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居候は決定事項ですか? [ 5/259 ]


 住所検索を終えた烏天狗が、渋い顔をしてぬらりひょんに報告を上げた。
「総大将、記載されている住所及び電話番号、学校名を検索したところ何一つヒットしませんでした」
「検索方法を変えたりとかはしてみました? 携帯からのweb検索だと限界がありますし。パソコンでは検索できないんでしょうか?」
 矢継ぎ早に質問する私に、烏天狗は全て試したと宣った。
「生徒手帳を偽造したのかと考えましたが、校則や校歌が細かく印刷されている上に裏表紙は校章と思われる箔押しがある。芸が細かすぎると取れなくもないのですが、一冊だけ特注で印刷したとは思えません。総大将、この女子は何者ですか?」
 渋い顔で唸る烏天狗に、
「リクオの嫁(候補)じゃ」
とぬらりひょんが爆弾発言をかましてくれた。
「違いますから! サラッと大嘘かまさないで下さいよ」
「そうだよ。藍は、まだお嫁さんになったわけじゃないからね」
 訂正する気があるのかないのか。微妙な言い回しが非情に気になるところだが、下手に藪を突いて蛇を出したくない。
「衣食住は、ワシが保障してやる。自分の家と思って住まうがええ」
 得体の知れない相手を懐に入れようとするぬらりひょんに、私は顔を顰めて言葉を返した。
「そこまでして貰う理由がありません」
「理由が必要か?」
「ええ、まあ……そうですね」
 理由に拘っているのではなく、自分を納得させられないだけなのだ。
 ふむと顎に手を添え考え込むぬらりひょんに、とてつもなく自分にとって嫌な予感がする。
「藍は、リクオに拾われたんじゃろう?」
「はい」
「なら、一割は貰わんとな」
「は?」
 ペカーッと効果音がつくような良い笑みを浮かべ、拾得物件の一割よこせと宣うぬらりひょんに私の顔が引きつった。
「鶴とて助けられたら恩返しするじゃろう。お前さんは、何もせんと帰るのか?」
 童話の話をされても困る。チクチクと良心を突いてくる物言いに、グッと言葉が詰まった。
「……お世話になります」
 物凄く不本意なのだが、仕方が無い。行く宛てもない私にとって、有難い(とは言いがたいが)ぬらりひょんの申し出を受ける事となった。
 ニンマリと笑みを浮かべるぬらりひょんに、心の中で罵詈雑言吐き捨てる。
「子供は素直なのが一番じゃ」
 カラカラと笑うぬらりひょんに、私は肩を落とし大きな溜息を吐いた。  

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