小説 | ナノ

現状把握と今後の対策 [ 4/259 ]


「ワシは、奴良組の総大将ぬらりひょんじゃ。リクオが、こんなめんこい女子を連れてくるとは。いやはやお前も隅におけんなぁ」
「じいちゃんっ!!」
 胡坐をかき上座に座るおじいさんことぬらりひょんは、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべリクオを弄っている。
 めんこいって何だ?と頭に疑問符を浮かべつつも、愛想笑いでその場を切り抜ける。
「私は、神月藍と申します。助けて頂いてありがとう御座いました」
 深々と頭を下げると、小さな子供をあやすかのようにポムポムと頭を軽く撫でられた。
「色々とわけありのようじゃが、聞いても良いか?」
「答えられる範囲であれば答えますけど、ただ聞いた後で『頭のおかしい奴』だと認識されるのはごめんです。それくらいぶっ飛んだ話になりますけど、良いんですか?」
「ほぉ……それは益々気になるのぉ」
 茶を啜りながら聞く体制に入ったぬらりひょんに、逃げられないと感じた私は事の始まりから話た。
 本の世界という事は伏せ、転寝していたら別の場所に移動しており、そこでリクオと出会ったと説明する。
「―――というわけです。恐らく、平行世界に迷い込んだというのが私の考えです」
「平行世界とな?」
「ええ、ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界の事です。パラレルワールドとも言われてますね。私が異邦者である事には変わりないんでしょうけど、どうやって来たのか寝てたので分からないし。帰り方も分からないんです」
 頬に手を当て大きな溜息を吐く私に、リクオもぬらりひょんも信じがたいと言いたげな顔でこちらを見ている。まあ、当然の反応だ。胡散臭さは、自分でも理解している。
「少なくとも私のいた世界で、東京都に浮世絵町なんて町はありませんでした。ここがパラレルワールドなら私の戸籍も無いでしょうね」
 身分証明できるものと言えば、生徒手帳くらいだ。そこでハタッと気付き、ポケットをゴソゴソと漁り生徒手帳を取り出す。
 顔写真入りの生徒手帳をパラパラと捲り、学校の住所や電話番号が載ったページを開きぬらりひょんに見せた。
「この住所ってあります?」
「ん? ああ、ちょっと待て。おい、カラスよ。インターネットでこの住所を調べてくれ」
「分かりました」
 カラスと呼ばれた山伏装束を着た小さな烏に、私は声を失った。烏が、器用に携帯電話を操り住所を調べる姿に頭がクラクラする。
 漫画と実物では、相当ギャップがありすぎる。原作のリクオは妖怪を隠したがってたのに、目の前にいる彼は隠そうともしない。
「……妖怪?」
「妖怪任侠一家じゃからのぉ。人間は、若菜とリクオしかおらん。もっとも、リクオも1/4は妖怪じゃがな」
「そうですか」
 あっさりとした私の態度に、ぬらりひょんは興味を引かれたのか興味津々に疑問をぶつけてくる。
「何じゃ驚かんのか?」
「自分の状況を鑑みたら、妖怪が居ても何ら不思議じゃありませんから」
「肝の据わった女子じゃのぉ」
 知ってますからとは言えないので、適当に言葉を濁しておく。
「私にとって今後の身の振り方を考えるのが先決です」
 キッパリと言い切る私に、ぬらりひょんは喉の奥で笑いを噛み殺している。何が面白いのか、一度じっくり話を聞いてみたいものだ。

*prevhome#next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -