小説 | ナノ

act7 [ 8/199 ]


 夜、学校の裏門で集合した面子を見て私はガックリと肩を落とした。島とリクオは良い。倉田もとい青田坊、及川とい雪女は先の展開上必要になるから分かる。
「……家長、お前なんで来た」
「だって、危ないでしょう!」
「お前、怖いのキライだろうが」
「う、うるさいわねー。いいじゃない、別に」
 そっぽ向いてどもりながらも開き直るカナの顔は、ほんのりと赤い。嗚呼、そういえばリクオに惚れてたっけ。面倒臭いな。
「しょうがねーな。今から帰すと、それはそれで危ないからなぁ…。チッ、面倒くせー」
「面倒臭いはないでしょう!」
 キャンキャンと噛み付いてくるカナに、私はハイハイと適当に話を流す。
「そこの二人は何しに来たんだ?」
「私、及川氷麗。面白そうなことするって聞いて参加しに来たの。よろしくね」
 ニッコリと笑う氷麗に、
「清十字清継だ。よろしく」
 私は取敢えず当たり障りないよう握手を求めるとひんやりと冷たい手で握られ、思わず眉を顰めた。上手く人に化けているようだが、体温はやっぱり人外だ。
「手冷たいな」
「ひ、冷え性なの。オホホホホ」
 冷や汗を掻きながら誤魔化す氷麗を見て面白いと思いつつも、からかっている場合ではないので隣に居た倉田に声を掛ける。
「で、あんたは?」
「倉田だ。俺もこういうの好きなんだ」
「物好きだな。揃ったことだし、これを渡しておく」
 清塩の入った小袋を倉田と氷麗以外には渡していく。
「清継君、これ何っすか?」
 袋を振りながら質問してくる島に、私は簡潔に答えた。
「清めの塩。弱い死霊や妖怪なら祓えるだろうが、力の強い奴に遭遇したら精々足止めくらいにしかならん。万が一の時は、それをぶちまけろ」
 顔色の悪い二人はさておき、カナは倉田と氷麗が清塩を持ってないことに疑問に思い聞いてきた。
「及川さんたちの分は?」
「あるわけねーだろう。つーか、お前の分も本当はなかったんだぞ」
 カナを睨みつけると、ウッと言葉を詰まらせモゴモゴと文句を口の中で言っている。器用な女だな、おい。
「及川、これ持ってろ」
 腕につけていた数珠を放り投げ彼女に渡す。氷麗は、いきなり投げられたというのもあり思わず数珠をキャッチしていた。
「一応、魔除けだ。倉田と一緒に居ろ」
「へ、は…はい」
「じゃあ、行くか」
 ルートの説明をした後、私を先頭に続いていく。フェンスに差し掛かった時点で私の足がピタッと止まった。
 ジッとカナと氷麗を見て、思わず溜息が出てしまった。よく考えたら、こいつらスカートだよ。
「ど、どうしたの?」
「お前ら、一番最後に来い」
 クイッとフェンスを顎でしゃくると、カナが不安気になんでと聞いてきた。
「え、最初じゃダメなの?」
「……じゃあ聞くが、家長・及川……お前らアンダーは穿いてんのか? フェンスを越えるんだぞ。パンツ見せたいか?」
 漸くそこまで言って、二人は顔を赤くして俯いた。アンダーくらい穿いてくれ頼むから。
 内心ゲッソリとしながらも、先にフェンスを越えるように促すと今度は素直に従ってくれた。
 元女に言われたら本当にお終いだと思うのは私だけだろうか。
 何のかんので目的地である旧校舎に辿り着いた。
 空気が澱んでいて息苦しい。流石に、髪紐だけでは耐えられなくはないがキツイ。
「取敢えず、赤いお守りが落ちてないか見てくれ。……って家長、何故俺の背中にへばりつく」
 ベタッと人の服を握りながら離れないカナに勘弁してくれと頭を抱えた。
「だ、だって怖いんだもん」
「だから、来るなって言ったんだ! この阿呆っ」
 リクオの背中にくっつくんじゃなかったか? 動き辛いこの上ない状況に溜息しか出ない。
「あー、もう……好きにしろ」
 突っぱねたところでカナが言うことを聞くとは限らないし、逆にリクオが動き易くなって都合が良いだろう。
 私は、カナを後ろに引っ付けたまま旧校舎の中へと入った。

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