオを突き飛ばした。ガンッと部屋の壁にぶつかっているが気にしちゃいけない。
 慌てて着物を整えるが遅かった。カラッと開いた襖の先には、桜と彼女を抱き上げている首なしの姿が。
「ママなにしてるの?」
「えっと……お着替えをね」
「パパはなにしてるの?」
「さ、さあ……」
「桜、リクオ様は寝てらっしゃるんだよ。邪魔したら悪いからね。藍と一緒に部屋に戻りなさい。藍も早く帯を締めて」
 首なしに渡された帯を受取り手際よく巻いていく。異性の半裸状態を見たというのに、首なしの平然っぷりに思わず感心してしまった。
 そう言えば、毛倡妓の胸に顔を埋めていたシーンでは真っ赤になっていた気がする。
 やはり、あれくらいのナイスバディーな美女でないと反応しないのか。
「首なしさん、ありがとう御座います。桜、お部屋に戻って髪を乾かそうね」
「あい」
 首無しから桜を受取り、そそくさとその場を離れる。その場を離れた後、彼らがお互いを牽制し合っていたなんて私は知らなかった。

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