小説 | ナノ

奥様は14歳.8 [ 60/145 ]


 宿で一夜明かし、ぬらりひょんに抱えられて帰還したら徒ならぬ雰囲気を察した妖怪達が絶叫し涙を流したのは言うまでもなく。
 泣きたいのは、私の方だと言えない臆病な自分がそこに居たりする。
 ぬらりひょんに貞操を奪われなし崩しに嫁にされてしまった私だったが、一つだけ条件をつけた。
「魑魅魍魎の主になるまで私に触らないで下さい」
 物凄く高いハードルだとは思うが、彼が私にした仕打ちと比べれば可愛いものである。
「何故じゃ! 佐久穂が傍におるのに触れんのは嫌じゃ」
 駄々っ子のように文句を垂れるぬらりひょんに、私はニッコリと笑みを浮かべて言った。
「魑魅魍魎の主になると言ったから、私はここまで着いて来たのです。嫁になる為にここに来たわけではありません。早くなって私を抱いて下さいまし」
「佐久穂ーっ」
 飛び掛ってきたぬらりひょんをひらりと交わし、私は彼から距離を開けた。
「珱姫と約束があるので行って参ります」
「あの女のところにか!? 佐久穂、戻って来い」
 ギャイギャイと後ろで喚くぬらりひょんを放置し、私は普段の生活へと戻ったのだった。


 禁欲生活を強いられていたぬらりひょんだったが、私が攫われたことで転機が訪れる。
 珱姫と共に羽衣狐に攫われた私を奪還すべく大阪城に乗り込み喧嘩を売って勝ったのは良い。
 しかし、だ。何故、陰陽師の屋敷で人を押し倒すかな。
「……総大将様、お戯れは止めて下さい」
「戯れとらん。襲ってるだけじゃ」
「尚悪いわ!」
 グググッと人の両手を押さえつけ覆い被さってくるぬらりひょんに、私は精一杯抵抗するがそこは男と女の力の差があり勝てない。
「魑魅魍魎の主になったんじゃ。解禁じゃろう」
「ええ、そうですね! でも、人様のお宅で欲情しないで下さい」
 絶対部屋や着物を汚すのは必死で、情交したから替えを用意してくれとは口が裂けても言えない。言いたくない。
「じゃあ、野外でしろってか? ワシはそれでも構わんがなぁ」
 ニヤッと笑うぬらりひょんに、私は馬鹿言うなと睨みつける。
「貴方と一緒にしないで下さい」
「失礼な。一度経験すりゃあ病み付きになるぞ」
 ニヤニヤと笑うぬらりひょんを睨みつけるも、欲望に忠実な彼は本当に野外で私を抱いた。
 それも人が通る往来で堂々とだ。ぬらりひょんの畏れのお陰で気付かれることはなかったけれど、生きた心地がしなかった。
 度々ぬらりひょんの変態めいた性癖に付き合わされるようになり、その度に珱姫や雪麗に泣きつくこととなるのは、また別の話である。
おしまい

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