小説 | ナノ

十八夜 [ 94/218 ]


 邪魅騒動も片付きホッとしたのも束の間の事で、あろうことか他人様の家で夜のリクオに押し倒されていた。
 氷麗(つらら)にでも頼んだのか、清十字怪奇探偵団の面々を強制就寝させた奴は、片手に酒瓶を持って堂々と佐久穂に宛がわれた部屋へ乗り込んできた。
「付き合え」
 ドンと目の前に酒瓶を置き、盃を差し出して来る。
「……未成年なんだけど」
「俺には、関係ねぇな。酌しろ」
 リクオの俺様っぷりに溜息しか出ない。ここで逆らったとしても、自分にとって良いことは一つもない。適当に飲ませたら退出願おう。
 窓を開け満月を見ながらの月見酒。酒のどこが美味しいのか分からない佐久穂は、杯を重ねるリクオを見てよく飲めるなぁ……と思った。
 お互い言葉は無い。お酒を注ぐ音と彼がそれを嚥下する音。それだけだった。
「……まだ、怒ってる?」
 無理矢理にその場を治めたのだ。文句の一つは来るだろうと思っていたが、予測は大はずれ。
「いや、それはもういい」
「じゃあ、何? 単なる月見酒ってわけでもないんでしょう?」
「……あんたの事が知りたい」
「もう知ってるじゃない」
 何を言ってるんだと首を傾げれば、リクオは苛立ったように語気を荒くした。
「俺が知ってるのは、名前と職業だけだろう。……常々思っていたが、佐久穂おめぇ何者だい」
「……それは、どう意味?」
「言葉通りさ。人間なのに妖の肩を持つ。かと思えは神の肩を持つ。そのくせ、同族の人間には冷てぇ。それにお前は、人の気だけでない別の物が混じってる」
「……それを知ってどうするの?」
「どうもしねぇ。ただ……お前に近づきたいんだ」
 彼の言葉に佐久穂の頬が赤くなる。幾度となく口説かれているが、それらはからかいを含んだものだが、今のリクオの目からは本気だと訴えてくる。
「誰にも……話さないと誓えるなら話すわ」
「俺は口が堅ぇんだ。心配すんな。墓場まで秘密は守ってやる」
 彼になら―リクオだけになら―自分の抱えてきた秘密を話しても良いかもしれない。
 佐久穂は、昔話を語る口調で出生の秘密を話し始めた。
「………私が、平安時代に活躍した安部清明の直系の子孫であることは知ってるでしょう」
「ああ……」
「初代当主は、天狐である葛の葉と人間のハーフだった。人と交わることで、その血は薄くなった。でも、天狐の血は直系に受け継がれつづけているの。隔世遺伝で四百年に一度、天狐の力を持った子供が生まれる。力を欲するものは、天狐の血肉を狙っている。血を啜れば傷は癒え、肝を食べれば寿命が千は延びると言われてる」
 天狐――それは、千の時を生きた善狐が、神獣となった姿をいう。他と交わり血が薄くなったとしても、隔世遺伝で新たな天狐が生まれる。
 人でありながら神獣で妖狐でもある。どちらかを選べば、もう二度とその道に戻ることは出来ないのだ。
「人であり、神の眷属であり、妖狐でもある。それが……安部佐久穂なのよ。この話をしたのは、リクオだけ。お願い。絶対に誰にも話さないで」
「安心しろ。絶対に他言しねぇ。俺は、嘘が嫌いだからな」
「……ありがとう」
「ま、何かあったら俺が守ってやるよ」
 ニヤリといつもの如く人を食った笑みに、佐久穂はクスクスと笑みが零れた。
「私は、あんたに守られてやるほど弱くはないけど?」
「ふぅん……そうかい。なら、俺が勝ったら大人の遊びって奴を教えろよ」
「はぁ!? ちょっ、何でそうなるの!!」
 どっかで聞いたフレーズに、リクオはくつくつと笑みを浮かべている。
「決定事だろう」
 それは、昼のリクオが勝手に決定したことであって佐久穂自身は承諾していない。
「勝手なこと言わないで!」
「それとも、お前に絡んできた奴らには許されるってのかい」
 怒気を孕んだ声に、佐久穂はビクリと肩を揺らす。
「許すわけない。あいつらに負けない自信があったの!」
「……一度は怖い目に遭った方が良さそうだ」
 リクオは、トンと佐久穂の肩を押し床へ押し倒す。
 仰向けになった佐久穂は、冗談じゃないと身体を捩り抵抗した。
 しかし、男と女の力の差は歴然で、ビクリとも動かない。
「動きを封じられたら、いくらお前でも太刀打ちできない」
 両手を頭上で纏め押さえつけ、膝の間に身体を滑り込ませたリクオは、体重を掛け佐久穂の動きを完全に封じる。
「やだ……止めて…」
 彼は、確かに自分を気に入っている。「俺の女」と位置づけするくらいには。
 俺の女と良いながらも、他の女を傍に侍らせる。とりわけ可奈には優しいし、氷麗(つらら)は信頼を置いている。
 リクオの指が浴衣の帯を解いていく。彼が、本気で自分を抱こうとしているのが分かった。
