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少女、旅先で罠に掛かるC [ 34/41 ]


 少しばかり贅沢な夕餉を堪能した私達は、部屋に戻り絶句した。
「布団が一組……」
「二人とも小柄だけど、これでは狭いわ」
「突っ込むところ、そこじゃないから!!」
 ビシッと昌浩に突っ込みを入れられ、私は肩を竦めた。別に一緒の布団で寝るのは初めてじゃない。第一、
「昌浩相手に欲情しないから安心して」
と宣うと、彼は顔を真っ赤にして呻いている。欲求不満になっても、子供相手に欲情したらモラルに欠けるだろう。
「欲情ってお前……女なんだから、こうもうちょっと言いようがあるだろうよ」
「女も性欲があるの。それを表に出さないだけであって、やらしいこと考えてる時もあるのよ。それに、昌浩鈍いから遠まわしに言っても理解出来ないでしょう」
 いつの間に居たのか、ガリガリと後ろ足で首を掻いている物の怪に私はすかさず反論した。
 昌浩の鈍さは、彼を育てた環境にあると思う。年の離れた末っ子を猫可愛がりしたのは想像に容易くない。
「昌浩も一応男だぞ。若菜に似て女顔だけど」
 ニヤニヤと楽しげに笑う勾陳は、結構失礼なことを宣った。女顔と称された昌浩は、ショボーンッと肩を落とし床に両手を着いて落ち込んでいる。
「知ってるわよ。風呂場で見たし」
 ナニをとは言わなかったが、私の回答に彼女は「へぇ……」とニンマリ笑みを浮かべている。
「でも、確かにこの先一緒の部屋だと不都合があるわよね。考慮が足りなかったわ」
「そこは、お前が何とかしてやれば良いんじゃないのか?」
「性教育は管轄外よ。十二神将で何とかしなさい」
 自慰や筆下ろしは管轄外だと拒否すれば、物の怪が頭痛が酷くするのか渋い顔をして私達を睨んでいた。
「恥じらいってものはないのか」
「子供相手に恥らえって言われてもねぇ」
 正直ないと答えたら、物の怪が煩くなりそうなので言葉を飲み込んだ。
「だが、祝言挙げて早々不仲だと思われかねない態度だぞ」
 確かに、勾陳のいう事は一理ある。嫁いだ以上は、血を残す為に子を成さなければならない。
 それは私と昌浩にも例外ではないことは分かっているが、いつこの世界を去るかも分からない上、十五も満たない少年と関係を持つのに抵抗があるのだ。
「藍は、昌浩だと不服なのか?」
「どうしてそうなるかな、物の怪は。別に昌浩が嫌とは言ってないじゃない。子供を恋愛対象に見ろって方が酷でしょう」
 無理無理とスッパリ切り捨てる私に対し、勾陳は顎に手をあて何やら考え込んでいる。
「俺は、子供じゃない! 元服もしてるし宮勤めもしてる」
 子供と称された昌浩は、顔を真っ赤にして怒り始めた。何故?
「元服したと言っても、身体も心もまだまだ子供。放っておいても何れ大人になるんだから背伸びする必要なんてないわ」
 諭すように昌浩を慰めの言葉を紡ぐも、逆切れされた。それも盛大に。
「子供を理由に逃げるなんて藍は卑怯だ」
「逃げてなんか……」
「逃げてるだろう!」
 一体どうしてこうなった? 詰め寄る昌浩をあしらおうにも、何を言っても聞く耳を持たないので平行線の状態が続いている。
「昌浩、お前が男を磨いて成長すれば対象になる資格を得るんだ。祝言を挙げるのは決定事項だし、誰かに掻っ攫われることもない。ゆっくり落としていけば良いじゃないのか」
 勾陳の言葉に、昌浩の動きは止まる。暫くして、満面の笑みを浮かべそれに同意した姿に私は恐怖に慄いたのだった。

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