小説 | ナノ

3.父王のミニマムがいた [ 4/39 ]


 連れてこられたのは、家とは到底言い難いとこだった。布で囲われたテントの中に居たのは幼い子供だった。
「アリババ!」
「カシム、おかえり! その人だぁれ?」
 ドレッドヘアの少年はカシムと言うのか。アリババと呼ばれた少年は、キョトンと目を丸くして突然現れた来訪者に目を丸くしている。
「アニスさんに会いに来たんだ! このねーちゃん強いんだぜ。オレ弟子入りしたんだ」
 自分のことのように自慢するカシムだが、今聞き捨てならないことを聞いた気がする。
「ねーちゃん?」
「な、ししょう!」
 ニパァッと良い笑顔で私を見るカシムの頭に鉄拳を落とした私は悪くない。
「いっ……てぇ!! 何すんだよ」
「誰がねーちゃんだ。私は、男だ」
 年齢の割りに低い身長と痩せたら母似の美貌とかそんなオプションいらねぇ。女顔が災いしてかこれまで幾度となく女と間違われた。
 別に間違われても気にしないが、一応体裁という面倒臭いものがあるので怒る振りはしておくに越した事はない。
「「ええーっ!! 男かよっ」」
 嘘だろうとかマジかよ等と言い合っている二人は、聞こえてないとでも思っているのか。
「悪かったな女顔で」
 憮然とした顔を作り文句を言うと、根は素直なのか頭を下げてきた。
「わ、わるい」
「ごめんなさい」
 しょんぼりとする姿に溜飲を下げた私は、アリババに近付きマジマジと彼を観察した。
「髪色は父上に似ているが、容姿はアニス似か」
「な、何?」
「初めまして、アリババ。私はアブマド。こんな可愛い弟が居たとは嬉しい限りだ」
 膝を折りアリババと目線を合わせ怯えさせないように出来るだけ優しく笑うと、何故か思いっきり顔を反らされた。何気に酷いぞ、弟よ。
「アリババの兄ちゃんだったのか!」
「嗚呼、ずっと探していたんだ。カシムは、アリババの友人かい」
「おう!」
 元気一杯に返事する彼の頭をワシャワシャと撫でながら、どうやってアリババを持ち帰ろうかと考えていた。
 英才教育をするには、早いうちがいい。カシムも育てれば、もしかしたら(私にとって)良い人材になるかもしれない。
 スラムで生活している民達の現状も把握しておきたいし、私は人好きする外面を着用し彼らと世間話に花を咲かせたのだった。

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