小説 | ナノ

抱 負 [ 5/6 ]

「なぁ、佐久穂。もう一度聞かせてくれねぇか……」
「え?」
何を?
私は疑問に思いつつリクオ君の腕の中から、その端正な顔を見上げた。
帰りにリクオ君に誘われ、ちょっとだけと思いつつ奴良家にお邪魔するが、そのまま夜を迎えてしまい泊まるようになってしまったのだ。
何故か今、リクオ君の自室で後ろから抱きしめられている。
振り向いた私の鼻の上に軽く唇を落とすと、リクオ君は柔らかく笑った。
「今年の抱負さ。思い悩むほどのもんだ。聞いてみてぇ……」
「えっと、抱負…ってほどじゃないんだけど……。今年こそリクオ君の傍で役に立ちたいな、って」
その言葉にリクオ君の目が丸くなる。
あ、はは。そうだよね。
何も出来ない私がこんな事を思っても、実現出来ないから呆れてるんだよね。
ごめんなさい。リクオ君。
そう思いつつ、俯くと急に身体をきつく抱き締められた。
身体を締め付ける腕が痛い。
「リ、クオ、君?」
「佐久穂……、佐久穂…」
「は、い?」
痛みに耐えつつ返事をするとそのままトサリと畳の上に押し倒された。
吃驚しているとリクオ君は顔を近付けて、軽く唇を重ねた。
「オレは佐久穂が横に居てくれるだけで力が沸いて来るんだぜ…。これ以上ねぇほどだ……」
「で、も」
戦いの時とか傍にいても邪魔にしかならないし…
そう言おうとするとその先は言わせねぇと言うがごとく、強く唇を重ねられた。
熱い舌が口内へと押し込まれる。
「・・・ん、んっ・・・」
ぬるついた舌が絡まり合い、クチュクチュと水音が響き出した。
擦れ合う感触が溶けそうに気持ち良い。
きつく舌を吸い上げられると身体がビクッと小さく跳ね上がる。
「・・・ん、ふぁ」
細い糸を引きながらやっと唇を離れさせるとリクオ君は私を熱い眼差しで見ながら口を開いた。
「誰が何と言っても聞くんじゃねぇ…。オレは佐久穂が居てくれさえすりゃあそれでいいんだ」
「リクオ君……」
リクオ君の想いに胸がジンと熱くなる。
そして嬉しさが身体中に広がった。
私は腕を伸ばしてぎゅう、とリクオ君を抱きしめるとリクオ君も先程と同じくらいの力強さで抱きしめ返してくれた。
そして熱い吐息と共に耳元で囁かれる。
「愛してる」
私はその言葉に胸の中が幸せでいっぱいになった。
「私も、愛してる…」
そして再び唇が重なる。
「オレは絶対ぇ佐久穂を離さねぇ……。一生な…」
「うん」
ずっと傍に居させて下さい。リクオ君……
*prevhome#next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -