小説 | ナノ

act68 [ 69/199 ]


 昨日に引き続き、今日も散々な一日だった。何故かって? カナが、私の制服で写メを取り捲りそれを自慢していたからだ。
 事のあらましを聞いた清十字怪奇探偵団のメンバー(女共)は、人の制服を毟ろうと追い掛け回してくる。
「清継くーん! 待って下さいってばー」
 ダダダッと慌しく廊下を駆ける私に対し、氷麗が必死に食らいついてくる。
「待てと言われて待つ奴がいるか!」
「じゃあ、制服脱げこの野郎!」
 巻の変態発言に、そうだそうだと周りが騒ぐ。振り切れるかと思ったら、前方には鳥居とゆらが立っている。慌てて速度を落とし方向転換しようとしたら人にぶつかった。
「ブッ!」
 ムニュッと弾力のある感触に、私はサーッと頭から血の気が引く。
「またお会いしましたね」
 視線を上げると、凛子のいい笑顔があった。てことは、今私は凛子の胸に顔を埋めている状況か。
「〜〜〜〜〜っ!!! 済みませんでしたーっ」
 声にならない悲鳴を上げ、土下座せんばかりの勢いで平謝りする私に、彼女は優しかった。
「気にしないで清継君」
 いきなり名前を呼ばれ、私はハテ?と頭に疑問符を浮かべる。
 彼女の名前は知っていても、自己紹介した覚えはない。
 さらに言うなら、彼女の前で呼ばれたのは真名であって仮名ではない。
 不思議そうにする私に対し、彼女はニコニコと微笑みながら種明かしをしてくれた。
「あの後、お礼をしようと思って貴方のこと探してました。良かった見つかって」
 ぬらりひょんですら五年掛かったことを一日で遣って退けた彼女の能力に唖然とする。
 いくら同じ学校でも自分を一日で探し当てるとは只者じゃない。
「き〜よ〜つ〜ぐ〜くぅん、いつまで胸に顔を埋めてるつもりなん。その人にも失礼やろう」
 ゴゴゴッと暗雲を立ち上らせるゆらの顔は般若と化して恐ろしい。
「私は構わないから」
 離れようとする私に対し、彼女はムギューッと抱きしめてくる。弾力のあるおっぱいが顔に当たって気持ち良いんだが、この構図は色々と不味いだろう。
「何やねんアンタ! 清継君から離れーや」
「清継君も清継君です! そんなにおっぱいが好きなら、どうぞ私の胸に……」
 威嚇するゆらと、両手を広げてさあカモンと待ち構える氷麗。どちらも嫌だ。
「及川、誤解を招くこと言うな。乳が好きなわけじゃねぇから。凛子は、放してくれ。そんでもって、ゆらは落ち着け」
 距離を取ろうとするが、ガッチリと抱き込まれていては離れることも出来ない。
「何でこの人は、名前で私は苗字なんですか!?」
「凛子って……何呼び捨てしてんのアンタ!」
 目を吊り上げて怒り出すゆらと氷麗に、私は目を白黒させる。怒りに繋がる要素が、あの会話の中で一体どこにあったんだ。
「ちょっとこちらへ」
 ズルズルと引きずられる私。女の子に力で負けるなんて屈辱だ。
「今日から送り迎えはうちの者がします」
 黒塗りのベンツが、デーンと校門前に居座っているではないか。
「何これ……」
「私の家、商売人なんです。曾おじいちゃんの血のお陰で代々繁盛。清継君のお役に立てると思います」
 ニッコリと微笑む凛子に対し、
「勝手に決めんといて! 清継君は、うちと帰るねん」
「は? 何言ってるんですか!! 私と帰るんです」
「どっちでも良いじゃん。途中まで皆で一緒に帰ってるんだし」
 ゆらと氷麗の暴走に、巻が突っ込みを入れるも綺麗に無視されている。
「そうなんですか? 助けて貰ったお礼がしたかったのに……」
 捨てられた子犬のようにしょぼくれる凛子に、私は乾いた笑みが零れる。
 助けて貰ったお礼が送り迎えになるのかはさておき、私は礼をしたいと訴える凛子に対し生徒会の役員に勧誘した。
「じゃあ、生徒会に入ってくれ」
「生徒会ですか?」
「おう、あんたの情報情報収拾能力は半端じゃねぇからな」
「分かりました」
 迷うことなく即答で二つ返事をくれた凛子に対し、やはり外野が煩かった。
 ギャイギャイと喚く彼女らの声は頭に響く。何で私がこんな目に遭わなきゃならないのだ。
 それもこれも皆リクオのせいではないか。今、ここに居ないリクオに恨み辛み怨念を込めた電波を飛ばしながら、早く静かにならないかなぁ……と半分魂を飛ばす私だった。

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