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一難去ってまた一難 [ 31/34 ]


 ガッツリ調教された佐久穂です。散々叫んで喉が掠れで出やしない。
 目を覚ましたら、着流しを着せられどうやら寝かされていたようだ。
 場所は、変わらず金糸雀の間だった事に溜息が出た。
「リクト、佐久穂、鯉華……今頃どうしてっかなぁ」
 久しぶりに子育てなしで、有意義なひと時を過ごせると思ったのに。
 リクオとぬらりひょんに潰された挙句、よく分からない怒りをぶつけられ散々だ。
「リクト、佐久穂、鯉華ねぇ。一体誰じゃ?」
「俺の子供達だけど……」
 頭が働いていなかったのか、ぬらりひょんの問い掛けに引っかかりあっさり白状してハタリと気付く。
 バッと振り向けば、そこには般若×2が居ました。
「へぇ、俺らに内緒で子供を作っていたと」
「相手は、誰じゃ?」
 ドス黒いオーラを出しながらにじり寄る二人に、絶対聞く耳を持たないと瞬時に判断した私は、枕と掛け布団を投げつけ逃亡を企てた。
「させるか!!」
 いとも簡単に私の腹に馬のりしたリクオに完全ホールドされてしまった。無念だ。
「どう言うことか白状しやがれ」
 胸倉つかんで凄むことか。折角着せられた着流しが伸びている。
「仕置きが甘かったかのぅ」
 厄介な一人もいたぁあ―――!! 嗚呼、もうマジ戻りたい。
「誰が貴様等に屈するくわぁぁああっ」
 胸倉を掴んでいたリクオ目掛けて渾身の頭突きをかます。頭に走る衝撃に、目がチカチカしたのは言うまでもない。
 疲労困憊の上に頭突きの衝撃はきつかった。
「テメェ、気絶して逃げんな」
 ギャイギャイと喚く二人の声が遠のき、ブラックアウトした。


 喧騒は気絶した時と一緒に五月蝿かった。尋常じゃない五月蝿さに、目を開き諸悪の根源に向かって怒鳴りつけた私は悪くない。
「じゃかあしいんじゃ!」
「佐久穂!! 目を覚まさないかと思ったよ」
 半泣きになりながら抱きついてくるリクオを拳で沈め、辺りを見渡すと何故か私の部屋に居た。
「何で家にいるんだ?」
 遊郭に居たのにとは口には出さなかったが、訝しむ私にリクオ達は顔を見合わせて言った。
「元に戻ったのか?」
「何だよ、そりゃ」
 意味が分からんと鯉伴を睨みつければ、
「別世界のお前と入替っていたんだろう?」
と何故か状況を把握していたので驚いた。もしかすると、あっちの私は状況を説明していたのだろう。
 にも関わらず、私はと言うと色々引っ掻き回しただけのような気がする。
「あー……ただいま」
 あっちの私に謝罪しつつ、取敢えず帰れて良かったと安堵したのだった。
―完―

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