 だから怖いと思った。未知の恐怖に、彼の本心が見えないまま抱かれることに、恐ろしくて仕方が無かった。
「止めねぇよ。佐久穂……俺のものになれ」
 帯を完全に抜き取られ肌蹴た浴衣の中から現れた白い肢体。
 肩から腹に掛けて斜めに切られた刀傷が、生々しく白い肌に残っている。
「傷……残っちまったな」
 傷を指でなぞりながらポツリと呟く彼は、傷に唇を寄せ舌で刀傷の痕をなぞり始めた。
「ぁ…ャッ、リク…オ…やめっ、んぁ…」
 たわわな胸を掬い上げるように掴み、ゆるりと揉み下される。
「止めねぇーって言っただろう」
 膨らんだ大きな乳房を口に含み突起を甘噛みされる。
 嫌々と首を横に振り嫌がる佐久穂に、リクオはお構いなしに愛撫の手を大胆にしていった。
 腰を撫でる手つきが、やらしく蠢く。リクオが愛撫する度に、佐久穂の腰がゆらゆらと揺れていた。
「嫌だと言いながらも、ここは素直だな」
 佐久穂の内股をなぞり、薄ピンクのショーツの上からまだ誰にも触れられたことのない場所をなぞり上げられる。
「んぁ……」
 思っていた以上に甘ったるい嬌声が零れ落ち、佐久穂はカッと頬を赤く染め上げた。
 リクオは押さえつけてた両手を放したかと思うと、身体を下にずらし膝裏に手を入れ大きく開脚させた。
「声、抑えてないと起きちまうかもな……」
 意地の悪い声と共に、ショーツの上からぷっくりと大きく肥大した肉芽をなぞり上げられ、甲高い嬌声を上げそうになり両手で口元を覆った。
 プシャッと音を立てて、ショーツを濡らす。
「舌だけで潮吹きかい。感度良すぎだな」
 散々胸を腰を焦らすように弄られて、あげく敏感な場所を擦りあげられては、性経験のない佐久穂にどうすることもできない。
「…んふぅ、あ…ひゃ、んぅ…」
 グチグチと指の腹で秘部の入り口を捏ね回され、その度に上がりそうになる声を必死で押える。
 酸欠状態でボーッとしている佐久穂を他所に、リクオは下着の役割など到底果たしていないショーツを取っ払らいテラテラと光る秘部へと舌を這わせた。
「んぁああっ…あ、あ…ひゃ、んぅ…」
 襞を指で押し広げ、蜜を掻き出すかのように舌を尖らせ舐め取っていく。
 鼻先が、肉芽を擦り上げ快楽に飲まれた佐久穂は声を抑えることなく嬌声を上げた。
「やあっ、ああん……ふあぁぁ…」
 リクオの頭に手を乗せ、快楽で背中が反り返った身体は、ビクビクと身体を痙攣させている。
 慎ましく閉じていた秘部に、ゆっくりと指を差し入れると、佐久穂の身体が硬直し大粒の涙を目に溜めていた。
「……大丈夫だ。直ぐ良くなる」
 ゆっくりと中を探るように動かし始めたリクオに、佐久穂はギュッと歯を食いしばり引きつる痛みに耐えようとしている。
 リクオは、気を反らすためにもあっちこっちへと佐久穂が感じる場所を愛撫していく。
「あ、あ、ぁぁん…」
 痛みを快楽に摩り替えられ、身体の力が抜けたのを良いことに、指を一本・二本と増やしていった。
 三本目を含む頃には、中はよく解れ指をキュッキュと締め付ける。
 リクオは、指を抜き大きく反り返った肉棒を濡れそつぼる秘部に押付け一気に突き上げた。
「――――ッツ!!」
 目を大きく見開き、あまりの痛みに声を無くす佐久穂にリクオは、宥めるように彼女の目元に口付けを落とした。
 血臭が二人を包み込む。佐久穂の処女膜が、リクオによって破られたのだ。
 佐久穂の中に入っているリクオの肉棒がドクドクと脈を打っている。
 身体の負担を考え暫くは抱き合うだけだったリクオだったが、
「……我慢できねぇ」
と切羽詰った声を零すと、容赦なく突き上げてきた。
「ヒ、ァァアッ…ャ、アァ…」
 突き上げられるたびに、ジンジンと熱を持ちはじめ痛みを感じることはない。
 リクオの手で変わっていく自分が怖くなり、身体を捩り抵抗した。
「いやっ……やだぁ…ふっ、くあぁん…あっ、あっ。止めて…おねが…」
「さく、や…っ」
 ズチュズチュとやらしい音が、静かな部屋に響き渡る。
 高速ピストンで攻め立てられ、絶頂が近いのかリクオの顔が歪んだ。
「……出すぜ……クッ…」
 大きく膨張した肉棒が、一気に中で弾ける。
「んぁああっ……」
 リクオの情欲を無理矢理受止めさせらた佐久穂も、彼の後を追いかけるように絶頂を迎えた。
 肉棒を含んだ場所からは、ゴプリと白濁の液が股を伝い滴り落ちた。
「なん…で……」
 悲しげに歪む佐久穂に、リクオはその問いに答えることはなかった。
 まだ終らないとばかりに、その小さな身体に圧し掛かり思う存分弄んだのだった。

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