小説 | ナノ

act89 [ 90/199 ]


「結局、何も起こらなかったよね」
「でもさ、品子ちゃん朝起きたら顔がすっきりしてたよね。笑顔でお礼言ってたし」
「カニも沢山貰いましたしね」
 カニが入った箱を持ちながらホクホクと笑顔を見せる島に、私はハハハハッと乾いた笑みを浮かべた。
 品子から報酬を受取ったが、花開院絡みということもあり本家の方から謝罪と今まで掛かった費用については何かしらの対応をするように話はつけてある。
「秀元神社が、昨日放火にあったらしいよ」
「まさか、神主さんがヤクザとグルだったなんて思わなかったわ!」
 巻は、グシャッと飲みかけのコーラの缶を握りつぶし般若の形相で怒っている。
「しかも、全裸で正座してたんだって。首には、ご丁寧に看板つき。一体誰がしたんだろうね」
 良い気味だと笑う鳥居の言葉に、目を泳がせているとリクオが『やっぱりやり過ぎなんだよ』と言いたげな視線を寄こしてきたが無視する。
「清継君、報酬はいつ貰えるのー?」
「一旦、帳簿に付けてからになるから学校で渡す」
「今くれ」
 ズイッと手を出してくる巻の頭を軽く叩く。本当に金の亡者だ。
 わざとらしく大きな溜息を吐いていると、思いつめたような顔をしているカナを見つけ首を傾げる。
「家長どうした?」
「う、うん……品子ちゃんの家なんだけど。邪魅以外にも絶対居たと思うの」
「何が?」
「妖怪・雪わらし!」
 氷麗、お前一体カナに何したんだ。思わず心の中で突っ込みを入れるが、賢明にも口には出さない。
「……」
「清継君なら分かったでしょう!? 寒かったし、絶対居たのよ」
 現在進行形で、お前の後ろを歩いているぞ。チラリと後ろを見ると、クスクスと笑みを浮かべる氷麗が目に入り絶対あれは何かしたなと確信する。
「害はないんだし良いんじゃねぇか? 可愛いもんだろう」
「そうだけど……でも、怖いものは怖いもん」
 プクゥと頬を膨らませるカナに、私はボリボリと頭を掻いた。
 怖いと言いながらも、清十字怪奇探偵団にいる矛盾した彼女の行動の全てはリクオに繋がるわけで、何だか複雑な気分になる。
 こうして、邪魅騒動は幕を閉じたのだった。

*prevhome#next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -