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導師守役の呟き@ [ 10/10 ]


 ルークがティアと行動していた理由は分かったが、魔物が跋扈している森へと来ているのかは彼があっさりと教えてくれた。
 彼曰く、エンゲーブで泥棒と間違われて拘束されたことが気に食わなかった為真犯人をとっ捕まえるのだと意気込んでいた。
「カーティス大佐でマルクトの教育水準は最低だ実感させられましたが、改めて再認識させられるとは、これが巷でいうジェネレーションギャップという奴ですね」
と、ヴォルヴァは良い笑顔で言い切った。目が全然笑っていないことにルークも気付いたようで、彼はサッと目を逸らしている。
「隣国の王族が、よもや田舎に訪れるとは思わなかったのではありませんか。ルーク様の身なりを見れば、身分の高い方だと推測できますが。まあ、はっきり申し上げて馬鹿なのでしょう」
「嗚呼、馬鹿なんですね!」
 満面の笑みを浮かべてマルクト人は馬鹿断言しているイオンはさておき、私はルークに向き合って言った。
「ルーク様にも全く非がなかったとは言い切れません」
「何だよ。俺が悪いってのか!?」
 彼は、私の言葉にムッとした顔で睨んでくる。まあ、中身が七歳児なら致し方がないか。
「人様の物を盗ったら窃盗罪に当たります。貴族である貴方が、貨幣を使い物を手に入るようなことはなさらないのでご承知なかったのも致し方がないでしょう。ですが、世の中には知らなかったでは済まされないこともあるのです。この女の犯した罪がいい例です。キムラスカからしてみれば、教団から敵対行動を起こされたと取られかねないことをしでかしてます」
「あ……」
 ティアを引き合いに出せば、私の言いたいことが理解できたのか眉尻を下げている。とこぞの鶏冠とは大違いだ。
「とまあ、話はここまでにして真犯人を捕まえようとする心意気は分かりました。ただ、エンゲーブに戻られるのはお勧めしません」
「何でだ?」
 疑問符を浮かべるルークに対し、ヴォルヴァが何か思い当たったのか物凄く嫌そうな顔をして答えた。
「ジェイドですね」
「はい、彼はどんな手を使っても利用しようと考えるはずです。和平を免罪符にするような輩ですから」
 それに、こちらとしてもルークをマルクトで保護されるわけにはいかないのだ。キムラスカとてマルクトに借りを作るのは御免こうむりたいだろう。
「なあ、そのジェイドって奴そんなにヤバイのか?」
 不穏な空気を感じ取ったルークは、怖々とした様子でジェイドについて聞いてくる。
 私とヴォルヴァは顔を見合わせて異口同音で断言した。
「「誘拐犯ですから」」
 誰を誘拐したとは口に出さなかったが、聡い彼は瞬時に私たちの言いたいことを悟り青褪めている。
「導師、北の森にアリエッタの母上が住んでますので、彼らに助けを求めては如何でしょうか」
「この先にチーグルの住処がありますので、そこでソーサラーリングを借りましょう」
 次の行動が決まった私たちは、ティア・グランツを森へ置き去りにしルークと共にチーグルの住む大樹へと向かった。
 そこでヴォルヴァの怒りが爆発するとは、予想だにもしなかった。

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