小説 | ナノ

初代|切欠は貴方E [ 11/145 ]


 ぬらりひょんの宣言通り、私は彼の手によって変わりつつあった。
 黒ぶちメガネをふち無しメガネに変え、腰まであった髪も肩にかかるくらい短く切った。
 ぬらりひょんは、髪を切ったことに凄く怒ってたけど最後は似合っていると言ってくれた。
 お洒落をすることがこんなに楽しいとは思わなくて、以前は寄らない雑貨屋にも顔を出すようになった。
 パラパラと雑誌を見ていると、突如胸を揉まれ悲鳴を上げる。
「フニャァアッ!?」
「フニャァって変な悲鳴上げちゃって可愛いねー」
 ニマニマと笑みを浮かべて胸を揉むのは、高校に入ってから友達になった巻だ。
「巻さん! 毎回毎回止めて下さいって言ってるじゃないですか」
 胸を押さえながら半泣きになりつつ文句を言うと、彼女はシレッとした顔で宣う。
「佐久穂の乳が、私に揉んでくれと訴えるんだよ」
「ハワワッ…そんな大きな声でいう事じゃないです」
 慌てて彼女の口を押さえようとしたら、また胸を揉まれた。セクハラ反対だ。
「沙織、また佐久穂ちゃんイジメてるー」
「バッカ、違うっての! これは愛情表現なのだよ」
 ワキワキと手を動かす仕草が卑猥に映るのは気のせいじゃないと思う。
「鳥居さん、助けてぇ」
 鳥居の背中に隠れると、巻はチッと舌打ちしつまらなそうに拗ねた。
「最近、佐久穂ちゃんが益々可愛くなって嫉妬してるんだよ」
 クツクツと笑みを浮かべて会話に入ってくるカナに、私はブンブンと首を横に振る。
「そんなことない、と思う」
 実際に、相変わらず清十字怪奇探偵団以外の男の子と会話することはないし。女の子もカナ、鳥居、巻、ゆら、氷麗といったメンバーくらいしか話したことはない。
「そんなことあるから。長い髪を切った時は驚いたけど、その方が似合ってる」
「あ、ありがとう」
 褒められることに慣れてないからか、顔が赤くなるのは仕方がない。
「照れちゃって可愛い〜。どういう心境でイメチェンしたの? 好きな人できた?」
 好きな人と言われて顔がボンッと赤くなる。私の素直な反応に、彼女達はとびっきりの良い笑顔を浮かべていた。
「そっかー好きな人が出来たのか」
「佐久穂ちゃんにコナ掛けた勇者がいたんだね……」
「全力で邪魔(おうえん)しないとね」
 恥ずかしさのあまり顔を上げられなかったから気付かなかったが、彼女達の目が笑ってないことに気付かなかった。
「そういえば、清継君が佐久穂ちゃん呼んでたよ」
「え? そうなの。今日のおやつのことかな?」
「違うと思うけど、行ってきたら? 遅くなるとうるさいから」
 カナの言葉に、うんうんと頷く周りの反応は正直だ。
「分かった。じゃあ、行ってくるね」
 私は、雑誌を机の中に仕舞いその場を後にした。


 清継のクラスに顔を出すと、相変わらず彼はクラスの中心で騒いでいた。
 声を掛けようか迷っていると、ポンと肩を叩かれビクッと身体を大きく揺らした。
「ヒャウッ!?」
「クククッ……何もそんなに驚かなくても」
 クツクツと笑みを浮かべるリクオに、私はバックンバックンと胸の動悸を押さえた。
「奴良君、驚かさないで下さい」
「ごめん。ボーッと立っているからどうしたのかなって」
 ゴメンと謝る割には、悪いと思ってないんじゃないかな。
「清継君に呼ばれたんですけど、話に夢中になっているみたいで話しかけ辛くて……」
「清継君に? ちょっと待ってて、呼んでくるよ」
 リクオは、勝手知ったるなんとやらで他クラスの教室に堂々と入り清継君を連れてきてくれた。
 まるでぬらりひょんを見ているみたいだ。
「連れてきたよ」
「ありがとう、奴良君」
「どう致しまして」
 ほのぼのとお礼を交わしていると、清継が話しに割り込んでくる。
「佐久穂さん、やっと来たね! 待っていたんだよ」
 そう言いながら手渡されたのは、一冊の冊子。清十字怪奇探偵団20XX年GW合宿と書かれている。
「これは?」
「何を言っているんだい。合宿だよ! 君も清十字怪奇探偵団のメンバーなんだ。参加するに決まっているじゃないか」
 ハハハハッと高笑いをする清継に、私は唖然と彼を見る。いつの間に清十字怪奇探偵団の一員になったのだろう。
 そりゃあ、巻達を通じて話すようになったが部活には参加していない。
「あの、合宿とか急に言われても行けないです」
 両親の保険を切り崩して生活しているので、あまり贅沢は出来ないのだ。
 ましてや、突発的な旅行に行くだけの費用を捻出できない。
「お金のことならノープロブレムだよ! 僕が、清十字怪奇探偵団の活動費は全て負担するからね」
「でも……」
「遠慮することはない。詳細は、冊子を読んでくれたまえ」
 言いたいことだけ言うと、彼はさっさと教室に戻りまた友達と話始めている。
「僕もいるから、頑張ろう」
 ポンとリクオに肩を叩かれ、彼を見ると同情と諦めが混じった目で見られ、私は彼も同じ道を歩んだのかと悟ったのだった。

*prevhome#next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -