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23.遊学と云う名の出稼ぎです [ 24/39 ]


 父王から遊学して来いと金貨一枚渡されて放り出されました。弟達と(一方通行)イチャイチャしたり、イベントを月一で開催しまくったりしたのがいけなかったと云うのだろうか。
 王子様業も傍らでやっていたので、文句を言われる筋合いはないはずなのに何故!?
「国庫を潤す為に、新たな貿易国を開拓してこいって言われたでしょう。目を離すと逃亡して城下に居るじゃないですか。それなら外に放り出して、その無駄にあるバイタリティを生かして働け」
「私の心を読まないで!」
「読んでません。口に出してます」
 馬鹿だろうお前と言いたげなカシムに、私はムゥと口をへの字に曲げた。
「昔は可愛かったのに……。どうしてこう可愛げが無くなった?」
「男が可愛いと言われて喜ぶわけないでしょう。それで、これからどうします? 成果を上げないと戻れませんよ」
 カシムの言うことは正しく、成果を上げずに戻ったらハイレとマリアムから仕置きされてしまう。
 金貨一枚を元手に、どう増やすかが試されているのだ。勿論、その中には旅費も含まれているわけで下手に散財するわけにもいかないのだ。
「最近、力をつけてきている煌帝国の様子が気になる。探りを入れておきたいな」
「あんた、また厄介ごとに首突っ込むつもりか」
 目くじらを立てて威嚇するカシムに、私はやれやれと首を竦めた。観光がてらちょっと偵察しに行くだけだってのに信用がない。
「日頃の行いが悪いから信用されないって事をいい加減学べ馬鹿王子」
「カシム、酷いよ! 偵察だけが目的じゃないんだぞ。東洋医学は優れてるし、薬も素晴らしいと聞く。煌帝国が誇る陶磁器は、ちょっとした高級品だったりするんだ。交易品として価値がある」
 道具だけでなく、技術や薬にまで着目していると言い放てば、カシムは口をへの字に曲げて口をつぐんだ。言い返せないのが悔しいらしい。
「……分かりましたよ。言い出したら聞かない人ですからね。えーえー、どこまでもお供しますとも」
 やけっぱちだと言いたげに吐き捨てられた了承の言葉に、私は思わず嬉しさのあまり抱きついた。
「カシムー愛してるー
「ハイハイ、オレモアイシテマスヨー」
 全身で愛を語らう私に対し、カシムは冷めたもので棒読みで返す始末……愛が痛い。
「取敢えず、私のことはティアと呼んでくれ。くれぐれも本名や王子呼びはするなよ」
「偽名……しかも女名。あんた、一体何考えてんだ?」
「一国の王子がフラフラと外を出歩いてるなんて知れたら色々とヤバイだろう。一応国の方針だったとしてもな。それに女だと買い物する時に得するんだよ」
 呆れるカシムに、私は頭をカシカシと掻きながら説明したら彼は嗚呼と納得した。
「仕方がないですね。ティア様、行きましょうか」
「おう。ガッツリ稼いでさっさと国に戻ろうぜ」
 そう宣言してバルバッドを出たのだが、帰国出来たのは三年の月日を要する事になろうとはこの時知る由もなかった。

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