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330万打SS 神威様リクエストB [ 4/34 ]


 少年の名前は、リオウと言った。どう見繕っても十五・六歳に見える。
 自分とそう変わらない年に、私は自然と眉を潜めていた。
「子供を軍のトップに担ぎ出すなんて何考えてんだ」
 思わず洩れた本音に、リオウはあっけらかんと「さあ?」とだけ返した。何ともあっさりしている。
「さあって、大雑把過ぎるだろう」
「よく言われる。成り行きで軍主になったけど、ボク自身も利用してないわけじゃないからね。お相子なんだよ」
 頼もしいというか、腹黒いというか容姿は愛らしいのに随分と強かな性格だ。私は厄介な相手に拾われたと心の中で溜息を漏らした。
「じゃあ、帰ろうか」
 リオウは、私の手を掴んだかと思うと小さな手鏡を天に掲げた。ピカーッと鏡が輝き目の前が真っ白になり、ちょっとした恐怖を味わった。
「もう着いたよ」
 リオウの言葉に、恐る恐る目を開けてみると大きな鏡が設置された場所に立っていた。
「ほぅ、一瞬で移動するとは中々面白い道具じゃのぉ」
「この手鏡と大鏡は繋がっているらしくて、どこに居ても大鏡のある場所に戻れるんだ。レストランに行く?」
「いや、それより金目の物を売り払いたいんだけど」
と返せば、リオウはゲラゲラと人目を憚ることなく笑い出した。何もおかしなことは伝えていないのに、大声で笑われるのは心外だ。
「喧しいよ馬鹿軍主!!」
の掛け声と共に振り下ろされたロッドが、リオウの脳天を強打した。頭を押さえ蹲る彼を冷ややかな目で見下ろすのは……女……か?
「何ジロジロみてんのさ」
「いえ、何でもありません」
 バッと顔を背け相手に気付かれないように溜息を吐いた。男だ、多分。直感でしかないが、この手のタイプは性別を間違えると面倒臭いことになりかねない。
「随分と口の悪い女子じゃのぅ」
 肩辺りでフヨフヨと浮いていた如意輪観音が、ぐるりと美少年の周囲を回ったかと思うとボソリと痛恨の一言を零した。
「ちょっ、如意輪観音違うから!! そこの子、男の子!!」
「え? 女じゃないんですか!! どう見ても美少女顔……」
「ギャーッ!! 幸子、追い討ちかけんなっ」
 幸子の驚嘆に、後ろを振り向くのが怖い。殺気をビシバシ背中に感じるのに、何故無言なのだろう。
「………僕は男だ! 切り裂きっ」
 至近距離で放たれた力に、私はヒーッと悲鳴を上げた。
「しーるどぉ!」
 咄嗟に張られた幸子のシールドが、あっさりとそれを跳ね返しまさか自分の技を喰らうとは思っても見なかったのか慌てた様子で避けている。
 ズガンッと嫌な音が階段付近でしたが、今は目の前の幸子をどうにかする方が先決か。
「ご主人様、殺って良いですか?」
「良い笑顔で殺害宣言するのは止めようぜ、幸子」
「行き成り襲う不貞な輩は成敗しても問題ありません」
「いやいや、問題だから! 如意輪観音も見てないで止めて」
「幸子、、殺って良し♪」
 親指立ててGOサインを出すのは止めてくれ。嬉々として美少年のところへ行こうとする幸子の腰に腕を回しガッチリホールドした。
「リオウ、取敢えず移動しよう。目立って仕方がない」
 さっきから沈黙を保っているリオウに声を掛けたら、口をパクパク身振り手振りしてみせるが何を伝えたいのかサッパリ分からず首を傾げた。
「リオウさんは、沈黙の紋章がついたルック君のロッドで殴られたから一時的に喋れなくなってるのー」
「解説どうも。つか、君だれ?」
 普通に私の隣に立ってニコニコしている美少女に声を掛けると、彼女はビッキーだよと間延びした声で私の疑問に答えてくれた。
「ところでビッキー、紋章って何?」
「うーん……世界を創造する元?」
 問われた相手も理解し切れていないのか、何とも頼りない回答に私は知らない世界に飛んだ時の弊害にぶつかった気がした。

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